2014年07月31日(木)

“中国で働く” 28 「現地化の落とし穴」

順利包装集団 福喜多俊夫


 中国で事業を行う上で幹部社員の現地化は必須要件です。
労働者の性向をよく知る中国人工場管理者は生産をスムースに進める上で大きな力になります。また、中国人の購買傾向や商慣習を熟知する、中国マーケットを担当する営業幹部は日本人ではなかなか務まりません。管理部門においても中国の法律を知り、お役所にコネのある人材も重要です。


 中間管理職から高級管理職へ、さらに経営トップにまで現地化の枠を広げていかねばなりません。この時、日系企業の人事部門は、現地出向者とのコミュニケーションや本社との連携を考慮して日本語を話す人材を求めます。確かに日本語人材は有用です。しかし、ちょっと待ってください。中国法人の経営を任せられるほどの人材(あるいは有能な技術者)で日本語を使いこなせる人は有能人材の何パーセント位いるでしょうか? 恐らく数パーセントに過ぎないでしょう。日本語人材にこだわると、リクルートの過程で多くの有能な人材を見過ごしてしまうことになります。


 また、日本語の堪能な中国人の中には日本本社の幹部に取り入るのに優れた才能を示す人がいます。こういうタイプの人を現地法人に据えると、耳に心地よい情報を巧みに本社幹部に伝え、いつの間にか現地法人が私物化されてしまう恐れがあります。


 私も苦い経験をしたことがあります。勤めていた会社から海外事業担当として関連会社に出向していた時、関連会社の上海法人総経理を現地化することになり、親会社の事業部長、関連会社の社長、私を含む数人で面接を行い、日本の大学に留学経験のある優秀な人を(Aさん)を採用しました。Aさんは日本語が堪能で、事業部長も関連会社の社長も会議等での意志疎通がしやすいと喜んでいました。ここまではよかったのですが、Aさんが赴任して半年ほど経った頃、事業部長から「A君からこのような報告が上がってきているが、君は承知しているか」と問われました。事業部長から見せられたAさんの報告書には私の知らない開発案件や人事案がいろいろ書かれていました。事業部長の話では、これまでも個人的な手紙や電話で関連会社の方針の批判や自分の親族の会社との取引を求めてきたとのこと。この時は事業部長がAさんに「報告は関連会社を通して行うこと」と叱責したため、Aさんは気まずくなって退社し、事なきを得ました。もし、事業部長がAさんを「自分にすり寄る愛いやつ」と重用しておれば、いずれ私はAさんと対決しなければならなくなったでしょう。このような例はあちこちであるのではないでしょうか?


 私はこれ以降、現地法人の幹部採用にあたっては日本語人材にこだわらずに人物本位で採用するようにしました。 もっとも、日本企業相手の営業担当は日本語人材が有利ですし、日本人総経理の秘書は日本語が話せないとお客さんに迷惑をかけます。あくまでも適材適所ですが、高級幹部は日本語人材にこだわらないほうが選択の幅が広がると思います。

福喜多 俊夫

順利包装集団(総公司:香港)総裁 (上海在住)

専門分野
海外子会社管理(経営管理・工場経営・品質保証)、目標管理、包装・物流情報

カネカ勤務中は米国、ベルギー、東南アジア(シンガポール、マレーシア、タイ、台湾、フィリピン、中国、香港)の子会社管理、工場指導を担当し、関連子会社に10年ほど出向していたこともあるので、中小企業、特に海外の中小工場経営が得意。


【資格】
◇技術士(経営工学部門)
◇APECエンジニア(工学部門)


【参加団体】
◇大阪能率協会
◇技術士包装物流会
◇(財)海外職業訓練協会(OVTA) 国際アドバイザー

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福喜多 俊夫
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