2012年09月18日(火)

中国税務・最新/やさしい移転価格・2012 ④
 ~難解の科学から時代はベスト・メソッドに~

上海知恵企業管理諮詢有限公司 高級顧問
アジア移転価格専門コンサルティング 代表 小川 孝一


 前回③に続いて「移転価格」のお話しです。

 移転価格税は常に最新情報による経営判断が求められる「生き物」と言えます。


2011年
中国の税収結果
区分 RMB 2010年税収 2010年比
全国の税収入 8兆9720億 7兆3210億 22.6%
企業所得税 1兆6760億 1兆2843億 30.5%

 2011年に前年比増を達成した税収入は、2012年は、第1四半期から「既に」前年割れ予想での厳しいスタート年です。

 中国の移転価格税に係る法整備は次のように年月を経ています。


1983年 日中租税条約を締結
1991年 移転価格税制を導入
1998年 移転価格税制Guide-Lineを公布 国税発[1998]59号
2004年 APA(事前確認)Guide-Lineを公布 国税発[2004]118号
2005年 相互協議手続きに係る通達発行 国税発[2005]115号
2007年 新企業所得税法が可決成立 2008年1月施行
2009年 移転価格の「同時文書」義務規定を導入 国税発[2009]2号
2009年 大企業税務リスク管理Guide-Line(試行)を制定
2010年 APA(事前確認)レポートを初公開

 いま、中国の税務当局は租税回避防止にまさに懸命です。

とりわけ、租税回避防止業務担当者のレベルアップ貢献は盛んです。中国税務局の人事考課は成績に税務調査実績を加味されたものに変化しました。

それ故、調査官たちは、調査対象企業においての関連者間取引より機能・リスク各詳細解読より、その「価格」(=利益移転)有無の存在という「お土産探し」(=税収入確保)に躍起は「当然」です。

 企業にとって「関連者取引」での「価格政策」は重要なコンプラアイアンス問題です。利潤追求が本能の企業姿勢に価格のアップ・ダウンは当然ながら、税務局にとっては、その「価格」は移転価格に「合理」でなければ承知をしません。

中国においては、関連者取引の規模の大小を問わず移転価格で法律要求の「同時文書」(中文:同期資料)の準備と作成整備は何より大切であり、そこにのみ、移転価格での潜在的なリスクの低減と税効率の向上を図ることが「可能」は、決して過言でもありません。

 では「関連者取引」に「非関連者取引」を介在させたらどうなるでしょうか。

移転価格は常に360度視界の鬼平犯科帳的な捕りもの劇です。

 中国税務局をスルー出来たとしても、その「対価」が予め関連者と実質的に決定されていたと認定された場合、次では日本の国税から移転価格税制の適用として「お縄」になっていきます。所謂「みなし海外取引」です。

 実際の取引額と独立企業間価格との関係は次に引き直されます。

取引額と独立企業間価格との関係

  • 取引①が海外取引と見做されます
  • 独立企業間価格は親から子会社へ直接譲渡したものと算定されます(200)
  • 取引②の「利益」は非関連者の負担に帰すものとの解釈根拠となっていきます
  • 独立企業間価格は200-30=170となります
  • そして追徴所得は170-100=70と誘導されます

中国2012年

 中国経済は第1四半期から前年割れの大方予想も的中な第2四半期7.6%の成長率となりました。その最悪は税収の伸びが前年を「下回る」ことなのです。税収入確保の矛先は「企業所得税と移転価格税制」です。

大きな台風の嵐となって第三クオーター以後に襲来/予測です。今年試行の上海市増値税改革は第一四半期約20億元の減税効果と巷間言われます。同改革は北京、天津、広州、深セン等が追随です。当に減税の反動は課税の強化なのです。

 巷間上海市増値税改革では「年間」減税額80億元とも言われています。前年並みの税収確保へのお狩場は「移転価格」が格好のターゲットたる所以です。

何故なら移転価格税制の外に補てん可能の税目など「無い」からです。更正税額1億元と仮定して移転価格案件80件。これが税務局の「2012年目標」です。

 移転価格の税務調整での対抗要件は唯一、法定の同時文書の整備と作成、そして現地企業の遺漏なき綿密の準備なのです。

 いま中国現地の日系企業が危ない。

(続く)

小川 孝一

アジア移転価格専門コンサルティング 代表 (上海在住)

専門分野
会計・税務管理、移転価格税、中国税務&国際税務、内部統制構築

日本および中国にて、一貫して税務・会計畑を歩んできている。
特に、国際税務に関わる移転価格税制に精通。
移転価格税に関わる対策文書/同時文書の作成、税務調査を中心として事例研究多数あり、関連セミナー講師多数。

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