2010年04月16日(金)

徹底した5S運動を① しつけ教育と不良資産整理

佐藤中国経営研究所 代表
佐藤 忠幸


中国は世界的不況からは脱しつつありそうとはいえ、次には人材不足、労務費の高騰と、日系企業各社は大変なご苦労をなさっています。

このため、各社とも大リストラをしました。また、労働契約法施行2年を過ぎて、様々な課題が浮き上がってきています。しかし、本来のリストラというのは人員整理だけではありません。

現況において企業が取るべき対処の中で、今回は5S運動を学びます。

5S運動はキレイにすることだけではない、厳しい躾と不良資産の整理

5S運動というと、綺麗にすることと誤解されている方もいますが、5Sとは「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の5つを行うことです。

しつけ教育なくして企業の存続は無い

「しつけ」が大事であり、中国人が不得手であることは日本人以上に、同胞の台湾系・シンガポール系企業が把握しています。

しつけなくして、企業の存続・成長はありえません。どんない素晴らしいシステムを導入しても、ISO認証を得ても、それを運用するのは人であるからです。

しつけ教育は、続けている内に、それが当たり前になりますが、当初は息苦しくなり、抵抗されます。それで、途中で挫折する企業もありますが、それでは経営放棄と同じです。

厳しく言えば辞められるのではと考えすぎる方もいますが、経営者が厳しい態度と姿勢で貫けば誰でも変るものです。

事例:総経理の変化で会社中が変化・向上した

中国系企業の5S運動を指導したときの事例です。

長い間5S運動をしていたが、なかなか定着できないということで、コンサルタント依頼があったのですが、私が訪問するとお客様用玄関に車が止まっており、そこを利用できませんでした。後から聞くとその車は総経理専用車でした。総経理室は、書類と私物で一杯となり机上も隙間が無いぐらいでした。

そこで、総経理に3つのお願いをしました。

  1. 自動車は、車庫に入れること
  2. 総経理室の整理・整頓をすること
  3. 「5S運動をやらない者は、社員の資格はない。自分も心を入れ替えてやるので皆もやれ」と宣言すること

総経理は、即座に実行し、総経理室の「ビフォー・アフター」を写真撮影し掲示板に掲示しました。先の宣言と合わせて絶大な効果があり、見違える会社になったことは言うまでもありません。しかし、3年後別件で訪問すると5S運動は中断状態となっていました。

再び総経理室を覗くと、元に戻って書類の山でした。

そこで、総経理に「5S運動は止めるべきと思ったのか」と質問すると、真っ赤になって怒り否定していました。しかし、「あなたの部屋は目茶苦茶だよ、これをみんな見習っているよ」と言うと素直に謝り、再び修正し、5S運動再スタート宣言もしてくれました。あっという間に、立派な会社に生まれ変わったのは当然です。

総経理の姿勢は全社員が見ているのです。総経理が崩れればみんな崩れます。しかし、総経理も気がつかない状態で、5Sが乱れるときもあります。しかし、残念ながら、それを注意する者がいないのが多くの会社の現状です。

権力に歯向かうのは嫌だ・怖いということのようです。だから私のような外部の者に言わせるのでしょう。何を使ってでも、やるべきことを我慢して続けなければ崩壊は一瞬です。

整理とは要不要を層別し、不要品を処分し再発防止策を講じること

さらに、重要なことは「整理」です。

整理とは、必用な物と、不要な物とを層別し、不要な物を処分すると同時に、再発生の防止策を講じることです。(必用な物を、使いやすく見やすく置くことを整頓といいますが、整頓の詳細は清掃・清潔と一緒に後日報告します)


「我社は、5年前に整理したよ」といわれる方もいますが、5年間の垢や膿が溜まっているはずです。企業は生き物です。毎日、進化成長しています。したがって、垢や膿が溜まります。これを取り除く必要性は、何も場所代の節約や整頓をしやすくするだけではありません。

最大の狙いは企業体質の強化です。

皆さんの決算書を見てください。製造業であるなら、棚卸資産と固定資産という項目の比率が非常に大きいと思います。

この資産(財産)の全てが、企業にとって有効・有益なものばかりであるなら問題はありませんが、数10%は不良資産です。

不良資産とは、不良品・不要品・売れない物・使えない物・過剰な物などです。

良品であっても、売れない物や使わない物は不良資産です。これらを処分し再発生防止策をたてるのが5S運動でいうところの「整理」です。

不良資産を処分しなかったらどうなるか?それは、粉飾決算です。利益が出ているように見せかけているだけで、実は儲かっていないということを隠しているということになります。

事例 資産の30%が不良資産の会社

私が調べた某社は、月商1億円、月次利益5百万円、棚卸資産2億円でした。この2億円が全て生きている、回転している資産なら、新たな利益を生み出すものですから何ら問題はありません。しかし、更に調べると15%すなわち3000万円は使えない物か、売れない物でした。すなわち不良資産です。銀行など金融機関の不良債権資産(返済されそうも無い債権)と同じです。実に半年分の利益が無くなる不良資産を抱えていたわけです。

何故そんなにたくさんの不良資産があったのか、原因を調べると品質不良品ではないので製品倉庫や部品倉庫に入庫されたまま、5年間も放置されていたのです。毎月、几帳面に不良資産を処分していたなら、月次利益は450万円となるだけであり、一度に半年分の利益が飛ぶような事態にはなりませんでした。それ以上に、何故不良資産が毎月50万円も出るのかということが問題となり、対策をしたはずです。不良資産を隠すということは粉飾決算をして、株主を騙すだけでなく、経営者・管理者をも騙し、対策を遅らせることとなります。

この会社の、不良資産の定義は不良品だけだったようです。

不調資産とは、売れない物、使えない物、使わない物も入ります。不良品だけではありません。


この定義で言うと、機械設備も見直せば多くの不良資産があります

機能的には使えても、使わない設備は不良資産です。

財産として資産台帳に載せておくのはやはり、粉飾決算です。また、その様な物の減価償却費を、毎期計上するのも大きなムダです。


決算書では利益が出ているが、資金繰りに困る、極端な場合 黒字倒産の大きな原因はこれ(不良資産・不良債権)です。

この際、徹底的に垢や膿を出し切って身軽にしましょう。

そんなことをしたら、「赤字になってしまうよ」? 黒字を維持して後任の総経理に迷惑をかけてもよいのでしょうか?親会社や株主に迷惑をかけてもよいのでしょうか?

気がついたときがチャンスです。勇気を持って不良資産一掃の決断をしましょう。

今なら、赤字を出しても目立ちませんよ、あのトヨタですら赤字ですからね。

佐藤 忠幸

佐藤中国経営研究所 代表 (上海在住)

専門分野
企業管理・人事労務・労使関係・品質管理・幹部・5S研修・社内規定

電子・機械・成型・縫製など異業種製造業数社で、日本および海外子会社で数多くの会社立ち上げと再建業務に携わる。現在は上海と横浜を基盤として、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行っている。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。

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