2010年08月23日(月)

真の人事部長を養成すべき

佐藤中国経営研究所  佐藤忠幸


 昨今のストライキ状況や、人材不足状態を考えるとますます人事部課長の重要性が高まっていますが、御社には真の人事担当責任者はいますか?

日系企業の多くの人事責任者は、人事とは名ばかりで、庶務か政府折衝担当あるいは給与計算担当しかいない会社を多く見かけ、極めて深刻な状況といわざるを得ません。


経営多様化により高まる人材要求

90年代あるいは2000年代初期の日系企業は、親会社の指揮・指示の基で製造するだけ、あるいは販売だけというもので済み、それで充分成り立ちました。しかし、昨今は中国を市場として捉え現地法人の経営は多様化を迫られています。それに伴い、優秀な管理者・技術者の需要は急激に高まっています。

採用困難な高級人材

数年前までは、人材が欲しければ人材会社に求人依頼をするだけで済みましたが、今ではおいそれと採用できません。中国では一般的に、仕事のために転勤はしませんし、家持は引越しもしません。したがって、中国では通勤圏に人材がいなければ極めて採用困難となります。上海のような大都会なら、それなりの賃金を払えば地方からの採用可能性もありますが、その他では絶望的です。上海でも高級人材への需要は同じ事情で高いため、上海近郊都市から引張られることすら頻繁に起きているようです。

切迫した人事・賃金制度の充実

ストライキ防止策のコラムでも説明しましたが、人事制度と賃金制度充実への要求は様々な理由で急務となっています。

  • 労働者意識の高揚からの賃上げ要求への対応。
  • 同じ理由で、公平・透明な制度要求。
  • 残って欲しい人材確保策として優遇できる制度要求。
  • 労務費の高騰を避けるための不要社員の整理のための制度要求。
  • ストライキ防止のための横並び賃上げの廃止。
  • 集団賃上げ交渉への対応(九月号にて解説)

社員教育計画・制度の策定

人事制度と、密接な関係がある人材開発計画(社員教育計画と教育制度)の充実が迫られています。

  • 欲しい人材が採れない。社内で育てるしかない。
  • 中国人人材は教育制度の充実が入社の条件となっている。
  • 人事制度でも、昇格条件に研修が必要となってきた。
  • 最も重要なことは、幹部社員のベクトル合わせ。
  • そして経営理念と方針の共有化。

制度を作り、運用するのは人事部

この他、経営計画にあわせた人材育成計画などを含めて、人事部の役割は極めて高くなっています。仮に制度設計は外部に委託したとしても、運用は人事部を中心として行います。

企業経営の三要素「ヒト、モノ、カネ」のトップである「ヒト」に関する責任者が人事部長です。

人材育成計画を作り、それに合わせた人事・賃金制度を作り、社員教育計画を作り研修会を企画し、それぞれを運用する、さらに労使関係の構築社員の要求や不満の吸収など、人事責任者の職責は極めて高いものを要求されつつあります。

御社は、その要求に対する適任者が職に就いていますか?

多くの日系企業では、適任者が就いていないでしょうね。それよりも、過去はその要求をしていなかったことでしょう。

過去は軽視していた人事部

過去の日系企業での人事部への要求は前記とは全く異なりました。極端にいうと、人を集めてくれればよい、労務費を節約してくれればよい、労働局など政府に強ければよい、日本語ができればよい、などが条件でした。

したがって、製造・技術・営業などのように管理者候補を日本へ派遣して鍛えることもしていません。これでは、現在のニーズに応えられる人事責任者が育つわけがありませんね。

人事部長は採るのではなく創る

「そんな高い要求を出されても、そんな者はいないよ」と言われるでしょうね。そのとおり、市場にはいないと思ってください。育つ可能性のある者を社内で探すか、採用をして、社内で育てるしか方法はありません。

教える者がいない?そうかもしれません。総経理さんの大部分が人事担当未経験者ですからね。その場合の育成方法は、日本本社へ派遣か、外部の専門家と顧問契約をして育ててもらう、このどちらかでしょうね。

どちらも、既成の、(真の)人事部長をスカウトするよりも安上がりです。もちろん、育てた後のケアをしっかりしないと超高給で抜かれますよ。

佐藤 忠幸

佐藤中国経営研究所 代表 (上海在住)

専門分野
企業管理・人事労務・労使関係・品質管理・幹部・5S研修・社内規定

電子・機械・成型・縫製など異業種製造業数社で、日本および海外子会社で数多くの会社立ち上げと再建業務に携わる。現在は上海と横浜を基盤として、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行っている。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。

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