2010年10月06日(水)

管理職者に残業手当は不要か

佐藤中国経営研究所  佐藤忠幸


今号の福岡英一氏からの寄稿記事を読むとお分かりのように、日本でも、残業時間の管理が問題となっています。残業時間の管理をすることはわずらわしく、かつ深刻な問題です。それが、管理職者であればなおさらですね。

したがって、日本の多くの企業は管理職者には管理職手当てを付けて残業手当支給対象者から外しています。その理由のもう一つは、残業手当すなわち労務費の節約という意味合いもあるようです。しかし、それらは、中国では全く通じません。

中国では、労働者の全てが残業手当支給対象者

中国の労働法は、日本でいうところの労働基準法にあたります。2008年から労働契約法が施行されましたが、労働法の補強をし、労働者の権利を明確にしたものであり労働基準そのものの改定はほとんどありません。

労働法では、労働時間は1日8時間、週40時間以内と定められ、それを延長して働かせる労働者には残業手当の支給を義務付けています。その手当ての割増率も、日本よりも高く、普通の日の残業は150%、休日出勤は200%、法定休日(年間11日)は300%です。

オーナー以外は全て労働者

労働者には残業手当が必要ということは分かっても、何処までが労働者なのでしょうか?

中国の労働者の定義は簡単です。資本家以外は労働者です。すなわち、投資者・出資者(オーナー)以外は労働者です。総経理(社長)であっても、大部分の「雇われ総経理」なら労働者です。それが証拠に、大部分の総経理は労働契約書を労働者の立場で締結しています。

日本人であっても同じです。日本人出向者の大半は、就労許可証を得て中国で働いていますが、その審査必要書類である労働契約書は労働者の立場で締結しています。

中国では、管理職者のみならず、経営者および経営補助職も労働者なのです。

残業は命令で行うもの

残業時間の管理が難しいと聞きますが、そもそも、残業は命令で行うものであって、申請・許可事項ではありません。命令した以上は、成果を求めるのは当然であり、その対価として手当てを払うことは自然なことです。

実務的には、部下の全ての業務を把握できないため、部下が自主的に残業をすべきかどうか判断し、残業をしたいと申請します。しかし、申請を申し出された管理者は、その妥当性を瞬時に判断し「よし、○○をX時間でやれ」と命令に置き換えます。

形式はともかく、性格的には「残業をやってよい」という許認可制ではありません。

就労時間管理の難しい職種は別管理できる

 全ての職種で上記の管理はできないため、不定時労働時間制というものがあり、残業計算のわずらわしさから逃れます。

不定時労働時間制

仕事の性質と責任の関係で労働時間を限定できないという者のための制度で、次の職種は認められます。


①高給管理職、外勤職員、販売員など

②長距離運送人員,タクシー運転手、鉄道、港口倉庫

③その他の特殊人員


しかし、これを実施するためには、当該労働者との協議・合意を得た上で、該当地域の労働局の許可を得る必要があります。

管理職は時間管理できないか

最近では、よほどの特殊性が認められない限り労働局では許可しません。何故なら、労働時間を管理できないという職種の大部分が、実は管理できないのではなく、残業代を払いたくないという職種だからです。時間管理できないという証明は極めて難しいといえます、

残業手当をもらってないと訴えらたら企業の負け

管理者自身も、残業手当の支給対象者になることは、当初は多くの者が嫌がります。理由は、①労働時間管理しないのは管理者のステータス②管理されるのは嫌。しかし、反面「残業手当も無いのに、何故遅くまで働くのか!」と奥さんから叱られています。

そのため、もし彼らが不満な形で契約終了をした場合は「私は残業手当をもらっていない」と当局へ訴えられます。企業としては「残業手当相当分の管理職手当てを払っている」「そのために高給を払っている」という言い分もあるでしょうが、「残業手当」という名称の手当てが無いことには変わりなく、企業が100%負けています。

残業手当を払うと残業ばかりする?

そんな心配をしなければならない者は、管理職から外すべきです。

標準労働時間内の能率を重視し、如何に8時間内の効率を高めるかが管理者の職責であるべきです。そもそも、残業は企業の麻薬です

  • 生産性向上を無視すれば、時間延長(残業)に逃げられる。
  • 残業をすることが定常的になれば定時内の能率は無視される。

さらに、残業を嫌がる者からは逃げられ、残業を減らせば減収だとまた逃げられます。

佐藤 忠幸

佐藤中国経営研究所 代表 (上海在住)

専門分野
企業管理・人事労務・労使関係・品質管理・幹部・5S研修・社内規定

電子・機械・成型・縫製など異業種製造業数社で、日本および海外子会社で数多くの会社立ち上げと再建業務に携わる。現在は上海と横浜を基盤として、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行っている。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。

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