2010年11月17日(水)

真の財務部長を養成すべき

佐藤中国経営研究所 代表 佐藤忠幸


 8月号にて、人事部課長の重要性と育て方について記しましたところ、同じような存在である財務部長についてのご意見を多数いただきました。また、叶家胤氏の「狂っている計器メーター 」でも企業の羅針盤である財務諸表作成責任者である財務部長について記します。

日系企業の多くの財務責任者は、出納および計算・納税担当者しかいない会社を多く見かけ、極めて深刻な状況といわざるを得ません。

私は、財務・税務は専門家ではないので、仲間の財務・税務コンサルタントに常に教わっています。今号のレポートも出典の多くは、上海誠鋭実業有限公司の叶家胤氏からいただいたものです。もちろん、企業経営時代には独学で必死に勉強しました。

それが経営者の責務だと思うからです。

中国の会計は特殊ではない

日系企業の総経理さん或いは親会社の社長さんをお伺いすると、「中国の会計は特殊でよく分からないよ」とのお話を度々伺います。

本当に特殊でしょうか?

実は、特殊な会計は日本です。日本の会計法は国際会計基準から見ると遅れているからです。中国の会計法は、「企業会計準則2007年版」で表されており、非常に新しいため、ほとんど国際会計基準どおりです。

しかし、実は特殊だと言っているものを見ると「財務会計」ではなく「税務会計」を財務会計と称しています。税金は、国によって異なるのは当然であり、そのための会計が異なるのは当然です。

財務部長の上司は税務局長?

中国で、財務会計の概念が生まれたのはやっと今世紀からです。もともと国営企業では税務会計しか要求されていなかったため、会計準則が生まれたのが1993年、それを実施し始めたのが2001年からです。

したがって、古参の財務担当はその実務経験がなく、総経理から特段の指示命令が無い限り税務会計のみを行います。

税務会計のみ行って、納税すれば税務局からは叱られないし楽です。財務諸表に関心を持ち、目を光らせるのが税務局だけなら、総経理には、「これが中国の決まりだ」で終わらせ、税務局長が満足する財務諸表さえ作れば職務はまっとうしたことになります。この場合の、財務部長の上司は総経理ではなく税務局長です。

御社の財務部長の上司はどなたですか?

財務諸表は企業の羅針盤

財務諸表は、会社経営の羅針盤だといわれています。統計・会計資料は「過去」の事実を反映していますが、「将来」に着目しているのが本来の目的であるとも言えます。そして、「将来」への影響はその資料を利用する人の判断によって実現されますので、当然、現在の判断基準である統計・会計資料の正確性が要求されます。

 自動車ならば、今までの走行距離や走行スピードを表す走行メーターの表示が狂っていたら、安全な走行もできませんし、メンテナンス時期も狂ってしまうのは、叶家胤氏のブログのとおりです。

経営実態を正しく表せ

税法による会計は、それはそれとして正しいものですが、企業の経営資料としては不正確です。何故なら、納税の公平性を重んじているためです。

例えば、固定資産の減価償却年数は、用途により全て一律の年数となっています。製造設備であれば一律10年償却です。しかし、製造設備でも中には5年しか使えないものも多数あります。また、用途によっては機械の寿命は10年間使えても、商品としては5年しか寿命ないものもあります。この場合は、減価償却を5年でしなければ正しい経営資料とはなりませんね。5年寿命の固定資産を10年で償却したならば、最初の5年間は実態よりも多くの利益が出ますが、次の5年は悲惨ですね。

財務部長は能動的であれ

 最近、変動比率が高くなったよ、労働分配率が高すぎるよ、直間比率が悪くなったよ、未回収金が増えたよ・・・・この他、経営に関する警告や提言が財務部長から出ていますか?

財務部の役割は、過去の経営数字を表し、正しく納税するだけというだけでは存在価値は半分しかありません。現状の数字から意見や提言を出し、かつ将来予測を経営者に提言しなければなりません。

財務部長も採るのではなく創る

 前号の人事部長と同じく、「そんな高い要求を出されても、そんな者は採れないよ」と言われるでしょうね。そのとおり、育てるしか方法はありません。

教える者がいない?そうかもしれません。総経理さんの大部分が財務未経験者ですからね。その場合の育成方法は、日本本社に頼むか、外部の専門家に育ててもらう、このどちらかです。どちらも、既成の、(真の)財務部長をスカウトするよりも安上がりです。

もちろん、育てた後のケアをしっかりしないと超高給で抜かれますよ。

佐藤 忠幸

佐藤中国経営研究所 代表 (上海在住)

専門分野
企業管理・人事労務・労使関係・品質管理・幹部・5S研修・社内規定

電子・機械・成型・縫製など異業種製造業数社で、日本および海外子会社で数多くの会社立ち上げと再建業務に携わる。現在は上海と横浜を基盤として、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行っている。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。

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