2011年01月15日(土)

労務費高騰に如何に立ち向かうか

佐藤中国経営研究所 代表 佐藤 忠幸


江蘇省の最低賃金が2月1日より大幅に(約19%)上がります。

その他地域もそれに倣って上がるでしょう。また福利厚生の現物給付なども給与所得と見做されるなど労務費高騰の要因は次々に出てきました。

加えて、労働者不足と労働者権利意識の高揚により、労務費節減は生易しいことではなくなりました。

労務費は、人事労務管理の問題ではなく、企業管理としてより高い観点から考えるべき時期となりました。

賃金の価値を高めよう

理論的には、賃金が上がっても製品一個あたりの労務費を上げないで済めば問題はありません。それは、生産性の向上です。

一人当たりおよび単位時間当たりの産出(生産上がりまたは売上げ)が、上がれば問題はありません。

それには、時間当たりの仕事の質を高めること、すなわち支払った賃金の価値を高めることです。今まで平均3000元の賃金を支払っていたが、粗利は6000元しかなかった。今度は平均3600元と20%アップしたが、粗利が7800元と30%上がったとしましょう。企業にとってはどちらがよいのか自明ですね。

そんな理屈は誰でも分かっているよ、しかし、・・・・・・。と、おっしゃるでしょうね。

信賞必罰の賃金体系

 賃金の価値を高める第一点は、能力のある者と無い者、能力を発揮した者と発揮しない者、努力した者としない者、この格差を思い切ってつける制度にすることです。格差を大きくすることは高い評価査定を得た者を高い賃金とするだけでは、原資が足りませんから、低い評価査定を受けた者の賃金は据え置きか減給しなければなりません。問題は相対格差です。相対的に幾ら高いかが問題だからです。

そんなことをしたら、据え置きや減給者から訴えられるよ、労働争議になるよと言う方もおられるでしょう。そういう制度は規定化し、公開し、労働者に理解させなければそうなるでしょう。

多くの企業の賃金規定を見ますと、どうやって賃金を決めるか、どうしたら賃金が上がるか書いてありません。それでは争議になるでしょうね。

争議を怖がって賃金制度を改定しなければ、横並び賃金で皆が上がる仕組みとならざるを得ません。仮に格差をつけても気休めの小額であり意味がありません。そのような会社は労務費が上がるのは当然であり、会社には能無し・無気力人間しか残らないのが中国です。

意味がある格差とは、上がったものは意気揚々として、ますますがんばる。下げられたものは頭にきて辞めるか、発奮してがんばる。そういうインパクトのある格差です。

抜擢人事

賃金の価値を高める第二点は、抜擢人事です。

中国人のやりがいは、賃金だけではありません。責任ある仕事をしたいという欲求は、日本人以上です。5年も10年も管理職のポストを変えていない会社がありますが、仕事の生産性向上は頭打ちになっているはずです。

キャリアは浅いが、意欲があり勉強熱心な者を抜擢したら、2ヶ月目には20%も生産性が上がり、残業が激減し、しかも納期問題・品質問題が無くなったという事例は幾らでもあります。(ウソだと思うならご紹介しますよ。)

それが、長く続く保証はありません。したがって、直ぐに後継者を養成する準備が必要です。

逆に外された者の処遇と新職場を考えておかなければなりません。

このような流れを、人事計画、人事開発計画といいます。前項の人事・賃金制度と切り離せない課題です。

出世の天井をなくす

責任ある仕事をしたいという欲求が強い中国で、総経理、副総経理などの経営者をはじめ、高級幹部の大半を日本人で占めている日系企業もよく見かけます。また、中国民間企業では、投資者一族が高級幹部を占有している姿もよく見かけます。

いずれも、出世の天井が見えてしまっています。抜擢人事もできません。

がんばって、高級幹部になろうという意欲のある者は、とっくに辞めています。残っているのは何処にも行けないものだけです。家庭の事情で行けないならよいものの、能無しのため何処も採用してもらえないという者だけが幹部に残った企業は、生産性どころではありませんね。

下手をすれば、不正の山だらけの会社かもしれませんよ。


日本人赴任者は、出来るだけ早い時期に、ラインの長から外し、顧問として側面から指導援助すべきです。

ラインの長という、肩書きがなければ誰も言うことを聞かない?では、今までは肩書きに従属し、肩書きに尊敬していた、すなわち面従腹背の関係ですか?

肩書きが無くても、尊敬される人格・人望と指導すべき知識と経験があれば問題はありません。そして、手柄はラインのモノ、失敗は指導が悪かったと顧問が負うという姿勢を貫いていれば尊敬される関係が続きます。

佐藤 忠幸

佐藤中国経営研究所 代表 (上海在住)

専門分野
企業管理・人事労務・労使関係・品質管理・幹部・5S研修・社内規定

電子・機械・成型・縫製など異業種製造業数社で、日本および海外子会社で数多くの会社立ち上げと再建業務に携わる。現在は上海と横浜を基盤として、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行っている。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。

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