2012年02月23日(木)

企業体質改善のための5S運動 躾(しつけ)

佐藤中国経営研究所 代表 佐藤 忠幸


拡大する一方の中国市場を求めて、多くの日系企業が中国に進出し、部材調達の現地化も急激に進めており、ますます市場が大きくなっております。しかし、顧客の要求は、「日本並の品質」で「中国並の価格」という厳しいもので、従来の中国方式では全く通じません。そこで、見直されているのが5S運動であり、5S運動により企業体質と社員の意識改革をしようというものです。今号は、その要である躾(しつけ)について学びます。

5S運動の要「しつけ」

5S運動とは、次の5つの日本語をローマ字表示した頭文字を集めたものです。

整理 (Seiri)、整頓 (Seiton)、清掃(Seisou)、清潔(Seiketsu)、躾(Sitsuke)

日本では、躾がある程度できていることを前提として5S運動が成立っており、躾が最後になっていますが、中国では逆に、まず躾を徹底する必要があります。

躾の文字は、「身+美」と書き「美しさを身につける」「身についた美しさ」という意味の言葉で、日本で発明された文字です。すなわち元々中国には躾の概念がなかったのです。幼い時から日常の行動様式、生活習慣、生活技術を身につけ、体得させるための「仕付ける」という言葉が語源です。

中国では、「修養」や「素養」などと訳していますが、本来の意味とは多少異なります。人への接し方、物や金への対処方法、仕事に向かう精神的姿勢・物理的姿勢、そしてあるべき姿への追及姿勢などの全てを、自分を自分で制約・束縛・調整・管理するものです。後工程をお客様と心得、お客様は神様と考える、日本が誇る美的精神です。

モノ作りには、一人ひとりの注意と心がけで不良を作らない、次工程には送らないという全員の心(躾)が重要です。それで無ければ、検査工程に頼ることとなってしまいますが、検査工程の検出能力は、最高で90%と言われています。

すなわち、検査工程で10%もの不良を発見したとすると、1%以上の不良品は漏れてお客様に渡ってしまいます。

したがって、中国で実施することは極めて難しい課題ですが、難しいが故に重要なことです。

中国でしつけが何故難しい?

本来、仏教や儒教の教えというものはありましたが、文化大革命以降、学校でも家庭でもそれも道徳感を教えなくなりました。近年、教育内容の見直しが始まり、道徳教育は始りましたが、進学熱の高まりとともに、それに不要な道徳教育は軽視されたままです。

また、市場経済がまだ未成熟であり、未だGDP優先政策と個人の利益追求が優先される風潮となっています。

家庭でも学校でも、しつけに関する教育は不十分だという前提で、企業で徹底するしかありません。何処も教育してくれないから諦めたら、組織活動はできませんし、チームワークも育成不可ですね。

しつけはケジメの管理から

一般的に中国には、時間のケジメはあるが、始まりと終わりのケジメはないと言われます。

特に公私のケジメはなく、現代中国のネックと言われています。

ケジメは、モノづくり、モノやサービスを売るといったあらゆる業務の中心であり、ケジメは、企業管理の要ともいうべき存在です。

例えば、次の内容を徹底的に教育しなければなりません。

・始業の合図は、それまでに入門しろという合図か?
 ⇒NO!仕事開始の合図である。始業前の清掃・点検は終えているか?

・終業の合図は、帰れという合図か?
 ⇒NO!仕事終了の合図である。今日の整理・整頓と明日の準備は終えたか?

・12時の合図は、昼休み開始の合図、では13時の合図は昼休み終わりの合図か?
 ⇒NO!午後の仕事開始の合図である。朝の始業の合図と同じく直ぐに仕事が開始できるように準備・待機していなければならない。
 ⇒合図が鳴ってから、あわてて職場に戻っていては、よい仕事はできない。

・15時から会議との案内が来た。15時になってから自分の職場から会議室に向へばよい?
 ⇒NO! 15時は会議開始時間である。15時数分前に会議室に着き、資料の確認をして開始を待つべき。

・自分が任された仕事が終わったので、そのものは放置してよいか?
 ⇒NO!次のプロセスの人に説明し、現品票にそのことを明記して、その仕事が終わる。

ルールの精神を教える

日本からの出張者が、中国の交差点を見て驚くのは、ルールを守らない人や二輪車が多いことです。ルールどおりできない、やらない、守らないのには、必ず理由(言い訳)がありますが、この姿を企業内に持ち込んでもよいのでしょうか?

⇒急ぐから

⇒皆も守らないから

⇒自分だけ守っても何の得も無いから

⇒守らなくても叱られないから

⇒そのルールには問題があるから

守らない理由の大部分が聞く必要がないもの、まともに取上げてはいけません。その理由(言い訳)が、何故駄目なのかルール成立の基本精神にまで遡って教える必要があります。言い訳をせず、反省するようになるまで辛抱強く指導します。本当に守れないルールは撤廃か、改正が必要です。有名無実のルールは罪悪です。

注意しない監督者には管理者が叱れ

注意しない管理者には経営者が叱れ

次の問題は、監督者が社員のルール無視を注意しないことです。それどころか、注意・指導しない監督者を管理者が叱らないことです。

監督者の多くは、平社員から登用されています。昨日までの仲間を叱るには勇気が要りますが、監督者に立場が変わった時の教育が不充分です。優秀な作業者は優秀な監督者とは限りません。監督者としての心構えと知識・手法を教えなければ、作業者など一般社員を注意・指導はできません。

管理者も同じです。管理者の職責を理解していなければ「うちの班長はダメだよ、全然作業者を叱らないよ」と嘆くだけでおわりですね。

監督者を叱れない管理者は、経営者が厳しく叱らなければならないことは当然です。

しつけの悪い企業は、経営者が責任放棄をしているとも云えます。

もちろん、叱るには愛情をこめて「愛の鞭」という気持ちで。

 

次号につづく

佐藤 忠幸

佐藤中国経営研究所 代表 (上海在住)

専門分野
企業管理・人事労務・労使関係・品質管理・幹部・5S研修・社内規定

電子・機械・成型・縫製など異業種製造業数社で、日本および海外子会社で数多くの会社立ち上げと再建業務に携わる。現在は上海と横浜を基盤として、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行っている。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。

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