2014年05月02日(金)

中国企業経営のキーワード 「明確化」

佐藤中国経営研究所 代表 佐藤 忠幸


 中国での企業経営のキーワードは? 色々な場面でお話していますが、中国だからといって特殊なことはありません。ただし、中国人気質に合った経営をしなければならない、ということだけは言えると思います。 いくつかのキーワードがありますが、その中で「明確化」を取り上げてみます。

理念・方針の明確化

 日系企業の総経理さんに「御社の経営理念・経営方針は?」を問いかけて、明確にお答えいただけないケースがあります。

 親会社の創業オーナーに、それを伺って、お答えできない方はいないでしょう。

 夢と希望をもって企業を立ち上げた方には、こういう企業にしたい、そのためには社員をこうしたい、社会にこう貢献したい等などの理念や方針が、知らず知らずの内に固まり、社員と共有しています。社員もそのようなオーナーであるが故に、一生ここで働こうと思ったはずです。

 組織に従属するのではなく、老板に従属するといわれる中国であるなら、尚更必要です。

 SONY創設者の1人、井深大氏が作った会社設立の目的の第1条では「自由豁達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設」とうたっています。まさに経営理念ですね。

現地法人としての理念や方針の確立を

 もう一つの問題は、「わが社の経営理念・経営方針は親会社のそれをそのまま使っており問題ないよ」のお答えです。親会社にしてみればグループ企業共通の経営理念で間違いのない経営をしてもらいたいということでしょう。しかし、そういう現地法人の幹部に「御社の経営理念・経営方針は?」と伺うと「無い!!あそこに貼ってあるものは日本の経営理念・経営方針だよ」とのお答えが大部分です。

 親会社の設立時と環境や歴史そして国が違うのです。経営理念や経営方針がすべて同じで経営できるわけがありませんし、現地従業員が自らの経営理念や経営方針だと胸をはれるものを作り上げるべきです。

判断基準の明確化

 「中国人はルールを守らない」とよく言われます。

 確かに、中国の交差点を見ていると、特に歩行者と二輪車の多くは信号無視や停止線の外で並ぶなど、ひどいですね。しかし、背景を考える必要があります。自動車が増え、信号が増えたのはついここ数年のことです。交通信号の意味は知っていても、その必要性や、その立法精神、細部の判断基準は知りません。また、信号システムも自動車の流ればかり考えていて、足の遅い歩行者は横断歩道を渡りきれないことすらあります。だから「少しぐらいなら」という自己判断でルールを解釈し運用しています。

 企業内では、守れるルールとするのは当然で、さらに何故必要なのかを明確にし、何が、どこからいけない、どこからがよいかの判断基準を明確にし、理解させなければなりません。

仕組みの明確化

 中国人は直ぐに辞めるので困るといわれます。(私は辞めて困る人は10%しかいない、90%の人は新陳代謝すべきと思っていますが)しかし、困るなら、新人に入れ替わってもよいような体制が必要ですね。

 新人でも仕事の仕組み(流れ)が分かるようになっていますか?

 後記の職務は傍に上司も先輩もいますから直ぐに理解できても、他職場との流れが分かるようになるには時間がかかります。その流れを明確にすることが仕組みづくりで、新人を育てやすくし、且つ仕組みを明確化する過程で問題点が見つかり、改善が始まります。

業務の明確化

 それぞれの職場・部門では、何をすべきか。その構成員である誰は、何と何をするかという業務を明確にする必要があります。

 会社を作ると、まず組織を作りますが、同時に各組織(部門が何をするのかを明確にする必要があります。経営者は全てを分かっているつもりでも、部門長が同じ考えとは限りません。

 そのような場合、必ず組織と組織の間に隙間ができたり、壁ができたりします。トラブルが起きてから、この問題は何処の責任だろうか、何処が対処すべき問題だろうかという議論になれば、全員が傍観者となってしまいます。

職責の明確化

 一般社員⇒監督者⇒管理者⇒経営者と、階層が高くなるごとに責任と権限が大きくなることは、誰でも分かっていることです。しかし、細部では分かっていないケースを度々見受けます。例えば、「私は指示しました」「私はFAXしました」「私はメールしました」、「彼が行動しないのは、彼の責任であって、私は知りません」。

 このやり取りを聞いて貴方はどうしますか?

これが一般社員なら我慢してもよいでしょう。しかし、「長」がつく管理・監督者なら許してはいけません。部下に行動させる目的で指示命令というコミュニケーション手段を使ったわけで、相手が行動しないのではコミュニケーションをとったとはいえません。相手(部下)が行動するまでコミュニケーション努力をするのが「長」の職責とすべきです。

 違う例をもう一つ、「忙しくて部下を指導できない」「私には優秀な部下がいない」「私には片腕となる部下がいない」という管理者の話をよく聞きます。

その会社では、「部下を育てる」「後継者を養成する」という項目が管理者の職責に無いのでしょうか?もし、あるとしたらこの管理者は職責を果たしていない「無能だ」ということを自ら暴露したことになります。たぶん、この会社は管理者の職責が不明確なのでしょうね。

佐藤 忠幸

佐藤中国経営研究所 代表 (上海在住)

専門分野
企業管理・人事労務・労使関係・品質管理・幹部・5S研修・社内規定

電子・機械・成型・縫製など異業種製造業数社で、日本および海外子会社で数多くの会社立ち上げと再建業務に携わる。現在は上海と横浜を基盤として、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行っている。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。

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