2014年11月17日(月)

モデル企業に学ぶ

佐藤中国経営研究所 代表 佐藤 忠幸


 10月下旬、上海の異業種交流会の勉強会およびHR研究会の後援事業として『先進的モデル企業に学ぶ』を実施しました。 蘇州のモデル企業K社を見学し、T総経理様自らそこまでのご苦労とこれからの豊富を語っていただき参加者50名弱に感銘と共感をいただきました。 今号はその一端をご紹介します。

 K社は、旺盛な改善意欲と徹底した5S運動そして熱心な社員教育で企業発展目ざましい会社です。稼働している生の姿を見ていただこうと、異業種交流会でありながら平日開催としました。この機会に多数の方がご参加くださり、経営環境厳しき日系企業様の、改革・改善のヒントが得られればとの思いで、T氏にお願いしたところ快く引き受けてくださりました。 K社の製品は、特殊機器製造です。「我が社は組立製造業のようなもの、特別なノウハウは無いので写真撮影は禁止と書いてないところはご自由に」との嬉しいお言葉もいただきました。

企業としてやるべきことをやる

 2003年 会社創立以来成長を続け、2009年には第二期工場、2013年には第三期工場が完成し従業員は400~500名を数えるまでになっています。売上も年々上昇を続けており、その成長の秘訣を聞かせていただきました。その主な内容は次ですが、考えてみれば企業として本来やるべきことをしているだけかもしれません。しかし、日本では当たり前のことでもここは異国、そう容易なことではありません。やはり、ここまでに至るにはご苦労があったのです。


【徹底した教育】

2010年に始まった幹部教育、2011年からの監督者教育は今も形や内容を変えてシリーズ化しており、意識改革と経営理念の共有化がなされ、言い訳を許さない環境を作っています。新人も、配属前の集合教育で5S運動(特にしつけや清掃の仕方)そして経営理念を叩き込んでいます。幹部教育の大半は休日に行なっています。もちろん休日出勤手当てはありません。

幹部教育開始のきっかけは5S運動の挫折です。2008年は全く駄目、駄目な理由は5S運動をよく理解していないということもありますが、幹部の方向がバラバラしかも、幹部の向上意欲ならびに職責全う意識が薄いことが根本原因だということに気が付いたからです。


【5S運動の推進】

2008年本格的に全社運動として開始。当初はスムーズにできず苦労しましたが2009年にはやっとまともな活動ができるようになりました。今では、さらに発展成長させ、中国では難しいと言われる「しつけ」を強化しており、次の事項を継続的に行っています。

  • 出勤時間の挨拶運動・・・蘇州TVで取り上げられたほど有名で、今では完全に自主的な活動となり定着しています。
  • 朝の全員ラジオ体操、朝令の徹底・・・日本企業と全く変わりません。
  • 朝の毎日全員で大掃除・・・日本の有名経営者の教訓を実践しています。総経理も例外ではなく便所掃除当番に組み込まれています。
  • 倉庫を含めて、物の整理・整頓の徹底・・・まさに教科書どおりです。
  • 5Sパトロール、5S委員会の定例開催・・・今では強制力不要、完全に自主活動です。

はじめの三項目は主にしつけに役立っています。出勤したら公私の切り替えをし、心身ともにすっきりとさせて仕事に望んでいます。何れも「我が社でもやっているよ」といわれる方もおられるでしょうが、K社の違うところは、それらを社員が実に自然体で行なっており、やらされ感が薄いことです。


【改善活動の推進】

2009年より5S運動を土台として、QCサークルが始まり、全社運動にまで成長し、これが次期幹部養成の場にも変化しています。

  • 改善活動を通してリーダーシップ養成
  • 本当のカイゼンへ発展
  • QC活動、改善活動を通して、経営参加意識の向上と会社との一体感強化をねらう。

【人事・賃金制度の導入】

2008年からK社独自の人事賃金制度を導入しました。当初は職階等級制度であり、一部には年功序列賃金も含んでいましたが、透明性をもたせ能力および実績評価を強くすべく、2011年と2013年に改正を行い、新しい職能等級制度が出来上がました。


【経営理念、行動指針の共有】

壁に掲示させるだけに終わらせず、小冊子にして全社員へ配布し毎朝の朝礼で少しずつ読み合わせをしています。

“心身ともに気持ちのよい会社だ“

 工場は三組に分かれて約一時間じっくりと見せていただきました。社員は、たくさんの見学者が通っても脇目もふらず仕事に専念しています。来客が通ると、仕事中の社員も会釈するように仕付けている会社もありますが、そうすると仕事は疎かになり逆に心配ですね。もちろん通路でお会いした場合はきちんと止まって挨拶をしてくれます。ここなら安心して発注できそうだという気分になりました。 そして、床や窓含めて職場は全てピカピカです。「心身ともに気持ちの良い会社だ!」が実感できたのではないでしょうか。後で伺ったら、この見学会のために特別な大掃除をしたわけではなく、普段どおりをありのままに見せていただいたそうです。 説明会の質疑応答で、「しつけを守らせるための賞罰は如何に」という質問がいくつかありました。T総経理のお答えを伺うと、いろいろ工夫はされているようですが、金銭的な賞罰は無いようです。表彰と記念品程度です。それよりも「励ましのお言葉」が大切なようです。 「中国人は賞罰を与えないと動かない」の常識はここでは通じないようです。そのような土俵ができ、入社時の教育が徹底すると直ぐにその社風になじむのでしょうね。

人材の現地化の徹底

 今後の課題と取り組みとしては、まずは人材の現地化です。組織の長は全て中国人とすべく人材養成中です。改善活動もその一環です。「日本人が決めて行動する会社というのは、実は親会社が決めてその指示により行動する会社だ、中国人が、自ら、会社の利益を考えて行動する企業文化へ変えたい」と総経理は強く語っていました。 日々に改善努力している会社はその姿を他人に見られることを恥ずかしいとは思わず、むしろ見られることにより、より一層頑張ろうという気持ちになるそうです。工場長からのご挨拶「皆さんが見学に来ていただけることは、私も社員も励みになります。また是非いらしてください」、そして、総経理から「以前より悪くなった」と言われぬよう進化する活動であり続けたいと思います」とのお言葉が印象的です。

佐藤 忠幸

佐藤中国経営研究所 代表 (上海在住)

専門分野
企業管理・人事労務・労使関係・品質管理・幹部・5S研修・社内規定

電子・機械・成型・縫製など異業種製造業数社で、日本および海外子会社で数多くの会社立ち上げと再建業務に携わる。現在は上海と横浜を基盤として、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行っている。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。

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