2015年02月05日(木)

中国勤務でのストレス対策①

佐藤中国経営研究所 代表 佐藤 忠幸


 私は上海を中心として中国勤務が間もなく15年となりました。

 そんなに異国で長く生活し働き精神的に困ることは無いのか?とのご質問をたびたび受けます。しかし、海外での生活のストレスは、日本の皆さんが考える原因とは異なるように思われます。日本のある県の統計では、精神科の患者で最も多いのが「うつ病」で、その60%が中国それも上海勤務からの帰任者です。

中国それも上海勤務者に何故「うつ」が多い

 上海市は、世界で最も日本人が多い都市ですので比率が高いのは当然とも言えますが、「うつ」患者の60%とは異常に多すぎます。

 私の感覚では、全く人種やものの考え方が異なる欧米よりも馴染み易く、生活や食事も容易な中国上海に「うつ」が多いのは別な要素が働いているためと思われます。

 その最大の要素は、日本の親会社の中国に対する姿勢にあると思われます。

 「ニューヨーク支店長が帰任すると社長か副社長へ、上海支店長が帰任すると定年退職か子会社役員へ」これは10年前ぐらいによく言われていた笑い話ですが、多くの企業は今でもそのままです。中国市場が大事な現在、大商社などは進歩し、優秀な役員を中国へ派遣することは多くなってきましたが大多数の会社は昔のままです。

 上海市には、日本と中国の窓口機関としての中小の日系貿易会社や商社が多数あります。それだけ、社長(総経理)や副社長(副総経理)という経営責任を負っている出向者が多数暮らしています。

中国子会社の社長は親会社の部課長

 中国現地法人(子会社)の社長は、ほとんどの会社が日本の部課長を二階級特進させて出向派遣しています。したがって、その次任者クラスの副社長などの高級幹部として出向派遣させる者は日本では課長クラス以下の者ばかりです。

 しかし、中国現地法人の多くは(結果として)親会社よりも大規模な会社となっています。単なる販売会社でも、製造会社だけでもなく立派な総合生産会社となります。またそうならなければ中国では存続できません。

 そうなると、管理者や監督者経験しか無い出向者で企業経営できるのでしょうか?

 さらに、仕事を教える指導員は勤まっても、仕事や人間を管理する立場にまわれる出向者はどれだけいるのでしょうか?

 しかし、出向された方は、経験が有るとか無いとかは言えません。

 出来るとか出来ないは関係ありません。

 やるしか選択肢は無いのです。そこに大きなストレスが溜まります。

出向者の上司は親会社に多数あり

 出向者の上司は、組織表で見る限りは少ないものです。

 総経理の上司は董事長(会長)だけです。

 その他の大多数の幹部の上司は総経理だけです。

 しかし、目に見えない線で日本の幹部と繋がっているのが出向者です。

 総経理なら、日本の親会社の人事・財務・営業・技術・生産管理・製造その他の部長連中や各事業部長や支店長の全てが上司です。日本勤務時代が部長だったとすると自分の上位者は多数いても、直接自分が関わる上司は数人しかいなかったはずです。

 それが中国子会社の社長と云う重席に就いた途端、子会社管理あるいは子会社指導という名目の干渉にさらされます。干渉する皆さんは上位者であり、帰任した時の上司になる可能性が高いことから総経理も無視し難いのは事実です。

 ストレスは凄まじいものがあります。

 高級幹部として出向された方も、親会社の各部門からのご指導ご助言に悩まされています。指導助言をする側からすれば「善意でしていることであり、それを聞くか聞かないかは聞いた側の自由だ」と仰るでしょうが、それは責任逃れです。

 上位者の指導助言の重さを理解していません。また指導助言の大部分は「私は子会社に言うべきことは言った。指導責任は果たした」という責任逃れではなかったでしょうか?

 その意識は無かったといっても結果的にそうなっていませんか?

異国に慣れるまでが大変

 中国に限らず、異国に慣れ、異国人との仕事に慣れるまでに2年かかると言われています。ましてや、未経験の経営者や高級幹部の仕事に慣れるにはさらに年月がかかります。そこに適切な教育研修がなされてもそうです。ましてや、何も教育研修しないで放りだしたのでは「うつ」にかかれと言うのと同じです。

 大多数の総経理は赴任した初年度の悩みは「親会社向けの仕事が忙しくて、本業が出来ないよ」です。これでは、中国や中国人に慣れるどころではありませんね。

ではそこからどう脱するのか?

 まず親会社の、官僚主義、事なかれ主義を排すること。

 ついで、親会社の中国への見方を変えて、上海帰りも、ニューヨーク帰りと同等以上に扱う人事をすべきです。それなりの人を派遣すべきです。

 人がいない?他社には、市場には幾らでもいます。

 その費用が出せない?中国出向も出来ない、役立たずの古参役員を切ればよいのですよ。


 出向してしまった人の対策は次号で。

佐藤 忠幸

佐藤中国経営研究所 代表 (上海在住)

専門分野
企業管理・人事労務・労使関係・品質管理・幹部・5S研修・社内規定

電子・機械・成型・縫製など異業種製造業数社で、日本および海外子会社で数多くの会社立ち上げと再建業務に携わる。現在は上海と横浜を基盤として、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行っている。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。

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