2010年04月29日(木)

グローバル化時代を切り開く人材の育成 その1

日立信息系統(上海)有限公司 企画本部副部長 沙 文灝

私は20年前に訪日しました。

この20年の間に日本の社会には大きな変化がありました。

過去どこの国でも経験したことのないようなことが世の中で起きている。そういう時代になったという実感があります。

こういう時代に経営者みずからが修得すべきことは何か、企業にとって必要な人材教育とは何か、について、大きな視点から考えてみたいと思います。

1.手本がない時代に突入した

日本の歴史を振り返ってみましょう。戦後の復興期、政治経済と企業活動においてはアメリカやヨーロッパ諸国のノウハウを取り入れ、それを日本流にうまく当てはめてきました。

復興期には「これから日本が世界に出て行くのだ」という気概を持った優れたリーダーがいました。松下幸之助氏や本田宗一郎氏など、いわゆる経営の神様と呼ばれるリーダーたちがいました。リーダーが描いたビジョンに従っていいモノづくりをしていけば、国も会社も発展するし給料も上がる。そういう考え方があって、それが根強く現代まで引き継がれています。

日本は1980 年代、「ジャパン アズ ナンバーワン」ということが言われるくらいまでに成長しました。

しかし、それは長続きせず、その後、バブル経済の絶頂期があり、それがはじけて深刻な不況に陥りました。やがて景気が回復したものの、再び「100 年に一度」と言われる大不況に突入しました。日本の社会は世界一の長寿国となり、世界に先駆けて少子化、高齢化などの新たな局面を迎えています。

2.時代の変化を感じ、読み取り、進んでいく人材が求められている

今我々の目の前で、かつて世界の誰も経験していないことが連続して起きている、と感じています。そういう時代に何が必要か?が問われています。

実はこういう時代に今自分がいるということは、喜ぶべきことなのだと思います。誰か素晴らしい人の後を追っていけば、その人の言うことを聞いて着実に実行していきさえすれば、会社の繁栄ひいては国や社会の繁栄につながる、そういう時代ではなくなっています。

一人ひとりの個性、一人ひとりのアイデア、そういうものが大切になっている時代が来ているということを強く感じています。そういう時代の変化を感じ、読み取り、自ら進んでいく人が、今の日本に求められています。

過去のパラダイム(模範、実例)にはない新しいことが、日々起きてきます。現在のような未知と未経験の環境の中で、現代の経営者は何をなすべきでしょうか。

経営者はそういうことを理解し、自己啓発し、高めていかなければなりません。

それが問われています。

3.「グローバル化」時代の人材育成を考え直そう

「サブプライムローン問題」や「リーマンショック」に見られるように世界経済は非常に緊密化と一体化しています。世界のどこかで発生した経済問題が、瞬く間に日本を直撃します。日本は、もはや独立的な環境で生きていくことができなくなっているのです。

そういう状況から日本企業においても「グローバル化」がキーワードになっています。

経営者が幹部や社員に対して行う人材教育についても、新しい考え方が求められるようになっています。

経営者の多くの方々は、そのことをわかっていながらも「うちはグローバル化に対応できる人材がいない、育たない」と、感じておられるかもしれません。

しかしながら、それは必ずしも正しい考えではありません。企業の多くの方々が、どうすれば今の時代に合ったリーダーが育つのか、その方法を従来の延長線で模索されているのではないでしょうか。

昨今の時代変化の中では、今までのやり方だけで新しい時代に適応した人材を育てることはできません。

旧来の方法にとらわれず、新しい方法・発想を取り入れていくことが必要ではないでしょうか。

4.リーダーとしての源泉は自分の中にある

HR研究会は、経営者および管理職層に対して管理者とリーダー研修を行っています。そのときの大きなテーマは「自分を知ること」です。そして「リーダーとしての源泉は、自分の中に無尽蔵にある」、ということを知っていただくことに重点を置いています。

その意味についてお話しましょう。

これは知識を得るということではなく、自分の生き方にいかにコミットする(責任を持つ)か、ということです。その核を持っているかどうかが大きなポイントになります。

日本の会社では、「我社の管理者はリーダーシップがない」というような意見をよく耳にします。

上位の人は、さらにその上位の人に対して「リーダーシップがない」と言います。

これは自分の問題ではなく、上位の人にリーダーシップがないという発想です。

その発想には、自分が気づき、重要なことを担っていくという認識が欠けているのではないでしょうか。リーダーシップというのは誰でも持っているべきものです。

ところが、その可能性を自ら気付かなかったり、蓋をしたりしています。

それが問題である、と私は考えています。

5.今まで知らなかった自分に気付こう

日本人の多くは、ふだんの生活の中で「自分らしさ」を出すことには抵抗がありません。

しかし、会社の中では「自分らしさ」を出してはいけないものだと考える風潮があります。

ある決まったワクの中に入って、仕事をこなしていくのが管理者とリーダーのあるべき姿であり、そこから外れてはいけない。そういう考え方が体に染みついているようです。

日本人の多くは、子供の頃からきちっとワクにはまることを教えられて育ちます。もしかすると、「自分らしさ」を出すということは、日本の伝統的な「和」という考え方に反していると感じるのかもしれません。

ここには実は、非常に深い問題をはらんでいます。

聖徳太子以来、「和」を大切にしてきた日本人が、外国から押し寄せてくる波にどう立ち向かっていくか、という問題とも絡んできます。

「自分らしさ」を出すことは、「リーダーシップの発揮」につながります。

「自分らしさを知る」ということは、とりもなおさず「自分を知る」ということです。各種の研修では、自己診断したり、参加者同士で「見えない自分」のことを互いに言ってもらったりします。その場合、本音で言ってもらうことが重要です。

表面的な言葉でなく、相手の成長を願う心の声を言葉にしてもらっています。

お互いに本気になって伝え合うことが重要なのです。


次号では、次のことを学びます。

6.相手を褒め、認知する関わりを持とう

7.新しい考え方が問われている

8.個の強い力が必要とされる時代になる

9.コーチングで参加者と一緒に答を見つける

10.本音で語り合える場で何かを学び成長しよう

沙 文灝

日立信息系統(上海)有限公司 企画本部 副部長 (上海在住)

専門分野
企業戦略・生産管理・改善活動・ITコンサル・マーケティング・地理情報(GIS)

トヨタグループ企業の開発課長、生産統括課長、最大手GISコンサル会社パスコのソリューション課長と製品開発課長、中国上海漢得情報技術有限公司の副総裁(Business Develop VP)、ダィレクター(Director)、プリンシプルコンサルタント(Principle Consultant)に勤め、日立中国での代表コンサルタントとして中国各種情報化フォーラムで講演する。
中国各業種で、中国大手企業および日本海外子会社で数多くの経営およびERPコンサル業務に携わる。現在は日本と中国の企業文化対する理解をベース、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行い。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。

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