2010年05月28日(金)

グローバル化時代を切り開く人材の育成 その2

日立信息系統(上海)有限公司 企画室副室長 沙 文灝


私は20 年前に訪日しました。この20 年の間に日本の社会には大きな変化がありました。

過去どこの国でも経験したことのないようなことが世の中で起きている。そういう時代になったという実感があります。

こういう時代に経営者みずからが修得すべきことは何か、企業にとって必要な人材教育とは何か、について、大きな視点から考えてみました。


前号では次のことを述べました。


1、手本がない時代に突入した

2、時代の変化を感じ、読み取り、進んでいく人材が求められている

3、「グローバル化」時代の人材育成を考え直そう

4、リーダーとしての源泉は自分の中にある

5、今まで知らなかった自分に気付こう


今号はその続きです。


6、相手を褒め、認知する関わりを持とう

HRA が主催する研修の中でわかったことがあります。「日本人の多くは褒められたこと、認知されたことがない」、ということです。「ダメだ」、「よくない」、「できていない」といった否定形で言われることばかりです。

そういうことばかり言われていると、次第に萎縮していかざるをえません。特に企業の中にいる人は、褒める楽しさとか、褒められる喜びを知らない人が多いことに驚かされます。

実際、研修の場でこういうことがありました。参加された方に、「相手を褒めてください」と言うと、部屋の空気が冷たくなりました。「どうされましたか?」と聞くと、「うちの会社では褒めたことないし、褒められたこともありません」という反応がありました。これが現実です。

そう考えてくると、「褒める」という行為は企業文化に関わってくることがわかります。

リーダーは、相手の良いところをタイミング良く褒めることが必要なのです。あくまでも相手の成長のためを思って褒める、良い所は良いと言ってあげる。本質的なところを認知する。もちろん改善点も言ってあげる。そういう関わりが求められているのです。

実際、管理者とリーダー研修の中で、参加された方々から「今まで知らなかった自分がわかった」とか、「自分がモヤモヤしていたものがわかった」といった感想がたくさん出されています。

研修では、知識を得るだけでなく、チームの中から創り出すということを体感していただきます。それがカギであると思っています。


7、新しい考え方が問われている

日本人の気質として「和」を重んじる反面、誰が責任を持つのかはっきりしない、摩擦を起こさないためにはっきりモノを言わない、という側面があります。「自分らしさ」を出すということが、旧来の「和」を壊すことにもつながるかもしれません。両方のバランスはどうなるでしょうか?

私はこう考えています。これからの日本は、「守る」ことと「壊す」ことをぶつけ合いながら新しいものを創っていかなければならない時代に来ているのではないかと。旧来の「和」を後生大事に持ち続けるのがいいのでしょうか?今ある「和」以上に優れた「和」がある。そういう問いかけなのです。

日本人が昔から持っている「和」の感性は、日本人特有のものです。今そこに海外から多様な価値観が入ってきています。それをどう取り込んで活かしていくかということが今試されていると思います。


8、個の強い力が必要とされる時代になる

欧米には個人主義というものがあります。日本人が彼らのマネをするというのではありません。日本人の特性を活かしながら「自分らしさ」を出していくということが求められます。

あるプロジェクトでリスクを取ってでも前へ進まなければならないというときに、「部長もしくは他の上司が行ってくれないといけません」という人がたくさんいます。自分が先頭に立って突破しようという人のほうが少ない。それが現状です。

これからはプロフェッショナリズムという考え方が絶対に必要になるでしょう。その道の専門家になることを個々人が目指しながら、チームとしての知恵をどれだけ高めていくか、それが重要です。

個の力を引き出すのは、自分の意識です。他人がどうのこうのというのではなく、自分がどこに行こうとしているのか、この場面で自分は何ができるのか、という意識です。

個々人にとっては、「挑戦と恐怖」の繰り返しになります。これからの日本人一人ひとりが乗り越えてはじめて新しい時代が開けるのではないでしょうか。


9、コーチングで参加者と一緒に答を見つける

全体を見据えながら個々人が力を発揮して突破していくような組織をつくっていかないと、これからの日本企業は生き残っていけないでしょう。それは従来の日本の常識と違うところです。日本企業はそれにチャレンジしていく必要があります。

HRA では、経営者、管理職、社員の皆様に対して、個々人が自分を知り、力を発揮していけるようなセミナーやワークショップを提供していきたいと考えています。個々人が持っているエネルギー、つまりパッション、情熱などを外に出して違いを理解していく、というものです。本音で言える場を作って、その中から新しい自分を生み出していくというものです。従来型の知識を提供する場だけではなく、自分の中から出てくるものから答を見つけていくという場が必要です。

我々はそれをHRA コーチングと呼んでいます。決められたアジェンダ(議題)を決められた通りにやっていくというファシリテーションとは違う方法です。コーチングというのは、答がわからない状態から入っていって、参加した人たちと一緒に答を見つけるというものです。答えの源はすべて参加者にあります。HRA コーチングは個人単位だけでなく、ここ数年チーム単位のものの重要性が高まってきています。

HRA コーチングでは、従来の体験とか演習というものではなく、さらにそれを推し進め、参加した人たちの想いや知恵から新しいものを創造していくことを目的としています。


10、本音で語り合える場で何かを学び成長しよう

参加者に皆様が本音で語る場を作るために、我々はいろいろなことに配慮しています。

まず、その場が参加者にとって安全であるということを納得していただいています。その場が安全でなかったら、絶対にモノを言えません。安全という意味の中には、守秘義務も含まれますし、「自分のことをオープンにする」ということも含まれます。コミュニケーションの基本です。

何年も社会人として働いてくると、たいていの人は「本音を言っちゃまずい」と思っています。本当は言いたいと思っていることも、言ってしまうと上司や先輩から「おまえ、あんなこと言うもんじゃない」と批判されるのではないかと心配する。そうするうちに本音を言わなくなる。それでは自分の成長が妨げられてしまうますので、その垣根を取り払っていただきます。

さらに、「研修の場でどんなことが起きても、それは学びです」ということも納得していただいています。ある事柄がうまくいかなかったとしても、そこから何を学ぶかがその人の成長にとって重要であり、次につながります。それを理解していただいています。

実際、研修の場では皆さんオープンな雰囲気で参加されます。

沙 文灝

日立信息系統(上海)有限公司 企画本部 副部長 (上海在住)

専門分野
企業戦略・生産管理・改善活動・ITコンサル・マーケティング・地理情報(GIS)

トヨタグループ企業の開発課長、生産統括課長、最大手GISコンサル会社パスコのソリューション課長と製品開発課長、中国上海漢得情報技術有限公司の副総裁(Business Develop VP)、ダィレクター(Director)、プリンシプルコンサルタント(Principle Consultant)に勤め、日立中国での代表コンサルタントとして中国各種情報化フォーラムで講演する。
中国各業種で、中国大手企業および日本海外子会社で数多くの経営およびERPコンサル業務に携わる。現在は日本と中国の企業文化対する理解をベース、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行い。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。

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