2010年01月04日(月)

微妙に違うからこそおもしろい中日文化

ビジネスマナー・ビジネス日本語 講師 島田 由利子


「家の中に突然ヘビが現れたんです!そうしたら産まれてきた子供はやっぱり男の子でした!」ある日、1歳の子をもつ日系企業勤務の上海人女性が、妊娠中のできごとをおもしろそうに私に話してくれました。「どこから入ってきたのかも全くわからないんです、うち6階だし・・・。」隣にいた同僚の女性社員もニコニコしながら、「わたしはヘビの夢をみましたよ!」と教えてくれました。そして彼女にも2歳になる男の子がいます。


日本では、金運を信じる方も確かにいらっしゃるヘビですが、限りなく100%に近い人たちに嫌われているのは事実でしょう。しかし上海では、ヘビは男の子が産まれる予兆として信じる人たちも多くいます。ちなみに女の子が生まれる予兆はないそうです。

日本で変化した漢字や熟語

諸子百家の時代から約二千年を経た現代日本で、今なお多くの人々に愛されていて、最近はふたたびブームになっているという≪論語≫や、ビジネスマンのバイブルとして「敵を知り己を知れば百戦あやうからず!」などの兵法で彼らを魅了している≪孫子の兵法≫、「上善如水」のように人の道を説く老子の名言の数々など、中国から伝わった教えに影響を受けている人は少なくありません。また、≪史記≫をはじめとする様々な書物から多くのことわざが日本語に翻訳され、様々な場面で使われております。が、年月を経て、熟語や漢字の一部、また意味や使われる場面などなど微妙に違ってきているものもあります。

また同じものや同様の風習などでも捉え方が少し違ってきているものもあり、言語的な問題からきているのか、生活習慣の違いからきているのか、あるいはもっと大きなうねりの関係からきているのか、理由はさまざまでしょうが、興味深く思っております。


たとえば、中国の「虎頭蛇尾」、虎がいつの間にか竜に変わり、日本では「竜頭蛇尾」、中国の「賢妻良母」、いつの間にか入れ替わって日本では「良妻賢母」に。面白いですね。

中日で大きく異なる"老"の使われ方

私が注目しているのは"老"ということばの使い方です。今の日本では一般的に、この漢字はお年を召した方々にしか使われません。また、それほどはいい意味合いが込められていないように感じます。が、中国では、もちろんお年を召した方に対して使う言葉ですが、それ以外に、"経験がある"人にも使われます。以前ある家具を購入した折、その組み立てを师傅(しふ)に頼んだのですが、別の中国人男性がその職人さんに「老师傅」とよびかけていました。年配の师傅という意味もありますが、経験のある先輩としての尊敬の意味も込められているのです。「老師」などは典型的な言葉ではないでしょうか。「老師」は学校の先生だけでなく、公的機関などで先輩として後輩に何かを教える人にも使われるそうです。中国では経験がある、というのはいいことであり、尊敬に値することなのです。


会社や組織などで、たとえば、王という方が二人いたら、たとえ同い年でも、仕事の経験が浅い人は小王とよばれ、経験がある方は老王と呼ばれます。老王と呼ばれる方は気分がいいようです。
また、「老資格」という誉め言葉があります。ある特定の分野、専門的な事柄に関して経験があり、発言力を持っている人のことを、あの方は「資格很老」といい、尊敬の念がこめられています。たとえ30歳ぐらいでも、その専門分野に関して永年の経験があり、その組織で一番であれば、間違いなく「老資格」です。


今年の干支"寅"(虎)は、中国では男性を象徴する動物ですが(日本ではタイガースを象徴する動物と思っている方も多いでしょうが)、虎のことを話し言葉では老虎(らおふ)といいます。この場合の"老"は虎に対する敬称だそうです。


「年はとるものではなく、重ねるもの」・・以前、お顔に美しい皺をきざんだご婦人が私におっしゃいました。それ以来、ことあるごとにこの言葉を思い出しています。ビジネス日本語の生徒たちが「年をとったら・・」などといえば、即座に「年はとるものではなく重ねるものですよ」と訂正。「重ねるとどんどんプラスになる感じでしょ?」。


もちろん日本でも"老舗"のような使われ方をする言葉はありますが、一般的には、ややもの悲しい響きのある"老"です。それにひきかえ中国での"老"は、本来の意味に加えて一種独特の存在感を持っている感じがするのは私だけでしょうか。


微妙に違うからこそおもしろい中日文化、興味が尽きません。

島田 由利子

ビジネスマナー・ビジネス日本語 講師 (上海在住)

専門分野
ビジネスマナー・日本語講師

日米および香港・上海での長く幅広い社会経験から裏打ちされた、ビジネスマナーおよび語学指導に好評を得る。
各種研修と講演および各誌コラム執筆多数。

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