2010年06月30日(水)

微妙に違うからこそおもしろい中日文化7-なんと便利な中国語-

ビジネスマナー・ビジネス日本語 講師 島田 由利子


中国では、家族、親族の団欒に対する想いは、現代社会においてもまだ強く残っています。中秋節は、今でも必ず一家団欒でお月さまを鑑賞する、という気持ちで迎える人が多いと思います。そして、親族の呼び方ひとつをとっても、そこから中国での家族、親族のつながりの強さを垣間見られ、親族のことは、その呼び方を聞いただけで、どういった血縁関係であるかが分かります。

一言で親族・血縁関係を表す呼び方

 「父親の母から入学祝をもらった」、ということを友人に話す時、日本では、「おばあちゃん」、「祖母」という言葉を使いますね。ただ、それだけを聞くと、父親の母なのか、母親の母なのかはまったくわかりません。そこで「父方の祖母」とか、「母方の祖母」といったように説明をする場合もよくあります。

その点、中国語は便利です。「奶奶(ないない)」と言えば、父方の祖母に決まっているからです。父方の祖父は「爺爺(いえいえ)」と言います。では母方はどうでしょうか。母方の祖母であれば「外婆(わいぽ)」、母方の祖父は「外公(わいこん)」といいます。母方の祖母、祖父は、ほかにもそれぞれ「姥姥(らおらお)」、「姥爷(らおいえ)」という呼び方もあります。いずれにしても、その呼び方だけでつながりが分かるため、日本のように、父方の、とか、母方の、といった説明がいらないわけです。

孫の性別まで分かる呼び方

孫も同様です。日本語だと「孫が・・」というと、それだけでは息子の子供か娘の子供か、男の子か女の子か、まったくわかりません。説明がいるときには、「娘のほうの孫で、女の子なんですが・・」などと言うわけです。が、中国語では、「孫子(すんず)」と言えば息子の男児、「孫女(すんにゅ)」といえば、息子の女児のことで、娘の男児は「外孫(わいすん)」、娘の女児は「外孫女(わいすんにゅ)」と言います。また、甥のことを言う時も、兄弟の息子であれば、「侄子(ちぃず)」、姉妹の息子であれば「外甥(わいしょん)」です。中国語では、母方や姉妹方の親族を呼ぶときには、「外(わい)」をつけるケースがほとんどです。

 このように、中国語では、親族のことは、その呼び方を聞いただけで、どういった血縁関係であるかが分かります。

自分より年上か年下かまでわかる便利な呼び方も

 たとえば、いとこの呼び方です。日本では、父の弟のこどもで自分より年下の女の子、を説明する場合、「父方のいとこで、父の弟の子にあたり、私より年下の女の子なんだけど・・」とそのまま説明する必要がありますが、中国語では、「堂妹(たんめい)」の一言です。父の男兄弟、つまり自分と名字が同じであるいとこには「堂」をつけます。そして、自分より年下の女の子なので、妹をつけるわけです。これに対して、名字が違ういとこには「表」をつけます。なので、上記の場合、もし父の弟ではなく、父の妹の子であれば「表妹(びゃおめい)」になります。中国では、夫婦別姓で、家族の中で母親だけが別の名字なので、父とその妹は兄弟なので同じ名字でも、妹の子たちは名字が違うからです(妹のだんなさまの名字)。父の男兄弟は基本的にみな同じ名字なので、その子供たちも同じ名字のため、堂哥、堂弟、堂姐、堂妹となります。そして、父の姉と妹、および母の兄弟姉妹すべてのいとこは、表哥、表弟、表姐、表妹となります。自分より年上の男の子であれば哥、年下の男の子であれば弟、同じく女の子であれば、姐か妹をつけます。簡潔かつ明瞭です。

親しみをこめて「お姉さん」

 余談になりますが、中国ではよく、お姉さんやお兄さんの話をするときに、「姐姐(ちぇちぇ)」が、とか、「哥哥(ぐぅぐぅ)」が、とか言いますが、いとこのことも、大体は「姐姐」や「哥哥」を使う場合が多いようです。「親姐姐?(ちんちぇちぇ?)」、これは、親とお姉さんではなく、実のおねえさん?という意味ですが、こう聞くとたいていは実の姉や兄ではなく、いとこのことだったりします。また、血がつながっていなくても、子供のころからよく遊んでもらったとか、親しい人であれば、「姐姐」や「哥哥」を使うこともよくあります。以前、日本語を習い始めたばかりという知り合いの女の子から、「お姉さん」とよびかけられ、なんだかくすぐったいような不思議な気持ちになったことがありました。もちろん、「姐姐」を訳して親しみを込めて呼んでくれたのでうれしかったのですが、中国語で「姐姐」、とか「島田姐」、とか呼ばれるのはごく普通ですが、日本語で「お姉さん」と呼ばれると、何とも言えない面白い感覚だったことを覚えています。


 冒頭でも記しましたが、中国では、家族、親族の団欒に対する想いは、現代社会においてもまだまだ強く残っていると感じます。中秋節は、今でも必ず一家団欒でお月さまを鑑賞する、という気持ちで迎える人が多いと思います。特に日本のそれが年々希薄になっているため、なおさら強く感じてしまうのかもしれません。そして、親族の呼び方ひとつをとっても、そこから中国での家族、親族のつながりの強さを垣間見られる気がします。


 微妙に違うからこそおもしろい中日文化、興味が尽きません。

島田 由利子

ビジネスマナー・ビジネス日本語 講師 (上海在住)

専門分野
ビジネスマナー・日本語講師

日米および香港・上海での長く幅広い社会経験から裏打ちされた、ビジネスマナーおよび語学指導に好評を得る。
各種研修と講演および各誌コラム執筆多数。

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島田 由利子
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