2010年08月23日(月)

微妙に違うからこそおもしろい中日文化8

ビジネスマナー・ビジネス日本語 講師 島田 由利子


‐バスと市民と生活と・・‐


 地下鉄が11号線まで開通、浦東空港や虹橋空港とも直結し、猛スピードでインフラの整備が進んでいる上海です。が、やはり市民の足といえばやはりバスを思い浮かべます。日本の都市部のようにいわゆる私鉄がない分、膨大な便数のバスが上海中をくまなく走行しており、市民にとって今でも欠かせない存在です。1度か2度乗り換えればある程度はどこへでもいくことができますし、ネットで出発地と目的地を入れれば乗換便、所要時間まで教えてくれます。私は、バスを乗り継いで目的地へ行くという方法は、上海に居住し始めて初めて経験しましたが、同時に、乗ってみて初めてバスのおもしろさを知りました。

バスのおもしろさ

 当初、タクシーを利用していた私が、バスをよく利用するようになったのは、もちろん便利であることもありますが、やはり大きいのは、バスの中で、現代社会の縮図のようなものを見ることができたり、新しい発見をしたりすることでしょう。中国では、子供は、一緒に住んでいる父方の祖父母、もしくは母方の祖父母が学校の送り迎えや、習い事の送り迎えをしてくれるケースが多いのですが、バスでも孫を連れたおじいさん、おばあさんを見かけます。たいてい孫の荷物(学校や習い事の用具)はおじいさん、おばあさんが持っていらっしゃって孫は手ぶら、席が空くと、ほらほら、と孫を座らせます。怒ったりしている様子を見たことがありません。とにかく、小皇帝、小公主ここにあり、です。

 列車の上海駅に停まるバスには、びっくりするぐらい大きな荷物を持った男性たちが乗り込んでくることがあります。いわゆる民工とよばれる人たちで、赤銅色に日焼けした皮膚から過酷な労働であっただろうことがうかがえます。インフラは民工の人たちなしには整備できないだろうに、などと考えてしまいます。

 ある時、乗り間違えた私が運転手さんに、どこそこへ行きたいんですが、と尋ねたところ、それを聞いていた乗客の一人が、~~で~路のバスに乗ればいい、と、そうすると、奥の方から別の乗客が、いやいや~~で~路のバスに乗る方が早いよ!と。また別の乗客が違う違う!と、バスの中が、わあわあと大騒ぎになったこともありました。静かな、というより、静かにしないといけない日本のバスでは考えられません。うれしいやら照れくさいやら、複雑な気分でした。

 そして、大部分はワンマンバスなので車掌さんは乗車していないのですが、走行距離が長いバスは行き先で値段が変わるため、必ず車掌さんが乗っています。この車掌さんがびっくりするぐらい皆さんしっかり者で、本当に感心してしまいます。どれだけ混んでいても、誰が乗ってきてまだお金を払っていないなど把握していて、降りるべきバス停で降りなかった人にはするどく指摘。荷物を座席においている人には、今は膝の上にのせて、3つ先の停留所過ぎたらバスが空くから座席においてもいい、などと指導。どんな質問にもすぐ答えて、その間もバスが右折のときには窓から"慢"と書かれた赤い旗をひらひら。とにかくバスの中のことはすべて仕切っていて、頼もしささえ感じます。

バスのこわさ

 もちろん、マンウォッチングが楽しいというプラスの面ばかりではありません。最近は万博の影響でかなり荒さはおさえられていますが、とにかく、急発進、急停車が多いため、乗ってから奥へ進むときに、どこも持たずに歩くことは危険です。へたをするとけがをすることになりかねないからです。よってバスの中では、つかめそうな手すりやシートの背もたれを目で確認しながら、順番にそれらをつかみながら移動するわけです。はっきり言ってへっぴり腰です。バスを利用し始めた当初、ジャングルジムのように黄色いパイプがはりめぐらされているバスの中を見て不思議に思ったものですが、すぐに、あぁ、これは手すりという名の命綱だ、と気がつきました。また、降りる人は、早めに準備して出口ドアのところで待機していなといけません。アナウンスでそれが流れます。日本では、バスがバス停に完全に止まってから出口に移動して降りないと、逆に怒られますよね。ただ、このあたりを把握さえしていれば、バスに乗るのはかなりおもしろいものになると思います。


 ことばというのは、その国に住むと上達が早いとは、巷間言われることですが、それは、ただ単に耳から習得するメリットの問題だけではないと思います。その国で生活し、人々と交流し、独自の文化風習を知ることで、ことばに厚みがでる、ということも関係していると私は信じています。 最近は地下鉄で移動することがほとんどのため、バスに乗る機会も減りましたが、それでもたまにはバスに乗り、市民の生活や習慣、文化などを肌で感じていたいと思います。


 微妙に違うからこそ面白い中日文化、興味が尽きません。

島田 由利子

ビジネスマナー・ビジネス日本語 講師 (上海在住)

専門分野
ビジネスマナー・日本語講師

日米および香港・上海での長く幅広い社会経験から裏打ちされた、ビジネスマナーおよび語学指導に好評を得る。
各種研修と講演および各誌コラム執筆多数。

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島田 由利子
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