2010年03月11日(木)

今こそ監督者教育を その3

社団法人 日本産業訓練協会 TWI認証高級講師 高 志明


仕事の教え方(JI)②


監督者は、部下に仕事を指導する職責と義務があるということは、前号までに学んでいます。部下に、正確に安全に良心的に速く仕事を覚えさせる方法は、教え方の4段階にそって教えるのが正しい方法であり、指導する技能の本来の姿です。

これを、JI(仕事の教え方:Job Instruction)と呼んでいます。


TWI(現場監督者訓練:Training Within Industry)で、学ぶと「仕事の教え方」という監督者(指導者)用のカードを渡されます。これは、監督者が常に携帯し、仕事を教える前に再確認しながら指導するためのものです。

そのカードを見てみましょう!


<仕事の教え方カード>


HRA|中国日系企業の疑問を専門家がアドバイス|Human Resource Association-仕事の教え方カード

このカードは、仕事の教え方を一定の原則に基づき構成されたものであって、過去数十年にわたった多くの先輩指導者の知恵で構成されたものです。

監督者が仕事を指導するとき、このカード一枚にこめられた注意事項にそって仕事を教えれば正しく教えられ、極めて役に立ちます。

TWIの監督者講座では、講義中に「電気コード結び」の実演をしながら、指導の仕方を学びます。指導者は、このカード4段階法にそって、初体験である受講生に電気コード結び作業を完全に覚えさせ、正しい効率的な指導法であることが証明されました。


次に、このカードによる原則と使い方を解説します。


左面 「教え方の4段階」

  1. 標題―仕事の教え方4段階法。
  2. 項目―各段階の主題。
  3. 細目―各段階ですべきこと。
  4. スローガンー監督者が指導する理念、意識。

第1段階-習う準備をさせる

「なぜ第一段階の必要があるのでしょう!」

仕事の成否は、準備段階が極めて重要であることはご承知のとおりです。作業を他人に教えることも同じことです。第1段階は第2、第3、第4段階と密接な関係があり、極めて重要です。したがって、第一段階では5つのこと(細目)をしなければなりません。


細目1;気楽にさせる

作業を指導するときは、部下の気持ちを考えなければなりません。特に、新入を教えるときには、緊張感を解きほぐし、楽な気持ちで仕事に向かえる環境を作ることが大事です。

また、時には先輩社員を教える場合もあるかもしれません。この場面では、なおさら相手の気持ちを考えることが必要ですし、謙遜な姿勢も必要です。


細目2;何の作業をやるかを話す

指導にあたっては、作業名と目的を必ずはっきり告げることが肝要です。これにより、指導を受ける側は、これから何をどういう作業を習得するのかの心構えができ、覚えやすくなります。


細目3;その作業について知っている程度を確かめる

指導時間を把握するため、これから教える作業に対して、従業員がどれぐらいの知識を持っているのかを確認します。


細目4;作業を覚えたい気持ちにさせる

品質は作りこむものであることと、作業の重要性を慎重に伝えます。見た目は簡単な作業であっても品質低下に繋がることをしっかりと把握させます。


細目5;正しい位置につかせる

指導するとき、相手との位置関係が重要です。指導者が作業の動作をはっきり見せられるようにし、勘違いされないように注意を要します。また、危険な環境では、指導を避けなければ指導の効果が落ちます。

第2段階-作業を説明する

「準備の成否は後々の指導へ強く影響する」


第1段階をきちんとこなしてから、第2段階へ進んで行かなければなりません。まだ、正しく指導することも監督者の職責です。


細目1;主なステップを一つずつ言って聞かせ、やってみせ、書いてみせる

指導の第一歩は、作業の主なステップを順に言いながらやって見せます。ステップの順を数字化して、数字で作業順を表すと覚えやすくなります。

(騒音が大きい職場なら書いて見せます)


細目2;急所を強調する

指導の第二歩は、各ステップの急所を言いながらやって見せます。すなわち従業員は作業のステップが分かるだけでは不十分で、急所を理解させることが大切です。そうすることにより、従業員が勝手に急所を省いたり、なくても大丈夫という心情を無くします。


細目3;はっきり、ぬかりなく、根気よく

次は、急所の理由を言いながらやって見せます。

従業員に、なぜこれは急所なのか、なぜこれを守らなければならないかの理由をしっかり、丁寧に説明します。理由が分からない限り、急所を忘れやすいので指導者は気を付けなければなりません。


細目4;理解する能力以上に強いない

「人間の理解力には、早い遅いの個人差がある」

教えたあとは必ず「不明なところありませんか?」と作業に関する質問させる雰囲気を作ります。「大丈夫だね」「やれるね」などの断定的な表現は避けなければなりません。

注;第2段階のルールは、どんな簡単な作業でも(主なステップ、急所、急所の理由)合計3回を教えること!

第3段階-やらせてみせる

三現主義を念頭において、作業員が「わかった」といっても必ず教えた内容(主なステップ、急所、急所の理由)をすべてチェックします。


細目1;やらせてみて-間違いを直す

1回目は、従業員に黙ってやらせて見せます。全体的に主なステップ、守るべき動作、位置などが正確にできているか自分の目でチェックします。不適切な動作があればすぐに直します。習得時の習慣付けは非常に重要です。


細目2;やらせながら、作業を説明させる

2回目は従業員に、教えた主なステップを復唱しながらやらせます。指導者は動作と同時にステップが合っているかチェックします。

すなわち、作業ができたとしても、動作だけをみせられても理解されたかどうかが判断できないから復唱させます。


細目3;もう一度やらせながら、急所を言わせる

3回目は従業員に、教えた主な急所を復唱しながらやらせて、チェックします。すなわち、作業順の動作が正しくできたとしても急所がどこにあるのか、従業員の頭の中にしっかり覚えているかどうか、監督者が動作を見るだけでは判断できないので、言わせて判断します。


細目4;わかったと分かるまで確かめる

4回目は従業員に、教えた主な急所の理由を復唱しながらやらせて、チェックします。すなわち、急所の理由を従業員がしっかり覚えているかどうか、作業全体を理解しているかどうか監督者が動作を見るだけでは判断できないので言わせます。

注;第3段階は従業員に作業のテストですから、やらせてみせるのは合計4回させること。

合格すれば必ず「よくできた!合格だ」と言って、自信を持たせます。

第4段階-教えたあとをみる

監督者としては、従業員に作業をやらせると同時に、フォロー段階も非常に重要な仕事です。従業員に自信をもたせて、よい習慣をしっかりしつけます。多少時間がかかっても、従業員がミスなく作業できたら、手直しや返品などの無駄な時間が省けます。


細目1;仕事に就かせる

仕事をさせる最初の業務指示は明確にし、できるだけあいまい指示をなくします。新しい作業に向かう新人に対して目標がはっきり分かることが必要です。また、あいまいな指示をすると不安につながります。


細目2;わからぬときに聞く人を決めておく

十分教えたとしても、作業中にいかなる問題が起こるか分かりません。

「ゆっくりやってね、困ったら必ず聞きにきてください、監督者の自分がいないときは同じ方法で教えられる○○さんに聞いてください」と、聞く人を指名してあげます。


細目3;たびたび調べる

合格と判断しても、相手は作業の新人ですから、こまめに現場へチェックしにいくことを伝え、約束時間帯に行ってあげます。新人が作業中に、困ったとき頼りにできるからです。


細目4;質問するように仕向ける

新人あるいは新しい作業に馴染んでない者には、いつでも困ったら聞きにして欲しいという監督者の心を従業員に感じさせてください。聞きに来たら嫌な顔をしたり、忙しそうな素振を見せたりしたら2度と聞きに来ません。むしろ「よくぞ聞きに来てくれた」と歓迎してください。


細目5;だんだん指導を減らしていく

習熟度が上がるにしたがって、チェック回数を減らしていきますが、「作業品質が要求通りにできるようになったからチェックを減らすよ」と、理由をはっきり教えます。いつまでも側に付いているのも自信をもてませんし、急に離れたら、上司が自分に対してなにか不満があるのかという不安を持たせてしまいます。


以上、教え方の4段階法を(一部は私個人の解釈)説明しました。

明確なことは、4段階法にしたがって作業指導をするなら従業員の作業はミスがなく、品質よく、能率よく仕事をできます。


「相手が覚えていないのは、自分が教えなかったのだ!」 この自覚を常に意識せよ!


しかし、4段階法を確実に実行し、そしてより大きな成果を出すためには、指導する前に【仕事の教え方カード】右面の各種準備が必要です。

これは次回で学びます。

高 志明

社団法人 日本産業訓練協会 TWI認証高級講師 (上海在住)

専門分野
TWI(Training Within Industry)・監督者・5S教育

日本の龍谷大学法学院修士課程卒業後、松下電器産業(株)に入社、人材開発センターにて中国赴任者の研修講師として8年間担当する。
2002年帰国。上海松下電工に入社、製造部副部長、管理部副部長、生産管理部副部長を担当し、5S運動を導入し生産効率を高め、人事・社員教育制度などを構築した。
日本および日系企業の豊富な生産管理経験を有する、中国人としては希有なコンサルタント。
TWIは、JI(Job Instructing 仕事の教え方)、JR(Job Relation 人の扱い方)、JM(Job Method 改善の仕方)の3つで構成され、日本では「現場監督者技能訓練」といわれ、中国では「一線主管技能培訓」という。
中国の(日系企業を含む)製造業における現場監督者は、情熱はあれども改善技術に乏しく、その改善の一助になりたいと、全国の企業で製造監督者の研修を請け負っている。

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