2009年12月16日(水)

企業のリスクマネジメントと保険 その1

中国保険の歴史と現況


宜安保険経紀有限公司 日系企業本部長兼上海分公司 副総経理
高見 均


企業のリスクマネジメントを考えるに当たって、保険の存在を抜きには考えられないことはご承知のとおりです。特に保険の歴史が浅い中国ではなおさらです。
今号は主に、中国の保険事情を生い立ちを交えて、日本の保険事情との対比と日系保険会社の状況を考察いたします。

改革開放以降、保険も再開

大雑把に解説すると、中国では改革開放(1978年)前の20数年間は国内保険業務が停止され、国際保険業務については中国人民銀行保険部がおこない、国内保険業務は長く停滞していました。
1980年に再開され、1984年中国人民保険公司(PICC)は中国人民銀行から独立、暫く市場を独占していました。その後1986年新羅精算建設兵団農牧保険公司(後の中華連合財産保険公司)次に1988年中国平安保険公司、1991年に中国太平洋保険公司(CPIC)が設立され、1998年中国人民保険公司が生命保険業務の中国人寿保険公司と再保険業務の中国再保険公司さらに海外保険業務の中国保険集団公司に分割されました。
日系保険会社は(今でも範囲は限定されていますが)、当時は、まだ認可を得ていません。
中国進出日系進出企業が、中国国内で保険を手配するには、上記中国国内保険会社で付保する外には手立てがありませんでした。
日系企業にとって、もしもの時の保険は、(今もそうではあるが)極めて重要でしたが、日系企業から見ると、この当時の中国国営保険会社に対する信頼感はかなり薄かったのではないかと思います。

中国は自国保険主義

中国は中国国内の物件は中国国内で付保しなければならないという自国保険主義であり、原則、国外付保ができません。
このような事情(制限)の中で、特に原料や製品の貨物(通称マリンと呼ばれる保険分野)については安心を得るために、再保険でバックアップするなど当然ながらあらゆる様々な工夫が必要でした。
現在では、中国系保険会社は外資系との提携や経営改革がなされつつあります。
地域による格差や実務社員のレベルや意識に格差があり、各論では様々な問題はあるものの、急速に近代化しつつあります。

90年代以降規制緩和

1990年代以降の規制緩和により、米国AIGが美国友邦保険公司上海支社を、東京海上が上海に支社(現在はと東京海上日動(中国)有限公司)を設立しました。
その後、2001年12月にWTO加盟により、急速に欧米系をはじめ外資系保険会社の認可が促進されました。

 

損保系の日系保険会社は、現在次の9社が認可を得ています。

遼寧省に日本財産保険(中国)、天津市に愛和誼財産保険(中国)、
上海市に東京海上日動(中国)、三井住友海上(中国)、日本財産保険(中国)上海分公司、広東省に日本財産保険(中国)広東分公司、三井住友海上(中国)広東分公司、日本興亜財産保険(中国)、さらに三井住友海上(中国)が認可を得ており2010年早々に開業予定。
今後、日系企業の多い江蘇省の認可がどうなるのか注目されます。

 

生保系の日系保険会社は、

2003年に東京海上が生命人寿保険に資本参入し、同じく2003年に日本生命が広電日生と提携し、2009年には長生人寿へと提携先を変更して活動しています。

急激に拡大する保険市場

このような流れの中で中国保険市場は急速に発展し1980年4.6億元1995年683億元2008年末9,784億元という高い伸びを示してきました。中国保険市場は、成熟市場となった日本とは異なり、まだまだ新興市場であり、今後も成長拡大していくことは間違いありません。

損害保険への認識が低い

保険先進国と比べた特徴を挙げると生命保険の比率が75%近くを占め、損害保険は25%程度と低いことが第一です。日本及び欧米では損害保険の比率は40%~50%程度といわれています。
また、その低い比率の損害保険の内、自動車保険の比率が68%程度と日米欧に比べ非常に高いことが第二です。これはその他の商品(保険種目)財産保険或いは傷害保険や企業分野の保険がまだまだ浸透していない、逆にいうと重要性を認識されていないと考えられます。いずれ将来、自動車市場もやがては落ち着き、その他の商品の浸透も進む時期が来るでしょう。
各論については、多くの問題点がありますが次号以降に考察します。


生命保険分野では、補障型商品が25%程度であり、日本に比較して極めて低いのが特徴です。これも中国人の投資意欲の高さから来ているのではと思います。
今後の意識変化がどうなるかにもより安易には言えないが、徐々に補障型が増えバランスが変わるのではないかと思われます。

「中日新保険法検討会」に参加して

2009年10月17日に、精華大学法学院、中国人民大学法学院、中国法政大学比較法研究所、の主催でシンポジウム「中日新保険法検討会」が北京で開催され、日本中央総合法律事務所顾晓中国律師のお誘いのお陰で幸いにも参加でき、改めて感謝申し上げます。また、HR研究会の方新律師も参加され、朝9時から夕方5時過ぎまで大変アカデミックで権威あるシンポジウムでした。
この様な法整備や保険監督当局の開放意識と適正な監督の基、中国の保険市場は市場改革と開放を進め、高い潜在性を更に開花させていくであろうと期待されます。
法学の専門ではないものの長く日中の保険業に関わった者として、現場として、今後、更に時代や契約者のニーズにあった商品開発や認可に期待したいところです。

高見 均

宜安保険経紀有限公司 日系企業本部長兼上海分公司副総経理
(上海在住)

専門分野
企業リスクマネージメント・労働災害対策・企業資産保護

大学法学部卒業後、大手物流会社の機関代理店勤務 (通算27年)。
基板関連冶具メーカ役員を経て、保険ブローカーに転進。中国においては数少ない保険ブローカーとして、中国全土を回り、有効な保険をかけるべく指導している。物流会社およびメーカ勤務経験を活かして、労働災害に関する造詣は深い。

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高見 均
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