2010年02月02日(火)

企業のリスクマネジメントと保険③

火災事故と保険

宜安保険経紀有限公司 日系企業本部長兼上海分公司副総経理
高見 均


企業の所有する固定資産や動産など財産に対する火災リスクについて、日本では火災保険を手当いたします。ここ中国では財産保険又は財産一切保険がそれに当ります。


今号では、企業の財産(工場や事務所建物或いは機械、什器備品、原料、製品など)及びこの管理に起因するリスクと保険について考察いたします。

1.火災事故に備えた保険

① 財産保険


財産に対して、火災、暴風雨等の自然災害や爆発等の外来かつ偶然な要因のリスクをカバーします。

補償の対象となる損害が特定される限定列挙型の財産保険で盗難破損リスクは含まれません。原則として、保険金額は同等な財産を再取得するために必要な新品価格(再調達価格)で設定します。


② 財産一切保険


火災、暴風雨等の自然災害や爆発だけでなく、盗難、破損等の様々な外来かつ偶然な要因により被った損害を補償します。

故意、重過失、法令違反、地震、ボイラー等の爆発に因る直接損害などの免責事項を除く損害を補償するオールリスク型の財産保険です。保険金額の設定は財産保険と同様、新品価格ベースで設定します。


① ②共に在庫通知特約、コンピューター設備担保特約、増加資産担保特約、残存物取り片づけ費用担保特約、特別費用担保特約、専門家費用担保特約、臨時移動担保特約などの特約が付帯できます。いずれも保険金額につきましては、適正な金額設定されていない場合、せっかく保険が付保されていても事故の際に十分な補償が得られない場合があります。


例えば、新品価格が1000万円の機械を、中古のため500万円で買ったということで、500万円で金額設定した場合、災害にあって全損してもやはり500万円の中古しか買えません。また、修理してその修理費が200万円かかったとしても、半分の100万円しか補償されませんので適正保険金額の設定が重要です。

本内容は一般的な保険概要をご紹介しておりますので、詳しくは保険見積の際に確認してください

2.施設所有使用管理に起因する賠償責任保険

企業が賃借している建物では、家主に対する損害賠償責任が発生します。火災だけでなく、階下に対する漏水事故等による損害賠償も考えられます。会社だけでなく、借上げ社宅等でも同様です。このような、損害賠償への備えは不可欠です。


この備えに該当する保険は公衆責任保険といわれ、施設の所有使用管理に起因して第三者に身体障害、財産障害を与えたことにより、被保険者が法律上の経済的賠償責任を負担した場合に肩代わりする保険です。賃借人賠償責任担保条項の特約付帯により、企業が賃借する事務所や社宅等で直接又は間接的に損害(例:内装の欠損、損傷)を与え賃借の企業が負った法律上の損害賠償を補償します。

その他特約には顧客財物賠償責任担保特約、広告物及び装飾設備賠償責任担保特約、飲食物賠償責任担保特約があります。


保険料は賠償の限度額(上海ではRMB1,000万が一般的)或いは地域や建物施設の規模、数や構造等によっても異なりますが、目安としては数千元/年程度と見ておけば良いと思います。保険条件など詳細内容は保険見積の際に十分確認してください

3.機械設備の電気的機械的な事故に備えた保険

機械設備の過電流、過電圧や操作ミス「電気的、機械的な事故」による故障は上記の財産保険では補償されません。この部分を保険でカバーするには、機械保険の付保が必要です。保険金額は再調達の際の関税、運送費、設置費等を含む再調達価格で設定します。

4.予防(防災)とリスク診断

火災事故に関連して、中華人民共和国消防法(下記抜粋)が制定されております。

中国は、1998年4月29日第9期全国人民代表大会・常務委員会第2次会議通過により「消防法」が制定されました。6章からなり、第1章総則の第1条では、「火災の予防と火災による被害を減少させ、公民の身体、公共の財産と公民の財産の安全を保護し、公共の安全を維持し、社会主義近代化建設の順調な進行を保障するため、本法を制定する。」と定められています。


第2条では、「消防活動は予防を主とし、災害の除去を組み合わせる方針を貫徹し、専門機関と大衆を結合させる原則を堅持し、防火安全責任制を実行する。」と記されています。

火災調査は、第4章消火・救助の章 第39条で「火災鎮火後に、公安消防機構は必要性に応じて火災現場を封鎖し、火災原因の調査、認定に責任を持ち、火災による損失を確定し、火災事故の責任を明らかにする権限を有している。大規模な火災事故の発生に対して、国務院あるいは省級人民政府が必要と認めたときは、調査を行うことができる。火災鎮火後に、火災を発生させた「単位」は、公安消防機構の要求に応じて現場を保全し、事故の調査を受け入れ、事実どおりに火災の事実についての状況を説明しなくてはならない。」とあり、中国における火災調査の法的根拠となっています。


火災事故は起こしてはいけない事故ですので、普段からの予防(防災)が重要ですが、日系の損害保険会社には各企業の様々なリスク診断(リスクサーベイ;通常無料)をする部門がありますので、防災の視点からご興味のある方は、私にお声掛けいただければ適宜ご紹介いたします。

高見 均

宜安保険経紀有限公司 日系企業本部長兼上海分公司副総経理
(上海在住)

専門分野
企業リスクマネージメント・労働災害対策・企業資産保護

大学法学部卒業後、大手物流会社の機関代理店勤務 (通算27年)。
基板関連冶具メーカ役員を経て、保険ブローカーに転進。中国においては数少ない保険ブローカーとして、中国全土を回り、有効な保険をかけるべく指導している。物流会社およびメーカ勤務経験を活かして、労働災害に関する造詣は深い。

この顧問・専門家のブログを見る

メール

高見 均
このHRAホームページの先頭へ