2010年04月16日(金)

企業のリスクマネジメントと保険④ 交通事故と保険

宜安保険経紀有限公司 日系企業本部長兼上海分公司副総経理
高見 均


中国の昨年(09年)新車販売台数は前年比46.15%増の1364万台と急速に伸びており、これに比例して交通事故も増加しています。

中国では、車両保有台数に対する交通事故死亡者の割合が高く、交通事故の極めて多い現状(08年死亡者:73,990人)は日本の1台当たりの死亡者数の約6.7倍です。

今号は、この様な交通事故に備えた保険対応と問題点について考察します。


万一の自動車事故に備えた保険は十分でしょうか?

自動車保険

大きく分けますと、政府管掌の強制保険と上乗せとして掛けられる商業保険がありますが、保険の引き受けについては、外資の保険会社は認められておらず、中国国内系保険会社のみ引き受けが可能です。


<保険の概要と付保例>


①強制保険の概要

  1. 機動車交通事故責任強制保険:死亡後遺症賠償額11万元、医療費用1万元、
  2. 財産損害2,000元
  3. 賠償限度額は低く、対物賠償が付帯されている点が日本と異なります。

②商業保険の概要

  1. 対人対物賠償保険:付保例(第三者責任:200万元)
  2. 車両保険:時価
  3. 搭乗者傷害保険:例;生命人寿保険

CPIC(太平洋財産保険)司乗人員人身意外傷害200万元/座


3.は日本の搭乗者傷害保険に当るものです。その他海外旅行傷害保険や一般の人身意外保険(傷害保険)も交通事故の対象となりますが、この司乗人員人身意外傷害保険は搭乗する人を限定していない傷害保険で、企業が来客時などの送迎に使用する等の場合についても必要となる保険です。


②の商業保険の保険契約は通常強制保険と同時に行いますが、日本の自動車保険と違い各項目に免責金額が設定されており、特約保険料を付加して免責金額をゼロにすることもできますが注意が必要です。

詳しくは、設定諸条件により内容が異なりますので、お問い合わせください。

事故事例

中国の交通事故における損害賠償金額は、例えば被害者日本人男性45歳、会社員年収700万円、妻(専業主婦35歳)子供(10歳)の場合で概算する。

死亡(事故地;杭州市)の場合:凡そ61万元≠795万円+慰謝料。

後遺障害:労働能力喪失40%の場合;凡そ20万元+実費≠261万円+実費+慰謝料。

日本と異なり実収入ではなく定額で算定される項目が多く、都市住民と農村住民で賠償基準が異なる。

例えば、浙江省の2009年道路交通事故人身損害賠償標準は次の様になっている。

  1. 城镇住民平均可支配收入22,727元;
  2. 农村住民平均纯收入9,258元;
  3. 浙江省城镇住民平均消费支出;15,158元
  4. 农村住民平均生活消费支出7,072元;
  5. 职工平均工资34,146元。

日本人の場合、加害者被害者共に日本人である場合をのぞき中国国内法が適用されると思われます。この様な場合には損害賠償としての補償に頼らず、被害者側手配のしっかりした意外傷害保険や生命保険が必要かと思います。

交通事故が発生した場合には、事故当事者がすべき(法的義務)事項の負傷者の速やかな救護、警察(公安)への通報等がありますが、同乗者や通りすがりの運転手や通行人にも負傷者の救護義務があります。


上海市では2009年10月1日より自動車同士の物損事故で事故車が自走可能な場合に「上海市機動車物損交通事故当事人自撤現場、自行協商処理办法」が施行され、これによれば、交通事故当事者は速やかに現場から事故車を撤去し「上海市機動車物損交通事故保険理賠服務中心」に移動し、当事者間で示談と保険請求を同時に行うとされ、このため市内に20箇所に服務中心が設置されています。


また、中国政府・公安部(日本の警察庁に相当)はこのほど、運転免許証の取得や罰則に関する「机動車駕駛証申領和使用規定」を発表しました。施行は2010年4月1日。免許取得の制限や軽微な反則に対する罰則を緩和する一方、飲酒運転など危険行為に対する罰則を強化しました。「呼気などから検出されるアルコール濃度が比較的低い日本の「酒気帯び運転」に相当する「酒後駕駛」の反則点を6点から12点に引き上げ、「反則点12点」になると「免許取り直し」を求められるルールで、実質的に「免許取り消し」処分となります。


また◆20%以上の定員オーバー◆高速道路での逆走・Uターン◆ナンバープレートなどの改造――も「反則点12点」。中国では車両ごとに、走行ができる地域の制限があり、また、大気汚染対策などとして、ナンバープレートの偶数・奇数などで、走行曜日制限が設けられる場合があります。このため、ナンバープレートを取り替える違反行為が発生しています。事故後に逃走した運転手も「反則点12点」。ただし人身事故などでは従来どおり、刑事責任が問われる場合があります。

この様に罰則を強化した一方で身体障害者の免許取得は緩和されました。

これまでは、原則として身体障害者の免許取得は認められておらず、例外として「左足のみを失っている人」だけに、免許取得の道が開かれていました。この制限が大幅に緩和され、新しい「規定」では、障害の状況により、運転を許される車種が指定されます。

高見 均

宜安保険経紀有限公司 日系企業本部長兼上海分公司副総経理
(上海在住)

専門分野
企業リスクマネージメント・労働災害対策・企業資産保護

大学法学部卒業後、大手物流会社の機関代理店勤務 (通算27年)。
基板関連冶具メーカ役員を経て、保険ブローカーに転進。中国においては数少ない保険ブローカーとして、中国全土を回り、有効な保険をかけるべく指導している。物流会社およびメーカ勤務経験を活かして、労働災害に関する造詣は深い。

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