2010年05月10日(月)

「13ヶ月給与」を支払うべきか

上海董孝銘律師事務所 代表弁護士 董 孝銘


中国の多くの企業はボーナスを春節前に支給しており、春節を迎えるための準備資金の一部として当てにされています。採用競争が激しい時期に、ボーナスを最低1ヶ月は支給することを企業が約束する、いわゆる「13ヶ月給与」の労働契約書を締結するケースがあります。この契約が曖昧なために起きたトラブル事例を紹介します。


【事実関係】

A氏は、2007年10月外資系企業B社に販売マネージャーとして入社。

B社とA氏の間で試用期間の月給4000元、試用期間満了後の月給5000元、年間給与待遇としては13ヶ月給与をベースにして計算するという労働契約を締結した。

2008年12月15日、A氏が辞職し、給与清算の際、A氏とB社の間でトラブルが起きた。

A氏の主張;

約束された13ヶ月給与を支給すべき。

金額は、2008年度の勤務月数で5000元を案分比例した4000元である。

B社の主張;

13ヶ月給与は、すなわちボーナスであり毎年在職一年未満で退職した社員に対しては、支給しないということが、暗黙のルールとなっている。

過去10年以上にわたって、これを社員が認めており、A氏の要求は認められない。


A氏はこれを不満として、B社を労働争議仲裁委員会に提訴した。


【仲裁受理の裁定要旨】

同仲裁委員会は、受理後以下のとおりに裁定した。

  1. A氏がB社との労働契約書に「13ヶ月給与は5000人民元をベースに計算する」とあり、その他の制限条件が見当たらない
  2. B社は、13ヶ月給与支払いを承諾したと見なし、A氏に対して労働契約通りに給与を精算すべき。
  3. B社内の、暗黙のルールは法的な効力がない

最終的には、同仲裁委員会の調停下で、B社がA氏に一時金2000元を支払うことで双方は和解した。


【法律根拠】

「労働契約法」第3条により、法により締結された労働契約が拘束力を有し、使用者と労働者は、労働契約に約定した義務を履行しなければなりません。また、社内規定および労働慣習と労働契約の内容との選択肢がある場合、その選択権は労働者にあります。

同法第4条により、使用者は、労働者の切実な利益に直接関わる内部規定及び重要事項の決定を公示し、または労働者に告知しなければなりません。


【コメント】

  1. 上述のようにB社の「13ヶ月給与」支払不要の見解を裏付ける中国労働関連法が見当たらない場合、あくまでも労使間で決めた労働契約にしたがいます。
  2. 「13ヶ月給与」は多くの外資系企業と社員の間で労働契約に決めた給与収入ですが、企業は年末に人事査定点数の低い社員または年末に離職する社員に対して、一方的にこの支払をキャンセルした場合、トラブルが発生します。
  3. 「13ヶ月給与」は給与かそれともボーナスか、その法律性を決めるべきですが、多くの外資系企業は労働契約で明確にしていません。曖昧に「給与待遇は13ヶ月を基準に計算する」などの記述に止まっているか、一部企業で若干の制限条件を付け加える程度であり、早急に明確化すべきです。
  4. もし、労使間で「13ヶ月給与」の適用に関して契約の不明確なまま争った場合、企業は不利な立場に立たされ、社員に有利な裁定を労働争議仲裁委員会より下される可能性が十分あります。
  5. 13ヶ月給与支給を約定している企業は、その支給制限条項を明記すべきです。  例えば、過年度の規則違反行為状況、業績基準の達成度、支払い前辞職、などによる支給制限基準を設けます。さらに労働契約に疑義が生じないよう工夫すれば本事例のようなトラブルは回避できるでしょう。

董 孝銘

上海董孝銘弁護士事務所 所長・弁護士 (上海在住)

専門分野
労働関係法、企業法、知的財産、M&A

長年にわたって外商投資、企業M&A、会社法、人事労務、知的財産など分野において幅広く海外企業にリーガルサービスを提供している。
日本業界紙に定期中国法律解説執筆、中国法律に関する講演多数。

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