2010年09月17日(金)

中秋、国慶節期間の連続有給申請 > 会社は認めなくてもよい

上海開澤律師事務所 パートナー弁護士 王 隠


中国ではまもなく中秋、国慶節を迎えますが、皆様もお出かけですか?


史上最も複雑と言われる大型連休


今年の中秋節は、9月22日から24日までの3日間が連休となり、9月19日(日)、9月25日(土)が出勤となります。一方、国慶節は、10月1日から7日までの7日間が連休となり、9月26日(日)、10月9日(土)が出勤となり、土、日に出勤したり、平日が休みになったりと、一体いつ出勤すべきか分からないとして、史上最も複雑だと言われる大型連休が近づいています。


まる1ヶ月休みたいと申し出る従業員


この大型連休の際に、思い切り年次有給休暇(年休)を利用し、まる1ヶ月ほど休みたいと申し出る従業員がいます。中国国内の法定の連休中はいたし方ないとしても、日本本社が休まないので、せめて中国国内の出勤日に出勤してもらいたいのに、との相談を受けております。


日本の場合、従業員も会社の事情を考え、非常識な年休を申請しない(そもそも日本では年休の消化率が33%とかなり低い水準。*1)が、大々的に年休消化を奨励し、さらに買い取りも推し進める中国では、会社の事情にお構いなく申し出るケースはあるようです。


国務院弁公庁が上述の休暇通知を出すやいなや、賢い一部サラリーマン、OLらはいそいそと計算を始め、自身の年休と中秋、国慶節休暇を合わせることで、この飛石連休を「大型連休」とし、またとないバカンスを楽しもうと企てております。

勤続年数が20年に達している古株従業員は年休を15日享受できるため、これを利用すれば、なんと9月18日~10月14日までの27日間の休暇が可能となります。年休が少ない従業員も何とか知恵を絞り、中秋節と国慶節の間に結婚休暇や病気休暇を挟むことで長期休暇にしようとしております。


会社は拒否できるか


会社の責任者、経営者の多くが、日常の業務に影響しないかと頭を痛めているようです。年休申請を出している従業員は、あまりにも正々堂々としているので、会社がこれを拒否できるでしょうか。


企業には時季変更権がある


その実、それほど悩むことでもありません。従業員が年休を利用して長期休暇とすることは合法ではあるものの、それには会社との協議が必要です。会社が認めて初めて可能となるのです。日本では、従業員の形成権として従業員による一方的な意思表示で当然に年休が成立する(=休める)もので、本来は企業が「許可」や「承認」して成立するようなものではないとしながら、企業が時季変更権を行使した場合は、労働者は請求した時季の年休が「許可」や「承認」されないことがあるのと大差はありません。中国では日本よりさらに一歩踏み入って企業の時季変更権を明記しております。


「従業員有給休暇条例」第五条によると、「企業は生産、業務の具体的状況に応じて、且つ従業員本人の希望を考慮して、従業員の年次有給休暇を統一して計画し手配する。」ことが定められており、多くの従業員が同時に休暇を申請したとき、または、ある職務の従業員の休暇が長すぎて会社の正常な運営と生産に影響するときには、会社としては同規定に基づき年次有給休暇申請を認めなくてもよいとなっています。


即ち、都合の悪い出勤日に休みたいと申し出る従業員には、会社がはっきりと「ノー」といえるものです。


当然、中国人の従業員は権利意識が高いので、従業員の受け止め方にも配慮し、休みにしたら本当に困るという理由を説明し、納得させることが望ましいと思います。


そのためか政府筋も従業員が一度に年休を申請すると、企業が困ると考慮したのか、大型連休の前に、わざわざマスコミを招いて、年休は申請のみで成り立つものではなく、必ず企業から了解を取らなければならないと、従業員の連休過熱にストップをかけております。


*1 ロイターは、2010年08月10日の公表(調査会社のイプソスと協力)によれば24か国において有給休暇を使い切る労働者の割合を調査しまとめた結果を公表した。フランスは89%でトップ、日本は33%で、22位のオーストラリアと南アフリカ共和国の47%に大きく差を開けられたうえでの最下位であった。

王 穏

ジョイ・ハンド(開澤)法律事務所 パートナー弁護士 (上海在住)

専門分野
投資スキーム・行政許認可・労務管理・契約法

東京大学法学士、一橋大学民法修士卒業後、黒田法律事務所、アンダーソン・毛利法律事務所、TMI総合法律事務所、中倫金通法律事務所等の大手法律事務所で経験を積む。
2003年には、「中国投資・契約交渉の実務」を出版するなど、寄稿多数。
日系大手銀行、中小企業基盤整備機構、海外職業訓練協会主催のセミナーなど日系企業向けのセミナー、講演は多数。

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