2010年01月04日

B型肝炎患者を理由に採用拒否できるか。労働者への就業差別について。

上海麗宝商務諮詢有限公司 総経理 叶 暁


会社には自主的採用権があるものの、同時に労働者の就業平等権を保護する義務もあります。病気であることを理由に採用拒否をして敗訴した事例を紹介します。

[争点]

1、就業差別案件の争議処理のプロセスについて

2、就業差別被害者をどうやって救済するか

[事例] -企業がB型肝炎患者の採用を拒否した為、労働者に訴えられた事件-

2008年6月、Aは何回も面接に通ってC社に採用され、採用通知書を受け取った。そして、6月15日に本人の資料と診断報告書を持参の上出勤するように言われた。

しかし、健康診断の結果B型肝炎患者であることが判明した。出勤当日C社はAの健康診断の結果は当社の採用条件に合わないと採用を拒否した。

Aは自分の肝臓機能は正常で、法律にもB型肝炎患者は就業できないとの規定はないと主張したが、C社は[これは会社の規定]だと採用を拒否した。

Aはこれを不服として、[労働法]違反であると訴訟を起こした。

訴訟内容:B型肝炎患者であることを理由に採用を拒否したC社の行為は、労働者の就業平等権を侵犯した為、3万元の精神的慰謝料を要求する。

C社は、案件審理中に一転してAを採用することを決めた。

[審理結果]

求職者と企業が労働契約についての協議期間中は、企業は自主採用の権利はあるが、同時に法律に従って労働者の権利を保護すべき義務もある。

当案例中、AはB型肝炎患者であるが、法律規定のB型肝炎患者禁止の職に応募した訳ではないゆえ、企業はその理由でAの採用を拒否した行為はAの就業平等権利を侵犯した。

その後、企業はAを採用すると決めたが、Aの就業平等権利を侵犯した事実には変わりはない。

一審判決:会社の採用拒否行為はAの就業平等権利を侵犯し、違法である。書面謝罪の上、精神的慰謝料3000元を支払へとの判決を下した。

[研究]

1.就業差別当事者への救済方法

当事例では、C社は[労働法]と[就業促進法]などの規定に違反しています。

[就業促進法]第30条に「企業は求職者が伝染病病原菌保持者であることを理由に、採用拒否してはならない」と明確に規定しています。(衛生部門が規定している禁止工種を除く)

企業は労働契約についての協議期間中に自主採用権はありますが、法律違反はできません。労働法は、労働者の権益と労働関係を調和する為に作られた法規です。

C社の行為は法律に違反し、Aの就業平等権利を侵犯しました。その判決は労働関連法規の立法精神に沿っています。

救済のプロセスについて、[就業促進法]第62条:に違反した場合、労働者は人民法院まで提訴できます。

当案例の問題点は、就業差別についての争議は労働争議に属するかしないか、[労働争議調和仲裁法]は適用するかどうか?

[労働争議調和仲裁法]第2条:企業と労働者の間に下記の争議が発生した場合に適応されます。「(二)労働契約の契約、遂行、変更、解除、中止する時に発生した争議」

当事例を見ると、求職期間中の就業差別紛争は労働契約の契約協議段階の争議であり、企業が正当な理由無く採用を拒否、すなわち不当に契約することを拒否したことになります。

従いまして、[労働争議調和仲裁法]は就業差別争議に適用することが考えられる、“先裁后审”の原則が適用されます。

労働者には便利な仲裁手続きで、まず仲裁で自分の権利を保護できることにすべきです。必要があれば、その後訴訟を起こすことになります。


2.就業差別被害者への救済


当事例では、C社はその後Aを採用すると決めましたが、裁判所は書面謝罪と精神的慰謝料3000元の判決を下しました。

[就業促進法]第68条:当法を違反し、労働者の権益を侵害して財産の損失あるいはその他の損害をもたらした場合には、法律に基づいて民事責任を負います。この判決の謝罪と精神慰謝料は、「その他の損害」に対しての代償となります。

問題は、このような事件の中で、企業は依然労働者を採用しない場合、裁判所はどのように判決を下すでしょうか?

このような事件では、企業と労働者との関係はすでに決裂して、違法したと認定されても労働関係を回復することができない場合が多いことも事実です。

被害者の金銭損失と精神的被害に対して弁償しなければなりません。金銭損失を計算する場合は、労働者の求職費用、給料損失、社会保険損失、その他の求職機会を逃した損失などを計算します。

就労機会の損失に関しては、普通は採用予定企業の賃金を参照します。それがない場合は、地域の最低賃金で計算することができます。

精神的被害は企業の違法行為の程度、労働者が受けた被害の程度、現地の生活レベルなどを要素として考えます。

[結論]

[就業促進法]と労働社会保障部[就業服務及び就業管理規定]では、「:企業が求職者を採用する時、法律、行政法規と国務院衛生部門が規定しているB型肝炎患者禁止の職以外は、B型肝炎項目の健康診断を要求してはならず、労働者がB型肝炎病感染者のために採用を拒絶してはならない」と明確に規定しています。

従いまして、今後企業は労働者に健康診断を要求する時に、一部の業種以外に、このような項目を削除することも考えられます。

叶 暁

上海麗宝商務咨詢有限公司 総経理 (上海在住)

専門分野
労働関係法・企業法・労働仲裁

日本の近畿大学法学部および大阪大学大学院法学研究科卒業後は上海へ戻り、コンサルタント会社の設立に参加共同経営後現在に至る。日系企業の、設立代行から不動産と人材確保および経営相談・指導を含めた各種コンサルティングおよび社員研修を行なっており、日中間ならびに企業・人材の架け橋として努めている。
各社顧問と各種セミナー講師多数。

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