2010年02月20日

秘密保持料が秘密保持契約の構成要件か秘密保持契約の有効性について

上海麗宝商務諮詢有限公司 総経理 叶 暁


労働者が会社と秘密保持契約を交わしたにも拘らず、同業他社の監査役になる、会社側が勝訴した事例を紹介します。

秘密保持料を支払っていなくとも、秘密保持契約は成立・有効だという事例です。

[争点]

1、労働契約の中で定めた秘密保持義務条項は合法か

2、秘密保持条項は競業禁止条項とどう違うか

3、秘密保持料を支払わないと秘密保持契約は無効か

[事例] ―労働者が秘密保持契約を違反して、会社が訴え勝訴した事例―

A社は2003年5月1日に労働者Cと労働契約を締結し、同時に秘密保持契約を締結した。労働契約では「Cの仕事内容は営業と業務推進で、契約期間は2003年5月1日~2006年4月30日」。そして[秘密保持契約]は「Cは在職期間中に競争会社、同類会社にA社の技術及び関連営業情報を洩らしてはならない、競争企業の経営活動などに加盟したり、参加したりしてはならい(兼職を含む)。契約に違反した場合、違約金の50万元を支払うこと。」

Cは2005年11月をもってA社を退職した。その後、Cは在職期間中、2005年5月にA社と競業関係があるB社に株主として入り、B社の監査役を担当したことが判明し、A社は労働仲裁委員会にCを訴えた。

「Cに2005年5月~2005年11月の給料を返還し、違約金を支払うように要求すべき」しかし、仲裁委員会には支持されなかった。

A社は不服とし、裁判所に訴訟を出した「Cはすでに労働契約及び秘密保持契約を違反し、会社に損失をもたらした。Cに2005年5月~2005年11月の給料を返還し、違約金の50万元を支払うことを要求した。」

Cの抗弁「会社は秘密保持料を支払っていない為、秘密保持契約は無効である。2005年5月~11月の間に会社で働いていた為、会社は給料を支払うべき。

[審理結果]

裁判所はA社とCの間締結した労働契約及び秘密保持契約は双方当事者の真実意思表示であって、法律と行政法規にも違反していなく合法であり、双方当事者は自分の義務を履行すべきである。

そして、秘密保持契約では、Cは在職期間中に競争会社、同類会社にA社の技術及び関連営業情報を洩らしてはならない、競争企業の経営活動などに加盟したり、参加したりしてはならい(兼職を含む)と明確に契約している。Cは2005年5月に株主として競争関係のB社に入り、その会社の監査役に就任した為、秘密保持契約中の競業禁止義務を違反したと見なされ、違約責任を負わなければならない。しかし秘密保持契約中の違約金の金額が過大であり、具体的な違約金の金額について再査定が必要である。

CはA社が秘密保持料を支払っていない為、契約は無効であるとの主張について「秘密保持料は企業が当企業の商業秘密を知っている労働者に退職後の一定の期間内に競業禁止義務を履行させる為の補償金である。当事件では、CはまだA社で働いている期間中に秘密保持契約を違反し、秘密保持料は労働契約期間には適用しない。」

但し、Cは2005年5月~11月の間、A社に労働を提供した為、Cにその間の給料を返還せよとの要求は認めない。

一審判決:

1、Cは当判決の発効日から7日以内にA社に違約金10000元を支払う。

2、A社のその他の訴訟請求は認めない。

一審判決後、A社とC双方とも不服で、上訴したが、ニ審裁判所の判決は一審と同様の判決が下された。

[考察]

1、秘密保持義務条項の有効性

A社とCが締結した労働契約及び秘密保持契約は双方当事者の真実意思表示で締結されており、各種法規と照らしても合法です。双方当事者は厳格に自分の義務を履行しなければなりません。ゆえに、労働者Cはその契約条文を履行する義務があります。


2、秘密保持契約と競業禁止義務

[労動法]第102条は当事件のような情況に対しても明確な規定があります。

労働者は労働契約中の秘密保持契約を違反し、企業に経済的損失をもたらした場合、法律に基づいて弁償責任を負わなければなりません。秘密保持契約と競業禁止条項の目的は一致していて、どちらも企業の商業領域中の独占的利益を保障するためであって、労働契約を締結する時の法定競業義務のさらなる明示であり、企業と労働者の権利義務を更に明確にしたものです。

秘密保持条項を労働契約に入れ、秘密保持義務違反をした結果を違約責任に転化させるものです。これは、法律法規にない競業義務を違反した責任と補償についての補充条文として、争議の解決に有効となります。


3,秘密保持料との関係

秘密保持料とは、一般的には企業が当企業の関連商業秘密を知っている従業員が退職した後の一定時間内に競合他社への就職制限などの競業禁止義務を履行する為に与える補償です。当事件では、Cは企業が契約期間内に秘密保持料を受け取っていなかったため、秘密保持契約は無効であると主張しましたが、上述の秘密保持料の定義と異なっているため認められません。

[まとめ]

労働者が法定或いは契約で約定した競業禁止業務を違反した場合、相応の法律責任を負うことになります。当事件中の秘密保持契約の約定は競業禁止条項の約定のようなものでありますが約定義務であり、違約者が負うべき責任は違約責任です。

秘密保持契約は締結時に法的効力が発生し、秘密保持料の支払う状況は発効条件ではありません。秘密保持契約中で約定した違約金額が過大の場合、具体的事情に基づいて裁判所で査定されます。

叶 暁

上海麗宝商務咨詢有限公司 総経理 (上海在住)

専門分野
労働関係法・企業法・労働仲裁

日本の近畿大学法学部および大阪大学大学院法学研究科卒業後は上海へ戻り、コンサルタント会社の設立に参加共同経営後現在に至る。日系企業の、設立代行から不動産と人材確保および経営相談・指導を含めた各種コンサルティングおよび社員研修を行なっており、日中間ならびに企業・人材の架け橋として努めている。
各社顧問と各種セミナー講師多数。

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