2010年04月29日

競業禁止紛争について

上海麗宝商務諮詢有限公司 総経理 叶 暁


労働者が競業制限規定を違反して元の会社に訴えられたが、元の会社が競業制限をするための補償金を明確にしていないため、競業制限効果を得られなかった案例をご紹介します。

[争点]

労働者が秘密保護或いは競業制限約定を違反した場合、企業側の対応策

そのような労働者を採用した競争会社の連帯責任について

約定した競業期限が過ぎても労働者は競業禁止義務を履行しなければならないか?

商業秘密の認定、競業制限契約、補償金についての問題?

[事例]

甲はA社で董事及び常務副総経理などの職務を担当しており、会社の技術秘密、価格体系、ルート政策、取引先の関係などの商業秘密を掌握し、また少額ではあるものの会社株式を持っています。

2000年3月、甲は、[A社を退職してから2年以内に当業界に従事しない] という保証書に署名しました。さらに、A社の規定では、「董事の在任期間及びその後2年以内に自営或いは他人経営の会社に参加し、A社と同類営業或いは会社の利益を損害する活動などを従事してはならない」となっています。(株主は株主の身分が存続する時及び停止してから2年以内に、自分或いは他人の利益の為に会社と直接或いは間接的な業務競争をしてはならない)

なお、A社は保証書の締結にあたって、甲に競業制限補償金としては明確な形で支払っていませんが、A社はその相当額は甲の高い給料、ボーナス、株に含まれていると考えていました。

2002年10月、甲は退職しました。

2004年1月、甲はA社と完全に競争関係のB社に入社し副総経理として、マーケティング部のマーケティング推進及び販売管理を担当しました。その後、A社の甲の元部下の数人がB社に入社しました。

2004年11月、A社は甲とB社を共同被告として不当競争の理由で訴え、甲にB社との労働関係を停止し、競業禁止義務を引き続き履行してすること、およびB社と連帯で経済損失金250万を弁償するよう、裁判に求めました。

[審理結果]

裁判所の審理結果:A社と甲の競業禁止義務の期限は2年であり、2年の期限はすでに過ぎている。甲は自由に就職先を選ぶことができ、A社の利益を守る義務はもうない。よって、A社の甲に対する競業禁止義務を引き続き履行し、B会社との労働契約を中止すべきとの要求は支持しない。

総合的に考えると、甲は競業禁止義務を履行しなかった為、適切に弁償すべきだが、A社は競業禁止補償金の金額を明確にしていない。よって、A会社の過失程度に応じ弁償金の金額を減らす。

B社が甲を採用したことについて、B社は誠実審査義務を果たさなかった為、甲などの数人がA社から離職したこととは関連性が存在し、不当競争の共同過失で連帯弁償責任がある。

以上により、裁判所が判決は、「甲とB社は連帯責任でA社に50万元を弁償し、A社のその他の要求は許可しない」となった。

[考察]

1、労働者が秘密保護或いは競業制限約定を違反した場合、どう企業側に弁償するか?

[労働契約法]第90条によって、労働者は当法の規定を違反して労働契約を解除した、或いは労働契約の中で約定した秘密保護、競業制限に違反し、企業側に損失をもたらした場合、弁償責任があります。

[労働契約法]第23条によって、企業は労働者との労働契約の中で企業の商業秘密、知的所有権を守るなどの秘密保護協議を約定できます。秘密保護義務のある労働者に対して、企業は労働契約或いは秘密保護協議の中で競業制限条項を約定できます。

その場合、労働契約が解除或いは中止された後、競業制限期限内は労働者に毎月の経済補償をしなければなりません。その上で、労働者が競業制限約定を違反した場合、約定に従って企業に違約金を支払わなければなりません。

[労働契約法]第24条によって、競業制限の対象者は企業の高級管理層、高級技術者とその他の秘密保護義務のある人員に限られます。競業制限の範囲、地域、期限などは企業と労働者で協議して制定しますが、競業制限の約定は法律法規に違反してはなりません。

労働契約が解除或いは停止した後、約定の人員が当企業と同類の製品を生産或いは経営している同類業務の競争企業に参加或いは自分で同類製品を経営してはならず、期限は最大2年と規定されています。

 

2、企業が労働者と競業禁止補償を約定或いは履行していない場合、その条項は有効か?

法律の公平、自願、誠実の原則に基づいて、双方は補償問題について協議することができます。よって、双方は補償金を約定していない、或いは企業が支払っていない場合でも、競業禁止条項が無効になるとは限りません。企業が補償金を支払うことを明確に拒否した場合、労働者は競業禁止義務の履行を終了できます。労働者がすでに履行して就職などに不利な状態となった場合には、企業の違約責任を追及し、弁償を要求できます。

本事件では、A社は競業禁止契約の中で競業禁止補償金について明記していません。よって、過失程度によって弁償金の金額を減らし、A社が主張した「甲に支給している高い給料と株の中に競業禁止補償金は含まれている」は支持されませんでした。

 

3、B社は連帯責任があるか?

不当競争訴訟の中で、もし同類競争企業と労働者が共同権利侵害を起こした場合、もたらした損害に対して連帯弁償責任があります。

本事件では、B社は甲とA社の間で競業禁止約定があることを知っていました。競業禁止契約が無効と認定される或いは取り消される前に、B社は競争相手としてA社と甲の間の約定を尊重すべきです。B社は甲などのA社人員数人を雇用したが、これは偶然ではなくB社は甲などとの共同行為だと推定すべきであり、B社はその中である程度の誘惑或いは促進作用をしています。そして結果としてA社の競争力に損害をもたらしました。

そのため、B社と甲はその誠実ではない行為に共同権利侵害責任を負い、連帯責任でA社の経済損失を弁償すべきと判断されました。

 

4、労働者が権利侵害責任等を負った後、引き続き競業禁止義務を履行すべきか?

本事件で、A社と甲が約定した競業禁止期限は2年であり、当事件の審理前にこの期限はすでに過ぎていました。A社の、甲に引き続き競業禁止義務を履行させる主張については「、2年間の期限はすでに過ぎているため、甲がA社の利益を守る義務はもうない」として、支持されませんでした。

[結論]

1、企業の商業秘密が侵害された後の処理方法

[労働と社会保障部が労働争議中商業秘密侵害問題についての回答]に明確に規定されています。

『[反不正当競争法]第20条の規定に従い訴訟することができる。または労働契約の中で明確に商業秘密の保護について約定してある場合で、労働者が履行しなかった為、企業の商業秘密が侵害されて労働紛争が発生し、当事者は労働紛争仲裁委員会に仲裁を申請した場合、仲裁委員会は受理すべき、そして関連規定と労働契約によって裁決を下すべき。』

 

2、競業禁止違約責任と権利侵害責任が競合した場合の処理方法

競業禁止の違約責任と権利侵害責任の競合とは、片方の当事者が違約した時、相手の契約権利つまり債権に損害をもたらしただけではなく、相手の人身或いは財産にも侵害し、相手の財産権などの合法的な権益にも損害をもたらして、法定の義務を違反したことを指します。被害者は相手に違約責任と権利侵害責任の両方を負わせることができます。

労働者競業禁止の違約責任と権利侵害責任の競合は、主に競業禁止義務を違反し、同時に企業の商業秘密の侵犯を含みます。

企業は今後の経営活動の中で、労働仲裁を使って、労働者が競争会社に転職するなどの違約行為を制限できます。すでに訴訟期限を過ぎた場合でも、弁償を要求できます。

以上の方法に問題がある場合は、[反不正当竞争法]の関連規定を使って、違約した労働者と不法競争相手を訴訟対象にすることが考えられます。

叶 暁

上海麗宝商務咨詢有限公司 総経理 (上海在住)

専門分野
労働関係法・企業法・労働仲裁

日本の近畿大学法学部および大阪大学大学院法学研究科卒業後は上海へ戻り、コンサルタント会社の設立に参加共同経営後現在に至る。日系企業の、設立代行から不動産と人材確保および経営相談・指導を含めた各種コンサルティングおよび社員研修を行なっており、日中間ならびに企業・人材の架け橋として努めている。
各社顧問と各種セミナー講師多数。

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