2010年06月15日

労働契約未履行の問題-労働者が労働契約の続行を拒否した為、労働関係が中止された事例-

上海麗宝商務諮詢有限公司 総経理 叶 暁

[争点]

労働者が労働契約の続行を拒否した場合、企業は労働契約を中止する権利があるか?

企業は労働者との労働関係を中止するのに経済補償金を支払う必要があるか?

[事例]

Aは1994年8月にB社に入社し、最後の労働契約は2008年2月28日まで。

1.2008年6月8日、B社はAに下記の[通知書]を出した。

主な内容: 会社は2008年1月16日に会社の掲示板で全体従業員に対し契約続行手続きに関する通知を出した(2008年3月5日に口頭通知もしたが、返答はなかった)、そして、2008年6月10日まで管理部に契約続行手続きをすること。

2.2008年6月11日、AはB社に[返答]を出した。

返答の中で、Aは労働契約続行の願望を表明したが、同時に契約期間、仕事内容、労働報酬などの修正意見も出した。そして会社と一度交渉をしてから契約を結びたいと要求した。

3.B社はAの修正意見を受け取った後、送達でAに[通知書]を配送した。

主な内容: Aの修正要求を同意し、Aが通知書を受け取ってから3日内に契約を締結するように要求した。

4.同年6月20日、Aは労働仲裁委員会に仲裁を申請し、B社に経済補償金を20,300元支払うように求めた。

労働争議仲裁委員会は審理後にAの全ての要求を拒否。Aは裁判所に訴訟を申請。

〔訴訟理由〕

Aの主張:双方の労働契約は2008年2月28日に満期となった後、B社は契約続行通知を出していなかった。2008年6月10日にB社から契約続行通知を受け取ったが、B社が提出した労働契約は[労働契約法] の規定に違反していることを発見した。

AはB社に修正要望を出したが、B社に拒否され、そして、2008年7月1日に労働契約解除の通知をもらった。B会社は[労働法][労働契約法]規定を違反。よって、B社に労働契約解除に関する経済補償金20,300元を支払うように要求した。

B社主張:Aの要求は理不尽であって、事実ではない、却下するように要求した。

[审理结果]

一審裁判所:労働契約の締結過程から見ると、B社は契約が満期になった後、直ちにAに継続通知を出した。Aは審理中にこの事実を否定したが、2008年6月1日に出した返答では口頭通知の期日に対して異議を出さず、ただ契約内容の修正意見を出したのみである。よって、B社は通知義務を果たしたと推定する。

その後、B社はAが出した修正意見に対しAに書面により修正を同意したことを知らせた。しかしAは正当な理由なく会社と契約を締結することを拒否し、労働契約を解除するよう仲裁を申請した。よって、双方が労働契約を締結できない原因はAにあると認定され、B社には過失なし。故にB社は、労働契約未締結期間の2倍給与を支払う必要はない。

双方が労働契約を締結できない原因はAにある、AはB社に経済補償を要求する権利がない、Aのすべての要求を拒否すべき。

一審裁判所は、[労働契約法]第3条、第38条、第46条、第82条の規定により、Aのすべての要求を拒否する判決を下した:。

 

一審判決後、Aは二審裁判所に上訴

二審裁判所の審理結果:当事件の争点は:双方が労働契約を締結できなかったのはB社が採用側として、契約が満期になった後、直ちにAに契約続行通知を出したかどうか。Aは該当事実を否定したが、2008年6月1日に出した返答では口頭通知時期に対して異議を出さずにただ契約内容の修正意見を出した。そしてB社が2008年1月16日に出した通知によって、B社は既にAへの通知を出したと認定できる。

その後、B社がAに書面通知を出して、契約内容については協商で解決することを同意したと表明し、Aの修正意見で契約を修正することを同意したとAに通知まで出したが、Aに正当な理由なく拒否され、労働仲裁に持ち出された。よって、双方が労働契約を締結できなかった原因はAにあり、B社には過失なし。

二審裁判所は、一審裁判所が出した「B社が労働契約未締結の2倍給与を支払う必要はない」との判決を支持した。Aが提出した意見は根拠不足で支持されなかった。

よって、関連規定に従って二審裁判所の判決:は上訴却下。

[研究]

1、労働契約が満期になる前に、どれくらい前もって続行或いは中止を協商すべきか?

[劳动部关于劳动合同管理完善劳动合同制度的通知](中国語)によると、労働契約の締結、続行、変更、中止、解除の各過程の管理を強化すべきです。

労働者の労働契約履行情況については、主に個人の給料、休暇、保険福利、残業と賞罰などの関連資料は厳格に記録しなければなりません。

労働契約が満期になる1ヶ月前をもって労働者に契約意向を書面にて出すべきです。

 

2、企業が規定に違反して労働契約を解除或いは中止した場合はどう処罰するか?

[労働契約法]第48条規定によると、企業が本法規に違反して労働契約を解除或いは中止して、労働者が続行を求めている場合、企業は引き続き契約履行すべきです。

労働者が契約続行を求めていない、或いはもう既に履行できない場合、企業は本法87の規定により、賠償金を支払う必要があります。

[労働契約法]第87条規定では、企業が本法規を違反して労働契約を解除或いは中止した場合、本法規第47条規定の経済補償金の2倍を労働者に弁償金として支払うべきであるとしています。

 

3、労働者が契約続行を拒否した場合、企業は労働契約を停止できるかどうか?経済補償金は必要かどうか?

[労働契約法]の実施後、一部の労働者は[労働契約法]の隙を利用し、企業が労働契約の締結依願を表明した状況で、書面契約を拒否、或いは引き伸ばして、長期間の2倍給与支払い或いは期間無制限契約の締結を狙っています。

[労働契約法]は労働者が労働契約の締結を拒否した場合の状況を明確に規定していないが、このような情況で企業にすべての責任を負わせるのは明らかに不公平です。

よって、[労働契約法実施条例]第5条、第6条で労働者が労働契約の締結を拒否した場合の情況について次のように規定しています。

勤務期間が1ヶ月以内の場合:企業は労働関係を停止すべき、経済補償金、2倍給与の支払いは必要なし、勤務期間中の正常な給料を支払えば済む。

勤務期間が1ヶ月を超して1年未満の場合:企業は労働関係を停止すべき、経済補償金、2倍給与を支払わなければならない。

〔まとめ〕

注意すべきことは、当事者のどちら側が契約の締結を拒否したかの点で争議となりやすい為、[労働契約法実施条例]では明確に、企業の労働者との契約続行意向について、書面通知で知らせなければならない、そして労働契約の中止も書面通知で知らせなければならないと規定してあります。

ここで一つのポイントは、もし企業が契約の締結を要求したが労働者に拒否されて、企業はそこで労働契約を中止させなかった場合、[労働契約法実施条例]第5条、第6条の規定に適せず、企業が契約締結をしなかったと見なし、[労働契約法]第10条、第82条、第14条などは規定に適応されます。

江蘇省高級人民法院[关于审理劳动争议案件的指导意见](中国語)の第6条中で、明確に[労働契約満期にあたって、双方が労働契約を続行していないで、労働者が引き続き企業で働いている場合、企業は1ヶ月以内に労働者と書面契約すべき。労働者が企業の書面通知をもらったが、契約を締結しない場合、企業は[労働契約法実施条例]第5条、第6条の規定により労働者との労働関係を中止したことを支持する。]

叶 暁

上海麗宝商務咨詢有限公司 総経理 (上海在住)

専門分野
労働関係法・企業法・労働仲裁

日本の近畿大学法学部および大阪大学大学院法学研究科卒業後は上海へ戻り、コンサルタント会社の設立に参加共同経営後現在に至る。日系企業の、設立代行から不動産と人材確保および経営相談・指導を含めた各種コンサルティングおよび社員研修を行なっており、日中間ならびに企業・人材の架け橋として努めている。
各社顧問と各種セミナー講師多数。

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