2010年07月31日

試用期間中労災の弁償要求について

上海麗宝商務諮詢有限公司 総経理 叶 暁


試用期間中の従業員が労働災害に遭い、会社が理由なしで「試用期間中止通知書」を発送し、当該社員との労働契約解除したが仲裁と裁判で会社が負けた事例を紹介します。

[争点]

1、試用期間と労働契約の関係について

2、企業側が一方的に試用期間中の従業員を辞退する行為は有効か?

[事例]

Bはある大学の四年生で、2007年3月、A社に採用され、試用期間は一年、主な仕事は職場での実習。そして試用期間中の給与は800元、社会保険なし、労災事故も自己責任である。

2007年8月17日、Bは職場での機械操作中、左脚が機械に絞められ、骨折となった。A社はBの1ヶ月ほどの入院医療費をすべて負担したが、Bに対する労災期間の給料などの支払いを拒否した。2007年9月28日、A社はBに[試用期間中止通知書]を発送し、Bの試用期間中の仕事ぶりは会社の採用条件に合わないとの理由でBの正式採用を断わった。

Bは市労働保障局に労災認定を申請し、八級障害だと認定された。A社はBの医療費をすべて負担し、双方も「労災事故は自己責任」だと約定していた為、その他の費用の負担を拒否した。

Bは労働仲裁委員会に仲裁を申請し「A社に経済補償金、介護費、交通費、食費などの4万元ほどの弁償を求め、採用継続」を要求した。仲裁はA会社に各費用合計14000元の弁償及びBの採用継続と採決した。会社は裁判所に起訴した。

[審理結果]

Bは裁判所に[試用期間協議]、臨時作業証、[労災認定書]及びBの指導役のCの証言と同僚のCの証言を提出した。二人とも「Bは実習期間中に積極的で真面目に仕事をしていて、実践能力が高く、持ち場の採用条件に十分合う」と証言した。それ以外にBは給料明細も提示、Bの母親も会社からの介護為休み証明なども提出した。

A社は、「Bとの労働関係などは存在していない、正式労働契約に至るものなしで、ただ試用期間協議を締結しただけ。試用期間協議は労働契約に属していない、そして双方は社会保険なし、労災事故は自己責任だと約定していた」と強調した。

裁判所の判決「試用期間も労働関係の一つの型として、Bから提出した証拠は十分にA社との労働関係があると証明できる。試用期間協議の中で約定していた「労災事故は自己責任」の条項は法律強制性規定に違反しており、無効な条項である。A社はBの労災保険を納めていない為、労災弁償責任を負うべき。

病院の診断証明により、Bは1ヶ月「停工」休みをした。A社はBに給与を支払っていない故、支払うべきだった給与の25%を経済補償金として別途で支払うべき。そしてBの同僚の証言で、Bの実習中の仕事ぶりは持ち場の仕事に対して十分だと判断する。よって、A社の「Bの試用期間中の仕事ぶりは会社の採用条件に合わない」との認定は証拠不足で、Bを引き続き採用すべき。

よって、裁判はA会社に一括払いでBに給与及びその補償金、家族介護費、交通費、食費などの費用12000元を支払うこと、またBの採用継続と判決しました。

[研究]

1,試用期間と労働契約の関係について

労働契約法には試用期間に関する規定がある。試用期間は労働契約期間内に含まれている。労働契約で試用期間のみを約定した場合、試用期間は成立しない、該当期限は労働契約の期限と見なす。つまり、試用期間の関係も労働契約に属している。試用期間だけを約定するようなものは成立しない、そして労働期間に見なすべきである。

 

2,労災時の給与認定について

労災申請では、労災前の給与証明の提出を求めている、それで待遇を確認する。

試用期間の給与に関しては、労働契約法第20条の規定「試用期間中の給与は該当企業の該当持ち場の最低給与、或いは約定した給与の80%より下回ってはいけない。または該当企業所在地の最低賃金水準を下回ってはいけない。」

 

3,企業が一方的に試用期間従業員の契約解除は無効

労働契約法21条規定「試用期間中、労働者が当法第39条、40条第1項第2項に規定されている状況以外に、企業は労働契約を解除してはいけない。試用期間中に労働契約を解除する場合は、労働者に明確かつ正当な理由を教えなければならない。」

よって、試用期間にはまったく保障がないわけではない。法定条件に合致する場合を除き、企業は簡単に労働契約を解除できない。企業からの労働契約解除で紛糾したら、労働契約の解除が法律に合致していることを企業が証拠を提出し、証明しなければならない。

[最高人民法院关于审理劳动争议案件适用法律若干问题的解释]第13条。

 

4,労災申請の流れについて

A,労災事故発生後、労働行政部門或いはその業界の主管部門に調査を申請し、事故調査報告をする。

B,労災認定を申請する:企業は労災事故発生後の30日間以内に所在地の労働行政部門に労災認定を申請する。企業から申請しない場合、当該社員或いはその直系親戚が事故発生後の一年以内に申請できる。

C,労働仲裁関係確認の申請:もし労災認定中に、企業と双方の間に労働関係が成立しているかどうかについて紛糾が起こった場合、当該社員は一方的に労災認定申請を撤回できる。まず労働仲裁を申請して、労働関係が確認された後にもう一度労災認定を申請する。

[結論]  

試用期間というのは、労働部[労働法意見]第19条の解釈で、企業と労働者が互いに了解、選択する為に約定された6ヶ月間以内の考察期間のことを指します。

試用期間の医療待遇:労働部[关于合同制工人在试用期内患病医疗问题的复函]の規定「契約制の労働者は試用期間中に病気になり、或いは仕事以外の原因で怪我になった時は、医療待遇を有する、医療期間は3ヶ月。」

試用期間中の正式採用条件については、各企業が採用規定制度の中に明確に規定し、事前に当事者に知らせなければなりません。そのために、正式な採用条件に関する書類に署名を受けるべきです。

そして、争議が発生した場合、証拠提出責任は企業にあります。

 

最後、試用期間中の労災責任は企業にあることを十分ご注意ください。

叶 暁

上海麗宝商務咨詢有限公司 総経理 (上海在住)

専門分野
労働関係法・企業法・労働仲裁

日本の近畿大学法学部および大阪大学大学院法学研究科卒業後は上海へ戻り、コンサルタント会社の設立に参加共同経営後現在に至る。日系企業の、設立代行から不動産と人材確保および経営相談・指導を含めた各種コンサルティングおよび社員研修を行なっており、日中間ならびに企業・人材の架け橋として努めている。
各社顧問と各種セミナー講師多数。

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