2011年01月15日(土)

MTPとは? 「管理者に対する最も適した訓練」

上海麗宝商務諮詢有限公司 総経理 叶 暁


MTP(Management Training Program―管理研修プログラム)とは(社)日本産業訓練協会(以下「日産訓」という)が実施している監督者・管理者養成プログラムのことです。TWI研修も管督職を対象とした研修ですが、MTPはさらにその上席にあたる人たちが対象となる研修です。TWIと同様、日産訓により広く実施されており、多くの人事担当者の間でもよく知られた研修です。


MTPの歴史


戦後米国より日本に紹介、導入されたMTPは、その後、長年にわたり、日本の産業界で管理者研修として採用され、戦後の日本経済の復興、発展に貢献してきたといわれています。その受講者総数は100万人を超えており、現在でも、年間約1万人が受講していると推測されます。

また、最近ではアジアを中心とする海外諸国からも注目されており、日産訓」がその導入、普及を行っています。MTP導入後、半世紀を経過するものの、変化する雇用形態や就業者構造など、多様化する労働環境の変化に合わせ、ほぼ5年ごとに改訂され現在に至っています。


MTPの特徴と概要


MTPとは、管理者が自分の組織を管理していくのに必要な知識・技能のすべてを研修するのではなく、主として組織の長に必要な「管理の基礎」を、参加した受講者同士が意見や体験を交換し、相互に交流しながら学びます。研修方法は、知識や理論習得型ではなく、インストラクターのリードにより解を導き出す、少人数での「会議式訓練」や「グループ討議式訓練」といった『参画型研修』の方法で実施されます。


管理者は、管理の仕方についていろいろな体験を持っていますが、その経験の中には、何らかの原則がひそんでいます。 そこで、受講者に体験を発表してもらい、その中にひそんでいる原則を導き出し、理解し合い、考え、行動することを研究し、それを行動として習慣づけ、組織の中でこれを意図的に活用して、主体的に行動する管理者を養成し、組織の刷新を図っていくことに、研修の狙いがあります。

 MTPの受講対象者は、組織の責任者としての立場で、部下と共に組織の総力をあげて職責を遂行していくことになるので、主に「人の管理の仕方」について集中的に研究していくが、採用、配置、給与などのいわゆる人事管理全般について専門的に研究するものではありません。

同様に、特定の業務に関わる専門的な知識や技能の研修は、他の機会、方法にゆだねることになります。


また、部下がいない管理者の場合でも、いつかは部下を持つ可能性もあり、毎日の職場生活が、人と人との接触の連続で、これら関係者の協力なしには、自分の任務を達成できないのが現実ですから、受講対象者となります。


MTPのカリキュラム


 カリキュラムは、以下の6部17単元(①~⑰)で構成されています。


NO 主 題 主な内容 時間
Ⅰ部 管理の基本 多面的な対応が迫られる管理者にとって必要な「基本」や「常に変わらない心構え・姿勢」を研究します。
1 管理の基本的な 考え方 管理とは何かについて共通理解した上で、管理者の立場・役割の理解と、管理者としての基本姿勢 2
2 管理と人間行動 管理を行う上で「人資源」の重要性、困難性からその原点の人間行動の理解を図る 2
3 組織の運営 組織を構成する人の行動を理解し、組織の目的・目標達成のための組織運営の原則 2.7
4 基準に基づく管理 管理の「あるべき姿」として、基準の必要性の理解と効果的な基準の作成 1.5
Ⅱ部 変革への管理 管理者の業務の多くは現状打破のための活動であり、新しい価値の創造の行動です。そのための、管理者自らの積極的行動と、所属員に解決させ効果的に組織目標を達成しなければなりません。
5 問題解決の基本 環境変化への適応の観点から、問題は常に発生、この問題に管理者が如何に対処するか 2
6 仕事の改善の実践 問題解決を「改善」と位置づけ、改善を行うための基本的な考え方やその原理・原則 1.7
Ⅲ部 管理のプロセス 管理者は組織目標を達成するために、組織化し、計画し、指令し、統制し、そして調整を図るという一連のプロセスを的確かつスムーズに展開しなければなりません。
7 計画 プロセスの第1段階が「計画」であり、将来に向けての問題解決として理解。管理者の時間の計画の立て方 2
8 指令 仕事の割当、そしてそれをどう伝えるか、やる気を引き出す指揮と命令の仕方 1.5
9 統制 計画・指令が適正に達成するために必要な「統制」という管理行動その要点と方法 2
10 調整 管理のプロセスのもう一つの側面「調整」 1.7
Ⅳ部 育成と啓発 管理者は組織を構成する所属員の能力を育成、啓発する必要があります。組織目標達成に挑戦するため、所属員の能力を最大限に引き出し、育成することの必要性と方法について研究します
11 育成の考え方 管理と所属員の能力との関連を認識し、育成の進め方の手順と学習を効果的に促すための要点 2.2
12 個人能力の育成 所属員個々の能力育成について、初期育成、OJTの理解とその方法、自己啓発への動機付けのための視点と方法 1.3
Ⅴ部 信頼関係の形成 所属員との信頼関係を形成するために、人は何にひかれて行動するのか、何故人は構えをとるのかなど、所属員を人として捉え、その理解の上に立った管理活動、問題解決の重要性と信頼関係の形成におけるコミュニケーションの確立について研究します。
13 態度と行動の啓発 人の行動に起因する、組織目標の障害となる問題の解決を図る要点と方法 2.2
14 人を巡る問題への対処 人としての行動から発生する問題の解決の手順の理解とその応用 1.7
15 コミュニケーションの確立 コミュニケーションの本質を理解し、管理上不可欠であることの認識を深め、その効果的な方法 1.8
Ⅵ部 よい管理の実現 組織内で効果的にリーダーシップを発揮するため、管理者の適切な行動を「行動の仕方」と「行動内容」の両面から触れ「よい管理の実現」に向け、それを職場でどう活用するかについて研究します。
16 リーダーシップ リーダーシップの本質を捉え、環境変化に対応した目的・目標達成のための、組織の活性化実現 1.8
17 管理の展開 グループ・組織に対する管理のあり方と、その応用を考察。最後に管理者としての能力は何か・・・ 2.4
合  計 33

17の単元は相互に深く関係づけられていますので、第1単元から第17単元まで連続して実施するのが理想ですが、組織が抱えている課題や、解決が急がれるテーマに焦点をあて、自在に組み替えることも、短縮して実施することも可能です。


日本産業訓練協会とは


  1955年(昭和30年)、当時の通産省(現経済産業省)、労働省(現厚生労働省)、日経連(現日本経団連)が中心となって創設された団体です。発足以来一貫してMTP(管理研修プログラム)およびTWI(監督者研修プログラム)を中心に、公開講座の実施や講師派遣などを通じて産業界における人材育成の支援活動を展開し、今日に至っています。常に時代の変化に対応しながら以下の事業を行っています。

  ホームページ:http://www.alpha-net.ne.jp/users2/sankun/tokyo/index.html


参 考


<MTPの主な経緯>

昭和20年 9月 立川基地の米軍関係で働く日本人監督者向けにMTPが導入され

昭和25年10月 通産省主催で第1回MTPインストラクター養成講座を実施

昭和28年 5月 通産省企業局により第1次改訂実施

昭和29年 5月 MTPインストラクター連絡会により第2次改訂実施

昭和30年 7月 通産省、労働省、日経連により日産訓が設立され、MTPの主管が引き継がれる

昭和32年12月 第3次改訂 ~ この間、ほぼ5年毎に改訂を実施 ~

平成 3年 4月 台湾で中国生産力中心を通じてMTPインストラクター養成講座を開始

平成 6年 5月 日経連国際協力センター(NICC)の委託でASEAN諸国対象にMTP研修を開始

平成 9年 6月 第10次改訂実施

平成10年10月 中国本土でMTP研修を開始

平成15年 1月 第11次改訂実施

平成20年12月 第12次改訂実施

叶 暁

上海麗宝商務咨詢有限公司 総経理 (上海在住)

専門分野
労働関係法・企業法・労働仲裁

日本の近畿大学法学部および大阪大学大学院法学研究科卒業後は上海へ戻り、コンサルタント会社の設立に参加共同経営後現在に至る。日系企業の、設立代行から不動産と人材確保および経営相談・指導を含めた各種コンサルティングおよび社員研修を行なっており、日中間ならびに企業・人材の架け橋として努めている。
各社顧問と各種セミナー講師多数。

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