2011年04月12日

MTPとは? 「管理者に対する最も適した訓練」

上海麗宝商務諮詢有限公司 総経理 叶 暁


日本で、管理者教育として最も普及しているプログラムが、MTPといわれるものです。このMTPというのは、Management Training Program の省略で、日本語では「管理研修プログラム」と訳されています。

MTP導入の経緯

第二次世界大戦当時、米軍では軍人に求められない知識や技術は、全て民間人に求めざるを得なかったので、戦争の勃発とともに大量に、しかも相当高い地位まで数多くの民間人が占めました。

その後終戦を迎え、日本に進駐してきた米軍も、各基地で多数の日本人従業員を採用することになって、今度は米軍の民間人が日本人従業員を管理・監督する為、教育を行いました。アメリカ空軍立川基地では、日本人の中からも監督者になる者が増えるにしたがって、日本人監督者にも教えるようになりました。

その時の資料は、監督者訓練(TWI)の内容である“仕事の教え方”“人の扱い方”“改善の仕方”に“管理の5機能”と“科学的管理法”などを総合したものとして完成されたものです。

その後、日本国通産省がこれを譲り受け、内容をさらに管理者向けに修正して「MTP(管理訓練計画-当時の名称)」と呼ぶようになりました。

こうして通産省の手によって普及されてきたMTPは、日本産業教育の発展史上で、これほど大きな足跡をしるしたものはないと言われています。戦後の日本産業の発展に、産業教育が大きく寄与していることは誰しも認めるところですが、MTPはその口火を切ったばかりでなく、その後の歴史の中で、MTPを現代にマッチしたものとするために改訂を重ね、“古くして、今なお新しい”ものとして、大変大きな功績をあげ、日本のみならず世界の産業界から大いに認められております。

現在では、社団法人日本産業訓練協会が通産省から委託され、インストラクター(Instructor=指導員)の養成とこの訓練の普及に努めております。

またMTPやTWIが、その後の日本におけるさまざまな訓練コースを生み出すもととなりました。したがって、各方面で行われているいろいろな管理者教育、新しいと言われる教育・研修コースをみても、MTPに余りにも似ていることに驚かされます。

日本の管理者研修はすべて、MTPを基礎としていると言っても過言ではありません。

MTPもう古い?

MTPという教育プログラムについて、「私も昔受講したことがありますが、もう古くて使えませんよ」と言う人がいます。しかし、もう一歩進めて考えて下さい。例えば、“企業は人なり”という考え方は古いでしょうか。言い古されたことばではありますが、決して古い考え方とはいえないのではないでしょうか。それは、企業経営が“人”の活用を最大の原則としているからなのです。このように、経営や管理であっても原理原則というものは、時を超え、時代をも超えて通用するものなのです。

MTPは、管理者向け基礎教育として、管理の原理原則を中心に訓練しているものです。中でも、人間行動の原理原則を重点的に学びます。したがって、たとえ終戦直後に導入された昔の研修プログラムといっても、決して古いものではありません。しかも、12次に渡って改定・追補がなされ、時代に相応するものとなっています。

MTPの主旨

MTPは、「管理」を一から学習するためのプログラムです。意外に整理されていない「管理」というものの基礎を、一通り学べるようになっています。

組織の諸要素の中でも、特に「人」の側面に焦点を当てつつ、科学的・合理的に組織の目的・目標を達成するために必要な基礎理論を学習するコースです。

受講対象者 これから管理・監督者になる人が、受講のモチベーション上は最も望ましいと考えられますが、既に管理・監督者である人でも、管理業務の整理・見直しに役立ちます。

MTPの改訂と主な理論構成

昭和20年9月 米極東空軍立川基地で米軍関係労働の日本人監督者向けに導入。
昭和24年 日本語版完成。米軍関係施設で実施
昭和25年6月 通産省、MTPを日本の企業内教育への導入を決定
昭和25年10月 通産省主催で第1回MTPインストラクター養成講座を実施
昭和28年5月 MTP第1次改訂(通産省企業局)・日本流への改訂
昭和29年5月 MTP第2次改訂
昭和30年7月 通産省、労働省、日経連により日本産業訓練協会の設立。
MTPも日産訓へ
昭和32年12月 MTP第3次改訂(事例の改訂、IE技法の追加、仕事の遂行基準の追加)
昭和37年1月 MTP第4次改訂(協働理論、動機論、リーダーシップ論など)
昭和40年8月 MTP第5次改訂(部下育成、非公式グループを強化) >昭和46年4月  MTP第6次改訂(XY理論、職務充実、欲求階層説、目標による管理)
昭和50年4月 MTP第7次改訂(カウンセリング、TA)
昭和55年10月 MTP第8次改訂(動態的組織論、環境適応理論、状況適応理論、OJTなど)
平成2年6月 韓国能率協会へのMTP著作権使用権の貸与
平成3年1月 MTP第9次改訂(仕事の自己管理、目標達成機能の考えを強化)
平成3年3月 MTP関連資料の著作権を国際登録
平成3年4月 中国生産力中心(台湾) MTPインストラクター養成実施
平成5年10月 MTP中国語版完成 中国生産力中心(台湾)へMTP著作権資料権を貸与
平成6年1月 MTP英語版完成
平成9年6月 MTP第10次改訂(企業倫理、経営倫理の観点、人間理解に基づく総組織運営)
平成10年10月 中国本土でのMTPインストラクター養成実施
平成11年4月 MTP英語版著作権をNICC(日経連国際協力センター)に貸与
平成15年1月 MTP第11次改訂(組織運営と人間行動の関係、コミュニケーションの強化など)
平成20年12月 MTP第12次改訂(事例の一部見直し、各説明図の追加など)

MTPの中国での沿革と展開

 

1998年MTPを正式に中国企業連合会と協力して中国で開始し、それ以来もう80名ほどのMTPインストラクターを育成しています。そして、MTP訓練を受けた人は一万人を超えていると言われています。

 

2010年には、中国が日本を抜いて世界第2の経済大国になりました。しかし、今日までの労働集約型での経済発展方式を変えなければ、今後の発展はないでしょう。「今の中国は日本の戦後の状況に似ている」と言う人がいます。

なぜなら、今の中国経済は労働集約型から脱皮する必要があり、その過程にあるからだといえます。今こそ、MTPのような管理者研修コースは、中国の経済事情、企業の実態に相応しいともいえます。

 

中国が、「製造大国」から「製造強国」に向かって前進するには「日本」という先生から教わる必要があります。

日本式管理、日本の品質こそ、中国企業には学ぶ必要があります。MTPを受けることによって、一歩前進できるのではないでしょうか。

また、中国にいる大半の日系企業には「日本式経営理念」を織り込むMTP教育プログラムこそ、必要だろうと確信しております。

日本産業訓練協会とは

1955年(昭和30年)、当時の通産省(現、経済産業省)、労働省(現、厚生労働省)、日経連(現、日本経団連)が中心となって創設された団体です。

ホームページ:http://www.alpha-net.ne.jp/users2/sankun/tokyo/index.html

叶 暁

上海麗宝商務咨詢有限公司 総経理 (上海在住)

専門分野
労働関係法・企業法・労働仲裁

日本の近畿大学法学部および大阪大学大学院法学研究科卒業後は上海へ戻り、コンサルタント会社の設立に参加共同経営後現在に至る。日系企業の、設立代行から不動産と人材確保および経営相談・指導を含めた各種コンサルティングおよび社員研修を行なっており、日中間ならびに企業・人材の架け橋として努めている。
各社顧問と各種セミナー講師多数。

この顧問・専門家のブログを見る

メール ホームページ

叶 暁
このHRAホームページの先頭へ