2010年01月19日(火)

レストランの顧客満足度(CS)①

上海誠鋭実業有限公司 総経理 叶 家胤


~3人セットでエビ5匹~


 マーケティング原理から考えると、「顧客は何を欲しがっているか」という重要な問題に応えられなければ、その欲しいもの(サービス)を提供できず、顧客に満足を与えることは不可能です。それには、顧客の立場に立って考えなければなりません。


先日、久しぶりに映画館で映画を見たくなり、お客さんの社長そして提携先の社長と私との3人で仕事の後に映画を見ました。

夜7時半からの上映でしたが、3人とも仕事の関係で夕飯を食べずに行きました。映画が終了したのは10時近く、どこで食事するかを悩んだ結果、遅くまで営業している某大手外資系レストランに決定しました。

そのレストランは、日本ではイタリアン料理宅配を中心に事業展開していますが、上海ではレストランチェーン店の経営をしています。内装にしても、料理の値段にしても、中国の収入水準から考えれば「高級」に位置しているものの毎日列を作るぐらいの人気レストランです。

中国では、洋食に新鮮味をもっている人がまだ多いので、チェーン店は増える一方です。


人気店でも夜10時になると、さすが空いており、すぐテーブルに案内してくれた私たちはメニューを見て、全て美味しそうに感じました。なかなか決められない時、「お勧め3人セット」という文字が目に入りました。まさに我々のために作られたメニューですし、初めて注文するのであれば、店のお勧めが無難だと思い、その「3人セット」に決めました。
スープ、前菜、メイン料理、主食という順で料理が出てきました。料理と主食はなかなか美味しいですが、一つささやかな不満が生じました。

「メイン料理のフライドエビは5匹になっている!」
3人セットという前提で考えれば、3の倍数のはずであると確信している私たちは従業員に確認をしたところ、「5匹に間違いありません」という回答でした。我々は「誰が2匹食べる?」という気まずい問題に直面しました。
他業種同様に、レストランも「CS:顧客満足度」を高めることは最重要課題のはずです。
顧客を満足させるためには、最低限不満を与えてはいけないでしょう。しかし、商品によって、気まずい場面に遭遇させられた私たちは、レストランに対しささやかではありますが、不満を感じてしまいました。
セット料理は一般的にメニューの中から、店の自信料理を集め、単品の合計より若干低い価格設定をされています。店の一番美味しい料理をお手ごろの価格で提供することによって、顧客に最大の満足を与える「セット料理」は最もお勧め商品であるはずなのに、なぜそんな不思議な設定ミスがあったでしょうか。
私はそのレストランの従業員ではないので、具体的な理由は分かりませんが、一般論で分析することができると思い、推測してみます。


マーケティング原理から考えれば、「顧客は何を欲しがっているか」という重要な問題に応えられなければ、その欲しいもの(サービス)を提供することによって最大の満足を与えることは不可能です。そして、その問題に回答するには、顧客の立場に立って考えなければなりません。
そのレストランの商品開発担当者は、「3人セット」を開発した後に、テーブルを囲んで、実際に一品ずつ食べてみたことがあるのでしょうか。単品料理を開発した後の味中心の試食と違い、セット料理に関しては組合せの適切性を中心とする試食をしなければならないと思います。
そうすれば、「3人に5匹のエビ」という問題点は発見されたはずだと思いますが、「試食者」の選択によってはこの問題は発見されない可能性もあります。
日本では一般的に、インスタント食品の開発者は社内他部門の社員、上司に試食させます。なぜなら、新商品開発の当事者が自分で試食しても問題を発見し難く、他人に試食させることによって、第三者の意見を得られ、より客観性を保ちやすいからです。


「3人セット」の商品開発者は、「価格パフォーマンス」、「料理のバランス」などいろいろな要素を考え、最高の商品設計をしたつもりだと思います。「3人にエビ5匹」という問題を自分で試食しても意外に気づかないかもしれません。
社内別部門の3人に、事前説明なしで一般の顧客と同様な状況で「3人セット」を試食させれば、より問題点を発見しやすくなるでしょう。


以上は私の勝手な推測ですが、一つ確信できることは、今度3人でこのレストランへ行く場合、少なくとも「3人セット」は遠慮すると思います。


その意味で、商品設計は成功とはいえず、残念なことです。

(次号に続く)

叶 家胤

上海誠鋭実業有限公司 総経理 (上海在住)

専門分野
企業管理・会計、税務管理

日本の、流通経済大学および産能大学大学院経営情報研究科卒業(MBA取得)後は上海へ戻り、コンサルタント会社を設立し、日系企業の各種経営相談・指導を行っている。2003年より異業種交流会『上海ビジネスフォーラム』を主宰しながら、各種雑誌にコラム掲載および各社顧問と各種セミナー講師多数。

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