2010年02月20日(土)

レストランの顧客満足度(CS)②

上海誠鋭実業有限公司 総経理 叶 家胤


~3人セットでエビ5匹 顧客クレームへの対応~


「3人セットにエビ5匹」という商品設定をしている人気レストランの実話を先月ご紹介しましたが、分析は「料理」という有形商品を重点におきました。しかし、問題は有形商品だけではありません。
レストランのCS(顧客満足度)は主に料理と環境に対する満足により構成されます。前回で料理の設定によって顧客は気まずくなり、満足度が下がったと説明しました。
では、そのレストランの環境に対する満足度はどうでしょうか。
「環境」は、内装・設備などのハード面と従業員サービスのソフト面に分けられます。
そのレストランの内装・照明・什器などに問題を感じず、ハード面から言えば、「快適」でした。しかし、我々の問合せ、クレームへの対応によって、ソフト面の問題を実感させられました。

3人セットに5匹のエビを出されたことにちょっと不満を感じている我々でしたが、提携先の社長が通りかかったホール係りに声をかけました。
「3人セットを頼んだけど、出されたエビは5匹しかないが間違いないの?」
「間違いありません」ホール係りは即答しました。
「ちょっとおかしいと思わないか?」
「本社でそう決めていますから、私もわかりません」と言いながら、そのホール係りはどこかに行ってしまいました。その社長は「どうしようもないな!」と怒り出し、もう一人の社長と私は一所懸命抑えなければならない始末になりました。
そのホール係りの対応に少なくとも2つの問題点があります。

①顧客の話を最後まで聞かなかったこと。
以上の会話を見れば、顧客はさらに何か言いたいのかどなたもわかるはずです。現場にいたホール係りは言葉だけではなく、顧客の表情、話の態度からそれを分かるはずでしたが、その場を急いで離れようとしました。

②顧客に気まずい場面を与えたことについて、どうしてその状況になったかを「分かりません」と言ったことは明らかな責任逃れ発言ですね。


このようなクレーム対応は特別なことではなく、中国でクレームをつけたことのある多くの方は同様な経験があると思います。なぜなら、クレームを受けた従業員の多くは責任逃れをするからです。
「クレーム」という気まずく、危険な場面から逃れようとするのは人間の本能だと思います。したがって、そのホール係りは顧客が「激しく」、「危険な」クレーム発言をする前に急いで離れました。さらに、そのホール係りは事前に顧客のクレームは自分の責任外だと強調すれば、顧客は自分を責めにくくなると思い、「分かりません」と自分から責任を切り離したのでしょう。
「分かりません」という話は半分社内向けでもあると思われます。顧客だけではなく、社内にも「顧客のクレームは自分と関係ない」ことを明確にしなければ成績に影響すると思っているのでしょう。事前に責任を明確にさせることによって、万が一クレームが上司に提出されても、自分が原因でおきた問題ではないと言い逃れるための布石です。

しかし、「自己保身」は顧客と何も関係ありません。顧客にしてみれば、クレームは会社に対するものであり、従業員個人の問題であってもなくても、その会社に所属し、その仕事をしているからこそクレームをつけます。
従業員が過度な「自己保身」をする理由は、会社がクレームを嫌い、受けた場合、組織の原因を分析せずに従業員個人の責任ばかり追求するからだと思われます。簡単に言うとクレームを怖がる会社はむやみに従業員へ責任転嫁しようとしているから、従業員も被害を受けないために「自己保身」したくなるのです。結果はそのホール係りのように、我々顧客のクレームに怠慢で無責任な対応をすることになり、結果的に怒った顧客はその店には行かなくなります。
クレームを嫌い、顧客に対して責任を取りたくない会社・店は、最終的に「顧客を失う」という最も厳しい責任を取らせられるのはなんともいえない皮肉な結果ですね。
クレームは宝です。クレームを付ける客は再度来て(買って)くれる可能性があり、クレーム対応がよければ単なる顧客から宣伝塔の役割まで果たしてくれます。それよりも、改善の材料を提供してくれたのですから感謝すべきですね。


(続く)

叶 家胤

上海誠鋭実業有限公司 総経理 (上海在住)

専門分野
企業管理・会計、税務管理

日本の、流通経済大学および産能大学大学院経営情報研究科卒業(MBA取得)後は上海へ戻り、コンサルタント会社を設立し、日系企業の各種経営相談・指導を行っている。2003年より異業種交流会『上海ビジネスフォーラム』を主宰しながら、各種雑誌にコラム掲載および各社顧問と各種セミナー講師多数。

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