2010年03月26日(金)

レストランの顧客満足度(CS)③

上海誠鋭実業有限公司 総経理 叶 家胤


~3人セットでエビ5匹 クレームは宝の山~


「3人セットにエビ5匹」という商品設定に不満を感じた顧客は、クレームを店員につけたら、その「不満」は「怒り」に変わってしまいました。CS(顧客満足度)を追求するところか、不満を悪化させる一方ですね。

なぜそのような状況になったか・・・・クレーム処理を重視しないから。

なぜクレーム処理を重視しないか・・・・クレームが嫌いだから。

なぜクレームが嫌いか・・・・「クレーム」というものを理解していないから。


一般的に、クレームに対してマイナス的な理解が多いようです。顧客の不満・怒りを聞くのは会社にとっても、従業員にとっても面白いことではないことだと思われ、結局会社は従業員に、従業員は会社或いは他の従業員に責任転嫁しようとするクレーム処理が主流になってしまったわけです。(前号を参照)

「クレーム」は本当にマイナス面しかないのでしょうか。もちろん違います。

確かに一部の「悪い客」はささやかなこと(場合によって事実を捏造)で会社・店舗にクレームをつけ、無理な要求を突きつけます。しかし、それは顧客の主流ではないはずです。

「クレーム」のプラス面が見えない会社・店は、クレームうまく処理をできません。

今回の事件・事例を使って、「クレーム」のプラス面を分析してみます。

①クレームをつける顧客はその会社・店がよくなって欲しい人

3人セットを注文して5匹のエビが出されるまで、そのレストランに最も期待していたのは、その時クレームをつけた社長です。「3人セットに6匹のエビがつけば、このレストランはもっと立派になる」という期待を持ってクレームをつけたことは本人の言葉で分かります。しかし、ずさんな対応をされ、その期待は裏切られました。

一方、私も「3人セットにエビ5匹」ということに疑問を抱いていました。しかし、「言っても仕方がないし、次回そのセットを注文しなければよい」という考えで、クレームをつけませんでした。

このような2人の顧客は店にとって、どちらがイヤな客でしょうか。

店の問題を指摘し、改善のチャンスを与えてくれる顧客より、黙ったままその店、その商品を今後利用しない顧客は店にとって本当に怖いはずですね。そのように考えれば、親切な顧客を怒らせた店の対応は不可解です。

②「クレーム」は「宝の山」

会社・店はできるだけ顧客に満足してもらえるように努力しています。しかし、現実は完全無欠になるのは困難です。しかし、顧客からその欠点について、「クレーム」という形で教えてくれれば、その商品・サービスがより完璧に改善できます。

会社によっては、クレームから新商品のヒントをもらい、商品開発の重要な情報源としてクレーム処理部門を設置するところすらあります。

このような「宝の山」から一所懸命逃げようとしている店の対応を、おかしいと思いませんか。

③「クレーム」は優良顧客を育てる数少ないチャンス

誰でも自分の意見を聞いてくれれば嬉しく感じます。顧客も例外ではありません。店が、自分がつけたクレームに耳を傾けてくれるだけでも、不満は半減するでしょう。もし、自分の意見でその店の改善に繋がれば、その嬉しさは倍増し、その店の固定客になり宣伝塔にまでなってくれます。

もしクレームをつけた社長の「3人セットにエビ6匹」という意見をレストランが取り入れれば、次回社長が3人セットを注文する時、自分の提案だと周りに絶対自慢するでしょう。

自尊心が十分満足された社長が、そのレストランのファンになるのは当然です。


普通のサービスを0点とすれば、クレームがあることはマイナスですね。しかし、その処理をうまくすれば、0点に戻るだけでなく、ブラスになることも十分ありえます。マジックのようなクレーム処理に全く関心がないレストラン経営者はやはり「凡才」です。


「3人セットに5匹のエビ」というささやかなことから、人気レストランを分析しました。このレストランは、商品設計から、顧客対応、クレーム処理までこんなにたくさんの問題点があるのに、なぜ「人気店」なのかと思われる読者もおられるでしょう。

「中国の消費者は、まだまだよいサービスを体験できず、新鮮味のある店であれば、食べてみたいという段階にあるからだ」と私は分析しています。新規開店すれば、必ず列を作るような状態はしばらく続き、そのレストランは「3人セットに5匹のエビ」、そしてクレーム処理のような「ささやかな」ことに気を配る余裕がないのだろうと推察します。

しかし、いずれ新規開店ブームが去り、メニューとサービスで勝負するときが必ず来ます。そのとき、そのレストランが急に変わることができるのかなと、余計な心配をしている昨今です。


いつか、並ぶ列が消えたそのレストランで再度「3人セット」を注文することを楽しみにしているのは、私だけではないでしょう。(完)

叶 家胤

上海誠鋭実業有限公司 総経理 (上海在住)

専門分野
企業管理・会計、税務管理

日本の、流通経済大学および産能大学大学院経営情報研究科卒業(MBA取得)後は上海へ戻り、コンサルタント会社を設立し、日系企業の各種経営相談・指導を行っている。2003年より異業種交流会『上海ビジネスフォーラム』を主宰しながら、各種雑誌にコラム掲載および各社顧問と各種セミナー講師多数。

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