2016年02月18日(木)

悩ましい「企業の社会的責任」

上海誠鋭実業有限公司 総経理 叶 家胤


 「企業の社会的責任」は法律遵守という観点からの考え方ともう一つ健全経営という角度から考える必要があります。

 企業は健全的に経営されなければならないのは当然でしょう。しかし、その「健全的」というのには少なくとも3つの意味があると考えています。

1.顧客満足

 顧客を満足させることによってその企業の存在価値があり、一つの社会的責任を果たします。言い換えれば、顧客にとって存在価値もない企業は存続できるわけがなく、消え去ります。消え去る企業には、当然「企業の社会的責任」もないでしょうね。

 企業は商品或いはサービスを提供することによって顧客満足を達成します。顧客にとって必要な商品・サービスを告知され、適切な価格、チャネルで提供されることは、その企業価値を評価する最も重要な基準です。一方、企業にとって上記「プロダクト、プロモーション、プライス、プレース」という4Pを中心とするマーケティング戦略を有効的にたて、実施することによって顧客満足をさせ、社会貢献にもなります。

 欠陥乗用車を販売し、その欠陥を隠すことによって多くの顧客を危険に曝させている自動車メーカーは「社会的責任」を果しているといえますか。

 過大な宣伝をして、広告と違う商品を提供し、顧客を騙す企業は「社会的責任」を果しているといえますか。


 顧客満足を与えられない企業は、「社会的責任」を述べる資格はない!

2.従業員満足

 従業員を雇用し、その労働の対価に報酬を支払うことによって、従業員は生活できるようになり、社会安定に繋がります。それは企業の雇用による社会貢献です。

 従業員を満足させることは、単に給与を支払うだけではなく、安全・快適な職場環境を作ること、適切な教育訓練チャンスを与えること等によって従業員満足度が高まります。仕事に満足している従業員は生活を通して社会発展に貢献するだけでなく、良い製品を製造し、よいサービスを提供することによって、顧客満足にも繋がります。上記第一点で述べたように、間接的にも「企業の社会的責任」に貢献します。

 安全措置を何も講じないで、従業員を過酷な環境で働かせる多くの炭鉱企業は社会的責任を果しているといえますか。

 恒常的に「農民工」(農村から都市に来た労働力)の給与を滞納している建築関連企業は社会責任を果しているといえますか。


 従業員満足を与えられない企業も、「社会的責任」を述べる資格はない!

3.投資者満足

 企業は、出資者に対して合理的なリターンを与えなければなりません。出資者が、投資リスクを負って出資するのはリターンを期待できるからです。特に上場企業にとって、不特定多数の投資者に出資してもらい、彼らにしっかりとしたリターンをすることはまさに金融市場に負う社会的責任です。

 かつて四川大地震のとき「万科」董事長の王石さんは投資者たちの権利保護を考え過ぎて、義援金を小額にしたために多くの非難を受けましたが、大義名分的「義援金」を出す前にしっかりと投資者の財産保護を考えたのは、決して間違っていないと思います。

 しかし、その後王石さんは臨時株主総会を招集して、義援金を大幅に追加しました。「義援金」と投資者保護という、相反する問題を解決したことにほっとしました。


 広い意味で、融資してくれる銀行や買掛をさせてくれる仕入先も一種の投資者として考えられます。それらの債務返済の滞納によって、相手の不良債権が増加し、場合によっては倒産してしまいます。その結果、相手企業の顧客、従業員、投資者たちを不幸に陥れます。中国政府がよく使用している言葉を借りると、その債務不履行は「金融市場の秩序を乱す」行為であります。その本質はまさに社会的責任感の欠如ですね。


 投資者満足を与えられない企業も、「社会的責任」を述べる資格はない!


 しかし、多くの企業は消費者、従業員、投資者の権利を侵害している中国の現状を無視して、「義援金」などパフォーマンス的な「企業の社会的責任」ばかりに関心を寄せる傾向は、決して真の「企業の社会的責任」の認識を向上させる効果を持たせることはありません。

 本質よりパフォーマンス重視の社会環境は、「企業の社会責任」に対する歪んだ認識の根本的な原因だと考えられます。


 本当に心配!

叶 家胤

上海誠鋭実業有限公司 総経理 (上海在住)

専門分野
企業管理・会計、税務管理

日本の、流通経済大学および産能大学大学院経営情報研究科卒業(MBA取得)後は上海へ戻り、コンサルタント会社を設立し、日系企業の各種経営相談・指導を行っている。2003年より異業種交流会『上海ビジネスフォーラム』を主宰しながら、各種雑誌にコラム掲載および各社顧問と各種セミナー講師多数。

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