順利包装集団 福喜多俊夫
健康に自信のある方でも風邪や飲みすぎによる体調不良は経験されていることでしょう。中国に長期滞在あるいは駐在されている方は皆さん、行きつけのクリニックをお持ちだと思います。私も内科、眼科、歯科は好みの日系クリニックを決めていますが、救急車で運ばれるような急病に襲われることは予想していませんでした。
6月のある日、会社から戻った夕方、突然激しいめまいに襲われ、歩くどころか立つことも出来ず、少し動くと激しい嘔吐で息も絶え絶えとなり、救急車のお世話になりました。この経験から「外国暮らしは、備えよ、常に」であることを痛感しました。私の経験を参考に「備えの心得」をお話します。
1. 何かあったとき助けを依頼できる中国語に堪能な友達や会社関係者を最低3人持つ
自宅アパートから車で30分以内の人がよい。また、アパートのセキュリティの緊急連絡番号を記録しておく。(私の場合は会社のアシスタント、いつもお世話になっている不動産屋の主人、台湾人の友人の3人で、携帯電話の分かりやすいところに記録してある)
2.携帯電話は肌身離さずもっている
私の場合、動けなくなってすぐ不動産屋さんと友人にヘルプの電話をした。2人は10分以内に駆けつけてくれ、すぐ救急車を手配してくれた。なお、中国の救急車を呼ぶのは局番なしの120番です。
3. 救急車の代金として500元はいつも持っていること
救急車は病院に到着と同時に代金を払う必要があるので、お金が必要。私の場合は不動産屋さんが立て替えてくれた。救急車の運賃そのものはタクシー代の3倍程度であるが、車内での酸素吸入とか手当てのすべてに費用がかかり、アパートから病院まで15分程度であったが260元であった。
4. 緊急搬送してもらう病院を普段から決めておくこと
私は全く考えていなかったが、救急車の中で、不動産屋さんと友人、救急車の係員が相談、外国人病棟のある華山医院に決めて運び込んでもらった。
5. 海外旅行傷害保険には入っておくこと
海外旅行傷害保険に入っているとキャッシュレスで治療を受けられる。駐在員の方は会社で保険に入っているので問題ないと思うが、現地採用の方、個人営業の方は入っていないケースも多いと思う。また、日本で健康保険に入っている場合は帰国後手続きすれば3割負担で還付される。また、クレジットカード付帯の保険はキャッシュレスでないので、その場で全額支払いが必要。
6. 救急病棟でも患者がいっぱい
病院に運び込まれたといっても安心は出来ない。救急病棟でも人がいっぱいで、窓口で手続き、先払いが必要。また診察まで廊下で順番待ちをさせられる。(私の場合はここで経験豊かな不動産屋さんが大活躍。一般救急窓口を素通りして、救急隊員に大声で、外国人急患窓口へ直行することを指示、外国人病棟ではVIP待遇で素早く処置をしてくれた)
7.海外旅行傷害保険に入っているか、日本で健康保険に入っている人はVIP病棟がお勧め
中国はとにかく病人が多く、特に華山医院や華東医院など有名病院は上海だけでなく、近隣地域から来る人も多いので、夜まで混み合っている。日本では考えられないことだが、病院であることなどお構い無しに大声で話をし、携帯電話もかけまくっている。廊下で診察待ちしていたら病気が悪化しそうな気がする。
北京、上海、広州、大連などは外国人病棟を備えた大病院が見つけやすいが、地方都市での病院選びは、海外旅行傷害保険会社が24時間のアシストサービスをやっているので、保険証書とアシスト電話のコピーを財布に入れておくことをお勧めする。
8.病院は治療よりもお金が大事
治療をはじめる前に受付で保険証券番号を聞かれる。私はこれまで海外旅行傷害保険に入らず、クリニックにかかるたびに診断書を書いてもらって日本で健保請求をしていたので、VIP病棟でもまず、デポジットの支払いを要求された。友人がとりあえずカードで4000元を支払い、すぐ、CT検査をやってもらった。(幸い脳梗塞の徴候はなく一安心)。なお、CT検査とMRI検査でデポジットは消えてしまい、翌日早速事務所から請求書が廻ってきて、更にデポジットを入れないと治療継続は出来ないと言われ2万元追加した。
9.外国人病棟は英語が通じる。また、保険会社の通訳が朝晩来てくれる
外国人病棟では殆どの医師、看護師が英語を話す。したがって、中国語あるいは英語でコミュニケーションできる人は、それほど不自由は感じない。しかし、日本語を話す医師や看護師は少ないので、中国語や英語に堪能でない人は保険会社の通訳に頼ることになる。私はどうにか英語でコミュニケーション出来たが、華山医院には日本人も少なからず入院しているので、保険会社の通訳が始終出入りしているとのことであった。
10.容態が安定したら、早期に退院して日本に戻り、再診察を受けることがお勧め
私は結局、容態が安定するまで7日間入院し、入院中は医師も看護師も用務員も親切でそれなりに快適な入院生活であったが、2つの理由で、容態が安定したら早期に退院し、日本へ戻って診察を受けることをお勧めする。
ひとつは、入院費用が高いこと。保険でカバーされるといっても、会社によっては日本の健保の3割負担分は自己負担(海外駐在補助を出している会社もある)と規定しているところもあるので負担が大きい。私は7日間の入院で〆て28万8190元(約36万円)支払った。
もうひとつは、中国人の友人ですら中国の医療水準を信頼しておらず、口をそろえてすぐ退院して日本へ戻るように薦めたこと。とにかく点滴と抗生物質投与が好きで、途中でこんなに毎日大量に点滴して大丈夫かと心配になった。また、外国人病棟には専属の医師が常駐しているが、自分の病気の専門家とは限らず、症状に応じて一般病棟から医師が来るので担当がよく代わり、状態をきちんと把握しているのか心配になる。
私の場合は幸い、脳に異常はなく、疲れとストレスから来る(医者がそういっているので真偽は不明)末梢神経障害による平行器官異常(簡単いえばメニエル症候群)ということで大事には至りませんでしたが、皆さん、「そなえよ、つねに」です。
カネカ勤務中は米国、ベルギー、東南アジア(シンガポール、マレーシア、タイ、台湾、フィリピン、中国、香港)の子会社管理、工場指導を担当し、関連子会社に10年ほど出向していたこともあるので、中小企業、特に海外の中小工場経営が得意。
【資格】
◇技術士(経営工学部門)
◇APECエンジニア(工学部門)
【参加団体】
◇大阪能率協会
◇技術士包装物流会
◇(財)海外職業訓練協会(OVTA) 国際アドバイザー