順利包装集団 福喜多俊夫
製造業に限らず、販売、サービス業を経営されている皆様方は、自社の社員がもうすこし「顧客第一」の精神でお客さんの要望に対応してくれれば会社の評価が上がるのに、と歯がゆく思うことはないでしょうか。自社の社員の発想を理解しながらも、もう少し柔軟に段取りを考えてくれたなら、もうすこし“親切さ”があってもいいのではないか、といらいらさせられることも多いと思います。
私も“もう少し・・・”と不満に思っている一人なのですが、スタッフや現場の立場に立って考えてみると理解できることも多々あります。日本本社で「顧客第一」を叩き込まれてきた日本人駐在員と中国式合理主義の中で育ってきた中国人社員のメンタリティの違いが土台にあります。
1.「顧客満足度」を高めることと、「顧客におもねる」こととは違う
「顧客満足度」を高めることは会社にとってとても大事なことです。自社の製品でお客さんが満足してくれる、そしてリピーターになってくれることにより商売が持続します。
しかし、お客さんの中には標準納期を無視して「何とか先に生産して欲しい」とか、突発で少ない数量を今日中に納入して欲しいとか無理を言ってくるところがあります。
中国人営業担当は生産計画担当者や配送担当者に相談しても断られるのが分かっているので原則通りの返事をします。そこでお客さんはしばしば日本人総経理や営業部長に対応を要求してきます。お客さんは日本人総経理に頼めば何とかしてくれると、これまでの実績から無理を承知で要求してくるわけです。
日本人総経理としては何とかお客さんの要求を聞いてあげたいと現場に対応を指示しがちですが、ここは冷静に、「顧客要求の無理さ加減と緊急性」そして「自社の製造計画の現状、配送車の段取り状況」等を判断して、自社のラインに無理がかからないように、かつお客さんも納得するような処置をとらねばなりません。
日本人総経理がいつも特定顧客の無理を聞いて現場に問答無用の指示を出していると、スタッフや現場との信頼関係が崩れてしまいます。
2.「顧客満足」を高めるにはコストがかかる
エルメスやシャネルの製品は高い、時計の中でもROLEXは飛びぬけて高い。これら高価なブランド品にはそのブランド力を守るための種々のコストが含まれているのだと思います。自社の「高い顧客満足度」というブランドを守るためにはコストが必要です。
営業担当者が「顧客満足」を本心から高めたいと思うためには、自社の製品と自分の仕事を誇りに思う気持ちがなければ無理です。そのためには快適な雰囲気の職場と努力が報われる待遇が土台になければ気持ちに余裕が出てきません。
製造スタッフや現場が「顧客満足」を念頭に生産や出荷活動を行うためには、やはり自分達が作っているものに誇りが持てなくては無理です。また「次工程はお客様」という品質管理の思想が現場に行き渡っていなければ社内での「顧客満足」ですら実現しません。ここでも快適な雰囲気の職場と日々の努力が報われる待遇という土台が必要です。 このような土台があってはじめて「顧客満足」を高めようという教育も可能になるのだと思います。
3.「顧客満足」は経営者の姿勢から
中国でもサービスという概念がかなり浸透してきましたが、製造業ではスタッフも現場も、これまでサービスという概念の教育を受けてこなかった人達が大部分だと思います。また、基本的に自分中心、自分の都合を優先する社会的風土があり、考え方が極めて合理的ですから「他人に配慮する」気風は薄いのが現実です。
このような雰囲気の中で「顧客満足」を高めるためには、「顧客満足」は大事ですよ、とお題目を唱えるだけでは実現しません。
経営者が「顧客満足」の意味をことあるごとに行動で示し、「顧客満足」を実践することが社員の「メリット」になりこの概念を持つことが広い意味での「キャリアアップ」に繋がることを納得してもらわねばなりません。
カネカ勤務中は米国、ベルギー、東南アジア(シンガポール、マレーシア、タイ、台湾、フィリピン、中国、香港)の子会社管理、工場指導を担当し、関連子会社に10年ほど出向していたこともあるので、中小企業、特に海外の中小工場経営が得意。
【資格】
◇技術士(経営工学部門)
◇APECエンジニア(工学部門)
【参加団体】
◇大阪能率協会
◇技術士包装物流会
◇(財)海外職業訓練協会(OVTA) 国際アドバイザー