順利包装集団 福喜多俊夫
中国で現場指導をしたとき、いろいろ条件を指示してもなかなか指示した通りやってくれない。そんな経験をされた方も多いことでしょう。
そうです、中国人は納得しないと動きません。
何をやらねばならないか、何が大事かということを腹の底から納得しないとその場かぎりになってしまいます。
コーチになる
5Sが定着しないのも現場のリーダーが本気でそれをやる気になっていないからです。 作業員が同じ失敗を繰り返すのも、営業マンに進歩がないのも同じです。
リーダーとして赴任した日本人は監督者、指示者ではなく、コーチに徹する姿勢が必要です。指示するだけ、答えをすぐに出してやるだけでなく、なぜそうするのか、なぜそうなるのかということを辛抱強く教える必要があります。
特にスタッフには「覚えてやるな、判ってやれ」ということを教えてください。
中国では、指示するだけのリーダーは「答えを出さないリーダー」として部下の信頼を失います。
すぐ答えを出すリーダーのもとでは部下は考えなくなり、育ちません。
一流に触れる
中国で工場を運営するとき頭を痛めるのが、「一流のレベル」という概念を教えるときです。中国人はまだまだ自由に旅行をする機会が少ないので、留学帰りの人や大企業で研修制度が整っているところに勤務している人以外は一流の工場、一流の設備に触れるチャンスが少なく、一流をイメージすることが苦手です。
工場の環境も製品のレベルも自分の判断基準で見ますから、これで十分ということになってしまいがちです。
「百聞は一見にしかず」、自分の目で見、経験すれば一流が理解できます。日系顧客の高い品質要求にも答えられるようになります。取引先や友人の会社で「一流の管理レベル」で操業しているところを是非見学させてもらうようにしましょう。
この場合、業種や操業形態が極端に違うと、「別世界の会社」と見てしまい学ぶ姿勢が無くなってしまいます。 その場合は、5Sの表示の仕方や、倉庫管理、前段取りなど自社と関連がありそうな部分を興味が持てるように説明するのがコーチとしての仕事です。
もうひとつ大事なことは、コーチであるあなたが「一流に触れる」努力を常にしており、「難しいことを、レベルを落とさず、やさしいことばで説明する」態度が大切です。
これは意外に難しいことです。
でも、有能なスタッフはこの姿勢をとてもよく見ています。
一事が万事
新しい工場を建て、従業員を雇いました。従業員の大半が自転車か電動自転車で通勤です。
さて、駐輪場に自転車を並べて入れる、簡単なようですが習慣付けるのに数ヶ月はかかります。構内にゴミを捨てない、これはもう少しかかります。
このような細かいことを従業員の中に入り込んで、あたりまえになるまで毎日言い続けるのがコーチの役割です。毎日飽きずに、諦めずに言っているうちに整理された状態が普通になり、工場長は機器のメンテに意欲的になり、QC課長は記録の徹底にうるさくなってきます。
工場は小さいことの繰り返しがとても大事です。
カネカ勤務中は米国、ベルギー、東南アジア(シンガポール、マレーシア、タイ、台湾、フィリピン、中国、香港)の子会社管理、工場指導を担当し、関連子会社に10年ほど出向していたこともあるので、中小企業、特に海外の中小工場経営が得意。
【資格】
◇技術士(経営工学部門)
◇APECエンジニア(工学部門)
【参加団体】
◇大阪能率協会
◇技術士包装物流会
◇(財)海外職業訓練協会(OVTA) 国際アドバイザー