2012年10月29日(月)

“中国で働く” ⑱ 中国語を使える日本人社員の重要性

順利包装集団 福喜多俊夫

 海外に進出する企業は進出先で現地社員を活用することはとても大事です。また、日本でも国際化を目指して外国人社員を採用する企業が増えています。

 中国に進出した企業は、自社で働く中国人の能力が即ち会社の実力になりますから、優秀な社員の採用、また、採用した社員により力を発揮してもらうための諸施策に知恵を絞ることになります。しかし、経営者として意を注がなければならないことは、自社で自在に中国語を操れる日本人社員を育てることです。

1.通訳経由でも仕事は出来る。しかし、核心に触れられるか?

 私は2002年に中国に来るまでの10年以上の期間、1年の半分をアジア諸国で仕事をしてきました。その時の主要言語は英語で、仕事先の幹部社員の殆どが英語を理解したので実務上はあまり困ることはありませんでした。海外で仕事をする上での英語の重要性、有用性についての考えは今でも変わりません。中国でも大学卒業生はかなりの程度で英語を理解します。

 しかし、中国で工場を経営したり、営業活動を行う場合の主要言語は中国語です。英語だけでは仕事になりません。商社の駐在員は殆どの場合、中国語を習得して赴任していますが、メーカーの場合はそのような教育システムがないところが多く、赴任した技術者や幹部社員は日本語の達者な現地社員の助けをかりることになります。私も中国で仕事をはじめて10年間、アシスタントの助けをかりてやってきました。この間、多少の不便はありましたが、実務上は英語、通訳経由しての中国語でもあまり問題はありませんでした。

 私はある程度簡体字の中国文が読めるので、業界紙や第一財経日報などから中国の経済状況をフォロー出来ていると思っていました。また、日本語や英語を流暢に話す中国人の友人との情報交換も頻繁にしていました。 しかし、最近になって、実務家としてあるいは経営者として、中国の現状と将来を知る上でこれでは不十分なのではないか、と強い疑念を持つようになりました。 中国の現状を知り、将来を予測し、自社の経営方針を定めるためには自分で生の情報を収集する能力が必要だと考えるようになりました。

2.自社で中国語を自在に操れる社員を持つ意味

 自社の社員に中国語を教育する、あるいは中国語が使える日本人社員を採用するより、日本語が達者で優秀な中国人社員を採用する方が遥かに楽です。自社の国際化、現地会社の幹部社員の現地化という観点からも優秀な中国人を採用して、重要なポジションを任せていくことに異論はありません。問題はその優秀な社員と対等に、中国に精通し、その中国人の論理と発想の出所を理解して議論できる日本人社員が自社に存在しているかということです。

 中国人社員からの情報や日本メディアからの情報だけをソースとして判断するのではなく、自分で中国語を自在に操って、従業員の不満の把握といった日常の業務運営から、中国語サイトにアクセスして市井の人々の声を聞き、人民日報や新華社といった官製メディアの情報から、また、官製メディアに対抗心をもつ香港系メディアを日常的にフォローし、中国の複雑な政治情勢に精通する社員を自社内にもつことは中国で会社を経営する上で不可欠なことです。

3.社内に中国専門家を育てよう

 忙しい本社のトップは外国語を習得している暇はないかもしれません。しかし、日本人の中国専門家を社内で育てるシステムを作ることは経営トップの仕事です。これからの現地会社の日本人総経理は少なくとも中国語の新聞が読め、社員の中国語が聞き取れることが必須です。

 これは大企業だけでなく、中小企業でも同じです。中国に出てきている以上、自社の行く末を左右することだと考え、若い人に自由に言葉を操る「中国の専門家」になる必要性を説き、チャンスを与えてあげて欲しいものです。また、駐在員の方は「中国の専門家」になる面白さに目覚めて欲しいと思います。

 中国での会社経営を成功させるためには総経理をも任せることが出来る有能な中国人社員と中国に精通し、中国語を自在に操れる日本人幹部とのコラボレーションが必須です。

福喜多 俊夫

福喜多 俊夫

順利包装集団(総公司:香港)総裁
(上海在住)

専門分野

海外子会社管理(経営管理・工場経営・品質保証)、目標管理、包装・物流情報

カネカ勤務中は米国、ベルギー、東南アジア(シンガポール、マレーシア、タイ、台湾、フィリピン、中国、香港)の子会社管理、工場指導を担当し、関連子会社に10年ほど出向していたこともあるので、中小企業、特に海外の中小工場経営が得意。

【資格】
◇技術士(経営工学部門)
◇APECエンジニア(工学部門)

【参加団体】
◇大阪能率協会
◇技術士包装物流会
◇(財)海外職業訓練協会(OVTA) 国際アドバイザー

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