順利包装集団 福喜多俊夫
松井今朝子さんが日経新聞のコラム「馬が教えること」(2012年4月15日)の中で、「サラブレッドはもともと速く走ることを目的に作られた品種なので、アマチュアの乗り手が耐えられるようなスピードで走るのはむしろ難しい。サラブレッドがゆっくり走れるようになれるのも才能」という話を紹介していました。
私はこれまでいくつかの工場を指導していく中で、「中国人社員は納得しないと動かない」ということを何度も経験させられ、納得させることに四苦八苦してきました。しかし、考えてみれば、これは中国人社員の立派な才能というか能力のひとつではないかと、最近考えるようになりました。
1.「納得しなければ動かない」ということ
中国で技術指導や工程改善に取り組んでおられる技術者の方は、自社の社員がなかなか教えた通りに動いてくれないけれど、一度納得すると、その動きは見違えるばかりに速くなるということを経験しているのではないでしょうか。
私はこれまで、ハウツーとして中国人社員が納得して動き出す方法を考えてきましたが、最近、「中国人社員は私が日頃教えている“覚えてやるな、判ってやれ”ということを、無意識のうちに実行しているのではないか」と気付かされました。彼らはただ言われたことを覚えてやるのではなく、自分で判ってやろうとしているのです。これは優れた素質です。自分が判らない、納得できないことはやらない。判らないならば聞けばいいではないか、というのはこちらの勝手な言い分で、彼らにとってはメンツ上、判らないとはいいたくないだけ。考えてみれば意思疎通がうまく行っていなかっただけのことなのです。
このことに気付けば、優れた素質をもつ彼らに「納得して動いてもらう」ことは簡単です。我々の側に辛抱が足りなかっただけで、理屈を丁寧に説明し、彼らの理解を彼らの言葉で説明してもらって理解度を確認するというプロセスを踏めばいいのです。
2.才能の現れ方は多様
以前勤めていた会社に自閉症の社員がいました。数少ない人にしか心を開かず、30人足らずの小さい事務所でしたが、朝夕の挨拶どころか廊下で出会っても会釈ひとつしません。初めは奇異な感じで見ていましたが、その計算能力の高さと正確さ、経理規則の精通度と遵守能力の高さを知るにいたって、彼を経理社員として採用した人事部長の「人の才能を見抜く目」の確かさに感心しました。才能の現れ方は多様だと改めて思い出しました。
皆様の会社にもいろいろな特性をもった社員がいることでしょう。一見能力が低そうに見える社員でも、その社員を見る視点を変えれば、その人独特の才能が見えてくるものです。中国も2008年から実質、終身雇用制になり簡単には解雇できなくなりました。自社の社員の能力を最大限に発揮してもらうようにするのは幹部社員の重要な仕事です。
ただ、組織を意図的に乱す社員に対する毅然とした態度はいついかなる場合にも忘れてはならない社長(総経理)の役割です。
カネカ勤務中は米国、ベルギー、東南アジア(シンガポール、マレーシア、タイ、台湾、フィリピン、中国、香港)の子会社管理、工場指導を担当し、関連子会社に10年ほど出向していたこともあるので、中小企業、特に海外の中小工場経営が得意。
【資格】
◇技術士(経営工学部門)
◇APECエンジニア(工学部門)
【参加団体】
◇大阪能率協会
◇技術士包装物流会
◇(財)海外職業訓練協会(OVTA) 国際アドバイザー