順利包装集団 福喜多俊夫
「会議は踊る、されど進まず」は、ナポレオン失脚後のヨーロッパの秩序再建と領土分割を目的として1814年から翌年にかけて開催されたウイーン会議の舞台裏で、参加国の元首や大使たちが駆け引きに終始して会議が進まないことをシャルム・ジョゼフ・ド・リーニュ侯が皮肉を込めていった言葉ですが、中国での会議もしばしば「会議は踊る、されど進まず」の状態になります。
会議の主題からはずれて自分の言いたいことを言う
会社の経営会議、営業会議、品質会議、どの会議でも短時間で核心をついた議論をするには一番権力のある人間がリーダーシップを発揮し会議を誘導しなければ、議論はどんどん拡散し収拾がつかなくなってしまいます。中国人は話好きで、当初は議題に沿って話しているのですが、話はどんどん自分の興味がある方へずれて行き、自分の思いを全部言ってしまわないと話が終わりません。次の人は本題と関係なく、前者の話を継いで自分の考えを述べるので益々本題から離れて行きます。
皆様の会社では会議言語を中国語にしているところも多いと思いますが、日本人が中国語に堪能でないと、的確に言葉を挟んで会議を本題に戻す作業が遅れるので、核心をついた会議を短時間で行うのが困難になります。
我社も日本人は私ひとりなので、会議は勿論中国語です。アシスタントを横において会議を進めるわけですが、アシスタントは自分が進行係を務めるのを嫌がるので、毎回、会議をまっすぐ進めるのにかなり疲れます。
定例会議は事前にレポートを準備することをルール化(1枚ベスト)
通訳を介して日本語あるいは中国語で会議を行う会社も多いことと思います。この会議も結構うまく進めるには苦労します。通訳が優秀すぎると、自分が主役になってしまい肝心の日本人がおいてけぼりにされてしまいます。一方、勘が悪い通訳では話が進みません。
私は経営会議や営業会議のような定例会議にはレポート作成を義務付けています。レポートはA4で1枚が原則です。財務レポートや営業の与信管理は別紙にしています。
会議では担当課長から概況を報告してもらったあとは、私からの質問を中心に進めます。
これまで会議で欲求不満を残しておられる方は是非、質問中心に切り替えてください。 「この会議は私が必要としている会議だ」という姿勢をはっきり示すことが大切です。
突発会議は目的を明確に、参加者を厳選
一方、品質問題やクレームが発生した場合の会議は、営業、製造、品質保証、技術部門の責任者が必ず出席するようにしなければなりません。担当者間の会議では、そこで出た対策を自部門に持って帰った場合、上司を納得させられず実行に移されないことがしばしば起こります。中国は縦社会で総経理に権限が集中していますが、末端の作業員は「誰が自分の成績を決めているか」で指示を受ける相手を決めています。したがって、製造部門が絡む会議では、総経理、現場長(縦の指揮系統)が出席していない会議は無力です。
いくら激論をかわしても「会議は踊る」だけで、解決策は実行に移されません。
中国式会議はブレーンストーミングには最適
拡散型の中国式会議は、見方を変えればブレーンストーミングに最適です。重要な案件がなく、会社の運営や各セクションのマンネリ化を打破したいときは、総経理が適当な話題を出して、話の赴くままに議論してもらうと、思わぬアイディアが出てきます。総経理は黙って聞いていて、「オッ これは面白い考えだ」と思ったら、そこで一言挟んで話を誘導すれば、更に話は広がっていきます。中国人は思いつきでいろいろなことを言いますから、それに具体性があるかどうか考えるのは総経理の役割です。弊社の場合、ここから出てきた話を具体化して失敗例がふたつ、成功例がひとつ、進行中がひとつです。
カネカ勤務中は米国、ベルギー、東南アジア(シンガポール、マレーシア、タイ、台湾、フィリピン、中国、香港)の子会社管理、工場指導を担当し、関連子会社に10年ほど出向していたこともあるので、中小企業、特に海外の中小工場経営が得意。
【資格】
◇技術士(経営工学部門)
◇APECエンジニア(工学部門)
【参加団体】
◇大阪能率協会
◇技術士包装物流会
◇(財)海外職業訓練協会(OVTA) 国際アドバイザー