2014年06月16日(月)

“中国で働く” 26 「改善提案と“マイタスク運動”」

順利包装集団 福喜多俊夫

 中国ではボトムアップによる工程改善や日常業務の生産性向上提案などは殆ど期待できません。また、経理や人事、営業サポートの担当者が突然退社し実務手法が引き継がれず大困り、という経験は皆さんお持ちのことと思います。

 このような状況を改善する方法として“改善提案制度”“マイタスク運動”が役に立ちます。これらは“目標管理制度”の1バージョンとしても使えますが、製造現場(倉庫、物流部門も含めた広義の意味で)のモチベーションアップ、下からの改善提案として独立して運用することが可能です。また、事務職、ことにルーチン業務をやっているメンバーの“仕事の見える化”のために“マイタスク運動”が役立ちます。

1.目標管理と改善提案

 技術職の目標管理はテーマが職場目標と直結し、成果が目に見える形で現れやすいの で、目標設定や評価、担当者のモチベーションの維持も比較的容易です。また、営業職は売上目標を定め、顧客や潜在マーケットへの攻め方をブレークダウンすることにより目標が設定できます。

 しかし、事務職、ことにルーチン業務をやっているメンバーの目標設定は難しいものです。 この場合、事務職の目標管理は改善活動とリンクさせて、日常業務の改善から取り組めば入りやすいです。取掛かりのひとつの手段が“マイタスク運動”です。“マイタスク運動”は日本HR協会が提唱しているもので、マイタスク(自分の仕事)の手順書を作ることです。

 製造現場の目標管理は改善提案と完全にリンクさせることが出来ます。

2.“マイタスク運動”

 “マイタスク運動”はマイタスク(自分の仕事)の手順書を作ることで、差し替えが可能なバインダー形式のノートに「仕事の種類」毎に「手順」を記入してゆくものです。 この作成過程で改善案を出して行きます。事務の仕事は毎日同じ仕事をしているように見えますが、“マイタスク”ノートを作成すると、ひとりの事務員が結構たくさんの仕事をしており、それぞれにノウハウがあることがよくわかります。 一度“マイタスク”ノートを作成すると、ベテラン社員が辞めたとき大いに助かります。また、会社の業務はどんどん変化しますから、毎年、“マイタスク見直し運動”をやって常に改善に取り組むことで社内が活性化されます。

 中国で“マイタスク運動”を成功させるコツは、一回目の“マイタスク”ノートが完成した時点でお祝いの食事会を開いて、100元でもいいから改善提案報奨として「紅袋」を配ることです。 また、ボーナスにも改善成果を反映してモチベーション維持に努めます。

3.現場の改善提案活動

 改善提案活動は現場から作業改善案、生産性向上提案があがってくるのを期待して行うところに主目的がありますが、現場だけのものに限定することは改善に対する全社的な盛り上がりを阻害してしまうので、改善提案制度は全社の運動として行う必要があります。 前項の“マイタスク運動”は事務部門の改善提案に相当します。 改善提案のレベルは低から高までありますが、どんな小さな改善提案も、認めて、誉めることがドンドン出てくる秘訣です。

 改善提案で社内を活性化し、改善提案がどんどん出てくるようにするために、管理者がやらねばならないことは「生産性upとコストダウンの数字が目に見えるようにすること」です。成果を「見える化」することによって、提案者は自分の提案が役立ったことを実感できます。この参加意識、貢献意識、そして、それに対する褒賞が提案者のモラルアップの源泉です。  改善提案がある程度コンスタントに出てくるようになれば、改善提案の質を向上させる手を打ちます。このためには作業員が自分の受け持ち工程の前後を知ること、お客さんの不満、要求を知ることが不可欠です。営業担当が聞いてくる苦情、要望を積極的に社内に広報することが必要です。

 また、改善提案がマンネリ化し件数が減ってきた場合は、社内に刺激を与えるために“すっきり運動”を全社的に行うことをお勧めします。“すっきり運動”により社内のムダが“見える化“され、改善の機運を盛り上げる手助けをします。

改善提案のレベル

 どんなによい方法でも長くやっているとマンネリ化します。目標管理も改善提案も数年実施すればかならずマンネリ化しますから、そこで一度総括をして終了し、新しい装いでシステムを再スタートすることが必要でしょう。

福喜多 俊夫

福喜多 俊夫

順利包装集団(総公司:香港)総裁
(上海在住)

専門分野

海外子会社管理(経営管理・工場経営・品質保証)、目標管理、包装・物流情報

カネカ勤務中は米国、ベルギー、東南アジア(シンガポール、マレーシア、タイ、台湾、フィリピン、中国、香港)の子会社管理、工場指導を担当し、関連子会社に10年ほど出向していたこともあるので、中小企業、特に海外の中小工場経営が得意。

【資格】
◇技術士(経営工学部門)
◇APECエンジニア(工学部門)

【参加団体】
◇大阪能率協会
◇技術士包装物流会
◇(財)海外職業訓練協会(OVTA) 国際アドバイザー

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