順利包装集団 福喜多俊夫
中国の知識人なら大半の人が「厚黒学(ホウヘイシュエ)」を知っています。これは清朝末期の四川省の思想家、李宗吾という人が過去の中国の皇帝や征服者の行動を分析して編み出した一種の処世術というか「成功の哲学」で、成功するには「面の皮はあくまで厚く、腹はあくまで黒くなければならない」と説いたものです。中国でビジネスをする人はこの「厚黒学」を知っておくと大いに役に立ちます。
厚黒学とは?
現代の中国人がこの「厚黒学」を信じているかどうか判りませんが、時々交渉の席で「この人は厚黒学を勉強したのではないか」と思われる人に出会います。厚黒学は現在でも復刻版(現代中国文)が書店に並んでおり、厚黒学のビジネスへの応用とか派生本が数多く出版されています。
日本でも葉室早生訳「厚黒学」が1978年に五月書房から、尾鷲卓彦訳「厚黒学―厚かましく腹黒く生きよ」が1998年に徳間書店から出版されていますが、いずれも絶版になっています。しかし、アマゾンで中古本が手に入ります。私は復刻本を深圳空港の書店で、尾鷲卓彦氏の訳本をアマゾンで入手しました。2009年には黄文雄著「厚黒学―腹黒くずぶとく生きよ」が心交社から出版されています。
李宗吾の「厚黒学」は荀子の「性悪説」を論拠にしており、尾鷲卓彦訳によれば、「いにしえの英雄豪傑にはかならずひそかに伝授されてきた成功の秘訣があるはずだ」と追い求めること数年、偶然にも三国時代の数人の人物に思いいたった時、「そうか、わかったぞ。昔の英雄豪傑は、ただ面の皮が厚く、心が腹黒いだけなのだ!」と悟り、「厚黒学」を編み出した、と記されています。
厚黒学は難しい
「厚黒学」は表面的に読めば、多くの歴史上の人物の行動例を示して、「厚黒であれば成功し、不厚不黒の者は失敗する」と唱えているわけですが、当時の中国人にも賛否両論があり、「世直しの思想である」と称える人と、「危害を与える学問」として批判する両派があったようです。
たしかに訳本を読んでも(中国語の復刻本は更に難解)、表面的に読めば実に単純ですが、「厚黒学」は自修能力が大事だとか、李宗吾自身が、「わたしは、ひとつのルールを定めている、厚黒を用いて一個の私利をはかるのは、最も卑劣な行為であり、厚黒を用いて衆人の公利をはかるのは、至高無上の道徳である」というのを読むともうすこし深読みができます。
中国でビジネスをするために「厚黒学」は知っておいたほうがいい
「厚黒学」は清末の1912年に発明され、1936年まで書き連ねられたものなので、その時代背景を知っておく必要はありますが、現在でも復刻本が続々出版されており、中国のビジネスマンの中では理解の程度は別にして、ポピュラーなものだと思います。 私の知識は鷲尾卓彦訳から得たものですが、現代中国を理解するためにもいろいろ役に立ちます。
また、「厚黒学」で武装した中国人ビジネスマンもたくさんいるでしょうから、対抗上、「厚黒学」を知っておくに越したことはありません。
カネカ勤務中は米国、ベルギー、東南アジア(シンガポール、マレーシア、タイ、台湾、フィリピン、中国、香港)の子会社管理、工場指導を担当し、関連子会社に10年ほど出向していたこともあるので、中小企業、特に海外の中小工場経営が得意。
【資格】
◇技術士(経営工学部門)
◇APECエンジニア(工学部門)
【参加団体】
◇大阪能率協会
◇技術士包装物流会
◇(財)海外職業訓練協会(OVTA) 国際アドバイザー