順利包装集団 福喜多俊夫
これまで諸外国で仕事をしてきた経験から中国は比較的安全な国だと思います。 しかし、スリ、かっぱらいはどこの国にもいます。中国も例外ではありません。特に貧富の差の大きい中国では日本人は金持ちで騙しやすいと思われています。
また、中国特有の国情からくる危険もあります。中国で仕事をする人は安全面と健康面から小さな危機管理を心がけてください。
安全面からの危機管理
中国ではすべてにわたって自分の身は自分で守るという姿勢が大事です。
横断歩道が青信号でも車は一旦停車してくれません。身の回りには小さな危険がいっぱいあります。
1)交通安全
- 車は横断歩道で一旦停車しません。右折車、一方通行道路の左折車に要注意。自転車は100%ライトをつけていないから夜道の自転車に注意。電動自転車は音がしないので歩道でも後ろに注意。
- 慣れると赤信号でも渡ってしまう。上海は歩行者も罰金をとられるから信号は守ろう
2)スリ
- 観光地、繁華街には必ずスリがいるから要注意。上海では南京東路が一番危ない。ナップサックは前に、ショルダーバックは斜めにかけてバックが前に来るようにかける。私の友人はナップサックを切られて財布を抜かれました。
- デパートやショッピングセンターでは登りのエスカレーターが危ない。誰かがエスカレーターで追い越したら要注意。一番上で物を落としたふりをして後ずさりし、後ろにいる仲間とターゲットを挟み撃ち、後ろの仲間がポケットやバックから財布を抜く。これは私がやられました。
3)置き引き
- これはホテル、レストラン、喫茶店など一流店、二流店にかかわらずいたるところにいます。私のアシスタントはKFCで椅子にかけていたバッグを取られました。用心しているつもりで背中と背もたれの間で押さえている人がいますが、食事に夢中になると注意がおろそかになるから要注意です
4)かっぱらい
- 中国の二大休日(旧正月、国慶節)の前が一番あぶない。この時期の前一週間くらいは繁華街では特に注意が必要です
5)姑息な詐欺
- ホテルのロビーや美術館の前で流暢な日本語で話しかけられたら、何かあるのではないかと要注意。
政府から日本へ派遣される画学生のふりをして安物の切り絵を自分の作品と偽って日本への渡航費用をねだる。
先生と称する老人を連れている場合もあります。 話が実にうまいので私も思わず50元渡してしまいました。 - 繁華街で日本語または英語で呼び止められ、お金を落としたとか、今日は朝から何も食べていないといってお金をねだる。これもいろいろなパターンがあり、紳士然とした中年のカップルから若い女性の二人連れまで私はいろいろ経験した。これは見え見えなので引っかかることは少ないが、もう1人スリ係りがいる場合があるから注意してください。
6)道路の物売り
- これは値段の交渉が難しい。上海人に聞くと大体仕入れ値の5倍でまずふっかけ、半分に値切られても150%の利益、 上海人の値切り上手にかかって6割値切られても100%の利益。仕入れ値の倍以下ではまず売らないそうです。 日本人は半分まで値切れば大満足なのでいいお客さんらしいです。
7)アパートのガス
- ガス湯沸かし器が室内にあるアパートは要注意。中国の都市ガスは無臭か臭いが薄いので漏れていても気がつかないことが多いです。 駐在員が何人も犠牲になっています。我社の日本人社員も意識朦朧となったところを発見され、危ういところで助かりました。
8)暴力バー
- 上海領事館から時々注意のメールが入りますが、ホテルの周辺や繁華街で日本語または英語で誘われてバーやクラブについていくのは危険です。ビール1~2本で数千元を要求されるそうです。出張者よりも駐在2年目くらいで少し慣れた人が引っかかっているようで、外国ではいくら慣れても冒険は絶対にしないことです。
9)ハニートラップ
- 数年前、新聞紙上で上海を舞台にした自衛官の機密漏洩事件が報じられましたが (その前に領事館員の事件もあった)、駐在員がクラブの女性に引っかかる事件も多数口コミで流布されています。
10) 手品タクシー
- やはり数年前、タクシーで100元札を偽札にすり替えられたことがありました。深夜やっと拾ったタクシーで、交通カードで支払おうとしたら故障しているので今は使えないと言いました。しかたなく100元札で支払おうと渡すとパッと触って「これは偽札だから他の紙幣で払え」とのことです。渡した紙幣は次から次に「これも偽札だ」とすり替えられたのです。その手口はまさに手品でお見事です。念のため領収書をもらい弁護士に調べてもらいましたが、それも領収書も会社名も偽のものでした。カードを使えないタクシーには気をつけましょう。
健康面の危機管理
中国には日本では絶滅した狂犬病や風土病がまだいろいろ残っています。
1) 病気
- 一番怖いのが肝炎、地方へ旅行する人は狂犬病にも要注意です。長期出張者や駐在員は肝炎の予防注射をすることをお勧めします。
- 大きな都市には外国人向けの病院やクリニックがあるので行きつけの病院を決めておくと便利です。ただし、外国人料金なので1回の受診で1000元近くかかります。 駐在員は会社が海外旅行傷害保険をかけてくれますが、現地採用者や出張者は保険が無いので自己負担しなければなりません。 病院は前金制なので緊急入院等に備えてキャッシュレスの海外旅行傷害保険に加入しておくことが必須です。(出張者の場合、日本の健康保険が適用されますから帰国後申請出来ますが、入院などでは多額の出費になりますから海外医療・障害保険に加入しておくことをお勧めします)
2)ストレス
- 2005年以降、中国在住の日本人の数は米国在住を抜いて世界一となりましたが、自殺者も米国在住者を抜いてトップとなりました。中国駐在員は激務と娯楽の少なさでストレスが多いです。 家族連れで赴任している人はそれなりに大変ですが、家族で旅行するとか家庭がストレス発散の場となりますが単身赴任者はゴルフ、カラオケ、マッサージ位しか発散の場所がなくストレスが溜まります。 特に中小企業で日本人1名の単身赴任者は交流の場が少なく余計大変です。 日本語情報誌にはいろいろなサークル活動が紹介されているので気楽に体験し、気に入ったサークルがあれば参加することをお勧めします。
- ストレスに関してもうひとつ、「中国の国内線フライトは遅れるのが常識」というのを付け加えたい。 私は上海-深圳を月に数回往復していますが、定刻に飛んだことは数えるほどしかない。(搭乗してから飛び立つまでが長い、食事が先に出ることもあります) 30分の遅れならラッキー、1~2時間であれば普通、3時間以上でもじっと我慢。 米国にいたころは「食事とトイレは出来るときに済ます」を鉄則としていましたが、ここ中国では退屈凌ぎの本を携行することが欠かせません。 最近は長時間の遅れに備えて1冊を読みきった時の予備として2冊携行することにしています。
上海日本領事館への在留届提出
6カ月以上上海に滞在する人は上海日本領事館へ在留届を提出する必要があります。
在留届は日本に住所をそのまま残している長期出張者でも受け付けてもらえますので、ある程度長期滞在が予想される方は是非届けるようにしてください。 緊急通報や重要なお知らせをメールで知らせてくれます。
在留届およびメールマガジンの申し込みは、下記の上海領事館HPよりどうぞ。
カネカ勤務中は米国、ベルギー、東南アジア(シンガポール、マレーシア、タイ、台湾、フィリピン、中国、香港)の子会社管理、工場指導を担当し、関連子会社に10年ほど出向していたこともあるので、中小企業、特に海外の中小工場経営が得意。
【資格】
◇技術士(経営工学部門)
◇APECエンジニア(工学部門)
【参加団体】
◇大阪能率協会
◇技術士包装物流会
◇(財)海外職業訓練協会(OVTA) 国際アドバイザー