福岡労務経営事務所 代表 福岡 英一
東北地方太平洋沖地震により、被害を受けられた方々やご家族、関係する皆様に心よりお見舞い申し上げます。一時も早い復興を祈念いたしております。
1.地震による休業に関する法律上の取扱いについて
□ 労働基準法26条(休業手当)
労働基準法第26条においては、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」と規定されています。
◆今回の地震による休業の場合(天災事変等の不可抗力の場合)
ただし、天災事変等の不可抗力の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。ここでいう不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければなりません。
今回の地震で、事業上の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられますので、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられます。
◆計画停電が実施される場合の休業について
今回の地震に伴って、電力会社において実施することとされている地域ごとの計画停電に関しては、事業場に電力が供給されない時間帯を休業とする場合は、原則として、労働基準法第26条に定める使用者の責に帰すべき休業には該当せず、休業手当を支払わなくても労働基準法違反にならないと考えられます。
2.地震により休業する場合の助成金等の取扱いについて
(1)会社が使える制度
◆雇用調整助成金及び中小企業緊急雇用安定助成金について
今回の地震に伴う経済上の理由により事業活動が縮小した場合は、雇用調整助成金及び中小企業緊急雇用安定助成金が利用できます。
「経済上の理由」の具体的な例としては、交通手段の途絶により原材料の入手や製品の搬出ができない、損壊した設備等の早期の修復が不可能である、等のほか、計画停電の実施を受けて事業活動が縮小した場合も助成対象になります。
本助成金は、労働基準法第26条に定める使用者の責に帰すべき事由による休業に該当するか否かにかかわらず、事業主が休業についての手当を支払う場合には助成対象となり得ます。このことは、計画停電に伴う休業であっても同様です。
助成金を受給するには、休業等実施計画届を提出するなど、支給要件を満たす必要がありますので、詳しくは、最寄りのハローワークにお問い合わせいただくか、厚生労働省のホームページ(下記)をご覧下さい。
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/a-top.html
(2)従業員が使える制度
◆災害時の雇用保険の特例措置について
①事業所が災害を受けたことにより休止・廃止したために、休業を余儀なくされ、賃金を受けることができない状態にある方については、実際に離職していなくても失業給付(雇用保険の基本手当)を受給できます。(休業)
②災害救助法の指定地域にある事業所が災害により事業が休止・廃止したために、一時的に離職を余儀なくされた方については、事業再開後の再雇用が予定されちる場合であっても、失業給付(雇用保険の基本手当)を受給できます。(離職)
※上記の失業給付は、雇用保険に6ケ月以上加入しているなどの要件を満たす方が対象となります。
※本稿では厚生労働省平成23年3月31付け事務連絡「平成23年東北地方太平洋沖地震に伴う労働基準法等に関するQ&A(第2版)を参考にしました。
京都大学卒業と同時に大手生保会社に勤務。CFP資格を取得し、ファイナンシャル・プランナーとしての活動をする中で、社会保険労務士資格に興味を持ち取得。
セミナー講師(ここが危ない人事労務管理、退職金・企業年金制度改革について、知ってトクする年金セミナーなど)多数。
◇社会保険労務士(奈良県社会保険労務士会所属)
◇CFP(日本FP協会認定)
◇1級ファイナンシャル・プランニング技能士
◇DC(企業保険総合)プランナー
◇現在:福岡労務経営事務所 代表、関西ファイナンシャル・プランニング 代表