2011年07月08日

注目される労務コンプライアンス監査と労働局「定期監督」日本

福岡労務経営事務所 代表 福岡 英一

1.労務コンプライアンス監査

◆労務コンプライアンスが問われる背景

労働基準法第1条第2項では「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」とされています。

ところが、「未払い残業」「名ばかり管理職」「セクハラ」「雇い止め」「偽装請負」・・・等々、労務における違法事件は後を絶ちません。

各企業においては、就業規則、諸規程、労使協定、法定帳簿(労働者名簿、賃金台帳)等が法に照らして適正かどうか、また労働時間管理、賃金支払、職場の安全衛生等が正しく運用されているかどうか、つねに顧慮しなければならない状況にあります。

◆外部機関からの労務コンプライアンスの要請

近年では以下のように、外部機関からの労務コンプライアンス監査に対する要請が注目されています。

①IPO(Initial Public Offering)における「人事労務制度・規程の整備状況」監査

②労働基準監督署の是正勧告に対応するための「指摘事項の是正状況」監査

③官公庁からの受託労務監査(納入業者などの労務管理の法令遵守状況監査)

◆労務コンプライアンス監査の意義

急成長したベンチャー企業や中小企業などでは、社内の人事労務の専門家は手薄になりがちです。

労務コンプライアンス監査を受けることにより、人事労務面における弱点が明確になり、問題が起きる前の備えができます。また人事労務問題が透明化されることにより、社員の会社に対する信頼も高まり、業務面においても良い結果が生まれてくると言えるでしょう。

2.平成22年大阪労働局「定期監督」結果~違反率は2/3以上~

◆定期監督は前年度比47%増、違反率は67.2%

平成22年定期監督の実施件数は、9173件(前年比2,939件増。47%増)で、このうち法違反が認められ、改善を指導した事業場は6,168件(前年比2,213件増)、違反率は67.2%(前年比3.8ポイント増)で、平成10年以降では最も高くなっています。

◆労働基準法の主な法違反の内容

労働基準法の主な法違反については、違反率の高い順に、労働時間、割増賃金、就業規則、労働条件明示となっています。労務管理体制を整備する際にはこうした点に注意する必要があります。

①労働時間〈違反率27.5%〉
  • 36協定を提出していない。
  • 36協定を提出しているが、協定で定めた時間を超えて時間外労働をさせている。
②割増賃金(違反率21.5%)
  • 時間外労働、深夜労働を行わせているのに、法定割増賃金(通常の賃金の2割5分以上)を支払っていない。
③就業規則(違反率17.3%)
  • 常時10人以上の労働者を使用しているにも係わらず、就業規則を作成・届出していない。
④労働条件(違反率15.4%)
  • 労働者を雇い入れる際に、賃金額や支払方法等法定事項について書面を交付していないもの。
  • 交付しているが法定事項が不足している。
福岡労務経営事務所では「労務コンプライアンス監査」を実施しております。あらかじめ準備された質問にお答えいただくことにより、人事労務問題が明らかになります。お気軽にご相談下さい。
また、「労務監査」も実施しています。労基署の立入検査があっても事前準備がされていれば安心です。お気軽にご相談下さい。
福岡 英一

福岡 英一

福岡労務経営事務所 代表 社会保険労務士
(奈良県在住)

専門分野

就業規則、人事・賃金制度、退職金・企業年金コンサル、生命保険活用・見直し。

京都大学卒業と同時に大手生保会社に勤務。CFP資格を取得し、ファイナンシャル・プランナーとしての活動をする中で、社会保険労務士資格に興味を持ち取得。
セミナー講師(ここが危ない人事労務管理、退職金・企業年金制度改革について、知ってトクする年金セミナーなど)多数。

◇社会保険労務士(奈良県社会保険労務士会所属)
◇CFP(日本FP協会認定)
◇1級ファイナンシャル・プランニング技能士
◇DC(企業保険総合)プランナー
◇現在:福岡労務経営事務所 代表、関西ファイナンシャル・プランニング 代表

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