上海知恵企業管理諮詢有限公司 高級顧問
アジア移転価格専門コンサルティング 代表
小川 孝一
前回に続いて「移転価格」のお話しです;
一般的に、多くの企業が採る税務上での位置づけに係る妥当性の判断においては、当然理、税法を根拠にすべき問題となります。
然しながら、税法の解釈それ自体が多様な場合では、企業が採ったポジションを、税務当局が最終的に、「認めるか・否か」、その「不確実性」を残すことになります。
移転価格税制とは、いまもこの後者の解釈論のうえに座している税制です。
移転価格での課税をめぐっては、税執行の現場における企業と税務当局との間での議論が尽きないのが現状です。
それ故移転価格税制は、「議論の税制」とも言われます。或いは美しく「芸術の税制」、「バラ色の税制」とも呼ばれる所以となっているのです。
然し、移転価格では、画一的で機械的な判断基準、或いは算定方法の適用などそれらが容易でない(難解)という「科学的」な問題を内包しています。
そのため、個々の取引ごとによる個別の判断形成に順じてゆく、それ以外に的確に近づくための結論が導き出せないという、本質的にも、難関な性格を有する、「鋭いトゲを持つバラ」の税制度です。
中国税務では、一様に海外展開を図る企業の「夢見る」ことはなにでしょうか。
それは、例えて「子会社の利益は親会社に」、「親会社の赤字は子会社に」と、それぞれ関連者間の価格を付け替えての「しめしめ」を夢見る「経営」です。
それ故、企業にも、税務当局にも、価格設定の問題は一層に「大切」となります。
その価格が、通常の第三者間ではあり得ない非合理的であり、その結果として、所得(=利益)移転も不合理なものとみなされ得るのか否か、その判断は重要です。
その判定に際しては、国際税務・移転価格での課税の問題を抜きにして、企業にとっての「しめしめ経営」は、罰金課税と化すことになるのです。経営それ自体の「店じまい」ともなりかねないほどに、大きなリスクを伴もなうのです。
対、中国投資の維持においては、国際税務・移転価格での課税の問題は、「必ず」引き起こすところとなるのです。

では、その親会社と子会社の、移転価格リスクとはなにでしょうか。
関連者間という特殊の関係(親と子)のもとでの取引価格の設定においては、本来ならば
一方の国(日本)に所在する企業において計上されるべきであった利益が、他方の国(中国)に所在する関連者において計上されてしまい、一方の国(日本)では、その利益に相応する課税所得が減少してしまう、そのような経済現象が起こります。
また、中国現地の子会社から日本親会社へ製品の販売がなされたとします。
その販売価格が、親子間ゆえに、或いは意図的であったとして、低すぎた場合どうなるのでしょうか。それこそが、相当の金額設定をもって取引を行うべきである、として課税所得の調整、すなわち移転価格更生として、高額の追徴納税ヘッジに立たされるのです。
この防止を目的とする税制こそ、すなわち「移転価格」の問題となるのです。
税務局の移転価格に対する解釈根拠
<中国税務局> | <移転価格税制> |
---|---|
多くの外国企業は | 親子会社間での |
中国に投資するものの | 取引を通じて |
中国で稼いだ利益を | 所得を |
国外に持ち出すばかりで | 海外に移転し |
中国の税収に貢献しない | 税負担を減少させる行為に対し |
貢献しない企業が | その原因となる関連者間取引を |
多すぎる | 独立企業間価格に修正して課税する |
(続く)
日本および中国にて、一貫して税務・会計畑を歩んできている。
特に、国際税務に関わる移転価格税制に精通。
移転価格税に関わる対策文書/同時文書の作成、税務調査を中心として事例研究多数あり、関連セミナー講師多数。