佐藤中国経営研究所 代表 佐藤 忠幸
“中国人は欲求が強すぎて困る“という話をよく聞きます。
しかし、それは向上意欲だと考えれば活用できるのではないでしょうか?幹部は、部下の欲求が何処にあるのか探りそれを満たす手助けをします。Maslowの欲求5段階で、最高位の欲求が「自己実現の欲求」ですね。それを、働く場面(会社)に置き換えると、「是非、目標を達成したい」となります。そのように仕向けるのが幹部の役割だと、前号で学びました。
個人目標と部門目標と方向合わせ
よりよい生活を求め、よりよい仕事をしたいと、会社を選び入社した若者に目標を与え(できれば自分で作らせて)誘導するのが幹部の職責です。目標は達成可能な極限を設定するのは当然です。そして、その目標は所属する組織(部門)の目標と方向が一致していることが必要です。個人の目標達成が部門の目標につながり、達成感を部門の仲間と共有できるからです。
さらに重要なことは、部門の目標が会社の目標と方向が合っていることです。それは、出来ているでしょうか?それを、如何にして合致(ベクトル合わせ)させているのでしょうか?これは簡単なようでいて、実は大変難しいものです。
部門目標と幹部の個人目標
実は、部門の目標はあっても、その責任者である幹部の個人目標がないことが大半なのは何故でしょうか?「部門目標を達成するのが幹部の職責である。だから自分の目標はない」とのお答えが大半です。この考え方が、部下の個人目標設定を難しくしています。
部門目標を達成するためには、幹部は何をすべきか、そのために自分は何を学ぶか、何を改善すべきか、部下に何を要求するか、部下の欠陥を如何にして補うか・・・。幹部とやるべきことを列挙すれば限りなく出てくるはずです。
まずは、経営ビジョンを
経営理念・方針を社員と共有化しろと言われます。
その前に会社には、経営ビジョン(未来像)があるはずですが・・・。我が社はこうありたい、将来はこうなりたいという夢であり目標といえるものがある筈です。無ければ、嘘でもよいので作ってください。「子会社の分際で恐れ多くて作れない?」それでは、中国で外資系企業として生き残れません。仮に、当初の中国進出目的が「安くて豊富な労働者を求め、安く作って日本に利益を還元する」であったとしても、もうその図式は成り立ちません。
新たなビジョンを作らなければ、欲しい人材は集まりませんし、残りません。「嘘でもよい」と書きましたが、嘘が真になる場合もあり、しばらく眺めていれば真の狙いも見えてきます。その時に作り直せばよいのです。
経営ビジョンを達成するためには、どのように経営してどういう道筋を通るのか、これが経営方針であり経営理念です。逆にいうと、経営ビジョンなくして、経営方針・経営理念は作れません。社員と共有化したくても作れません。
経営目標の理解と共有化
経営ビジョン・経営方針・経営理念そして経営目標を如何にして共有化するか?会議などで、書いたものを配り説明したからといっても、字面を理解しただけで終わりです。
研修会などを利用し、それぞれがどう解釈するのかを議論しあって真の意味と狙いを理解します。この過程で共有化できるようになるはずです。
会社の、未来像、理念、方針、目標が理解され共有化できれば経営計画も理解され、部門目標も素直に作られ、幹部個人目標も素直に作られるでしょう。
そうなれば、部下の個人目標設定も応援・誘導できることとなるでしょうし、社員の向上意欲もますます活かされるようになるでしょう。
これが、社員研修の狙いのひとつです。
電子・機械・成型・縫製など異業種製造業数社で、日本および海外子会社で数多くの会社立ち上げと再建業務に携わる。現在は上海と横浜を基盤として、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行っている。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。