2011年10月14日(金)

向上意欲を活かす人事管理③ 公平・公正な人事評価制度

佐藤中国経営研究所 代表 佐藤 忠幸

“中国人は欲求が強すぎて困る“という話をよく聞きます。

しかし、それは向上意欲だと考えれば活用できるのではないでしょうか?幹部に、会社の、未来像、理念、方針、目標を理解させ共有化できれば経営計画も理解され、部門目標も個人目標も素直に作られるでしょう。と、前号で学びました。しかし、社員が目標をたて頑張った結果の評価がそれに応えていなければ失望されるだけです。

公平な人事評価

人事考課・評価は、公平であることが絶対条件です。公平とは、皆同じということではありません。
努力した者としない者、能力の高い者と低い者が、同じ評価では不公平です。その格差が小さければ、やはり不公平と見なされ、努力しなくなるでしょう。
そして、重要なことは、何に対して「良い悪い、高い低い」の評価をするかという基準が必要です。基準があいまいで、上司の好みやエコヒイキがあっては意味がないどころか、不公平となります。

職種別資格等級別の評価

評価基準は、職種別(または仕事別)資格等級別に作ります。
新入社員と中堅社員と同じ土俵では不公平ですね。同様に、販売職と技術職を比較しても比較しようがありません。同じ土俵に上らせること事態が困難です。
柔道やレスリングに体重別のクラス(級)があるのと同じように、職種別(または仕事別)に数クラスの資格等級をもうけて、それぞれに必要資格要件をつくり、それとの比較で評価します。これが「絶対評価」というものです。
一般的には公平を期するため、2次評価を上位者が行いますが、この段階になると、同一資格等級の者と比較して、一定の比率で優劣をつけます。これを「相対評価」といいます。それをしないと、評価者による偏りが出るためと、強制的に優劣をつけることにより、向上心をさらにあおる効果があるからです。また、評価の良し悪しが次項で述べる進級・昇格に密接につながっていることから尚更必要です。

評価結果で進級・昇格

職種別資格等級は、職種によって3クラス~5クラスに分けられます。
クラスが上がるごとに賃金も上がるし、標準昇給幅も大きくなります。したがって進級・昇格スピードが早ければ早いほど高給になれるわけです。その進級・昇格は何年経ったら上がるという年功制度は用いず、すべて評価結果で決めるようにします。
ただし、職種によってその資格に長くいれば評価結果の反映は甘くても構いません。
このクラスごとの経験年数と評価結果との連動の設計が難しいところです。

評価結果で昇給

前項で、クラスが上がれば標準昇給幅もおおきくなるとしましたが、全員がそれで昇給するわけではありません。標準者の昇給幅を決めるだけです。たとえば、あるクラスの標準昇給幅が500元という場合、中位の評価者(例えばB査定)は500元、もっと優秀査定(例えばA査定)は1000元の昇給、劣る者(例えばC査定)は0元すなわち昇給しない、というように評価によって昇給額に大きな差をつける必要があります。
これが公平であり、かつ昇給原資の抑制につながります。
格差をつけられて、上位の者は満足しますが、下位の者は不満を持ちます。その多くは会社を辞めるでしょうが、恐れてはいけません。これを恐れて格差を小さくすれば上位者の満足感は得られず、辞められるでしょう。
どちらの退職者が怖いですか?


昇給格差が小さい場合で、さらに怖いことは、横並び賃金となり、労働者が団結し易くなり、争議に走り易くなることです。向上意欲が小さい集団となり、昇給を力任せで勝取ることしか考えなくなります。

透明性のある評価

前項で不満を持つ下位者は、辞めるだけなら構いませんが、中には不公平だと訴える者もいます。これを防ぐには制度と仕組みを公開し、透明なものにしなければなりません。また評価者の訓練をして、公平にすることも大事ですね。

佐藤 忠幸

佐藤 忠幸

佐藤中国経営研究所 代表 (上海在住)

専門分野

企業管理・人事労務・労使関係・品質管理・幹部・5S研修・社内規定

電子・機械・成型・縫製など異業種製造業数社で、日本および海外子会社で数多くの会社立ち上げと再建業務に携わる。現在は上海と横浜を基盤として、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行っている。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。

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