2012年04月05日(木)

企業体質改善のための5S運動 断捨離の実践 整理・整頓

佐藤中国経営研究所 代表 佐藤 忠幸

 最近、日本で断捨離(だんしゃり)という言葉がブームとなっているのはご存じですか?関係する本が10種類以上出ており、合わせれば数百万部も売れているそうです。断捨離はまさに、5S運動の整理・整頓です。

 今、中国で、見直されているのが5S運動で、中国系企業や欧米系企業も盛んに学習し実践しています。5S運動により企業体質と社員の意識改革をしようというものです。今号は、その中心である整理・整頓について学びます。

整理・整頓とは断捨離の実践

 断捨離は、ヨガ用語で、「不要、不急、不適、不快」な物を断ち、捨て、執着心から離れることです。断捨離を実践するとは、「物との関係を問い直す」ことになります。

 断捨離は、捨てることから始まります。捨てることは物を大切にするという精神に反しますね。だったら、安易に買うな、作るなということです。

 断捨離を実践する前は、物が大量・滞積しています。つまり、物の量・質に無自覚 であり、物が主役です。

 断捨離を開始すると、物との関係を問い直し、物の量・質に意識が向くようになり、捨てる迷いと向き合うようになります。さらに進めば、物の要・不要の判断が早くなります。物を大切にするという美的精神だという言い訳をせず、適量、整頓状態にするための思いきりが身につき、自分(人)が主役となります。

 その為には、厳選して取り込む(購入、作る)、 物を使いこなす、使い切るということで、捨てる物が最小限になります。

 その結果、お部屋が見違えるほど広くなり、人の心も変わり、気分がよくなります。

 会社でも同じですね。一つ買ったら、一つ捨てる(売る)・・・。つまり、売らなければ(注文が無ければ)買わない(買えない)。という原則を貫くことにより整理・整頓ができます。

5S運動の中心「整理・整頓」

 5S運動とは、次の5つの日本語をローマ字表示した頭文字を集めたものです。

 整理(Seiri)整頓(Seiton)清掃(Seisou)清潔(Seiketsu)躾(Sitsuke)

 日本では、躾がある程度できていることを前提として5S運動が成立っており、整理が最初になっています。中国では逆に、まず躾を徹底する必要があることは前号で学びました。

 ところで、整理と整頓は何が違いますか?

 整理・整頓とまとめていうことが多いためか、意外にその区別がついていません。それも中国の5S運動を難しいものとしています。

整理とは不要なものを処分すること 整理は資産の健全化

 整理とは、層別して不要なものを処分することです。

 不要なものとは、 不良品、過剰品と理解する方もいますが、良品であっても、売れないもの、使えない物、使わない物は不要品です。これを「モッタイナイ」という精神を断ち切り、捨てることが整理です。まさに断捨離です。

 不要品があるということは、貴重なお金を、物で滞留させることになります。決算上は黒字でも現金がないという原因の大部分がこれです。決算書に記載された資産が、全て健全な、直ぐ使い・売れるものばかりにすることが整理の最大の目的です。

 次の目的は、職場に余分なものは置かず、職場を有効活用し、整頓しやすくすることです。

 もちろん、発生源への対策も行います。中国では、度々たくさんまとめ買いすると安いよと、勧められますが、結果は不要品の山となりますね。

 これを推進するためには、全社員の意識改革が必要なことは言うまでもありません。

整頓とは職場の物を使いやすく配置すること

 整頓のポイントは、見つける使う、そして戻すことです。

 整理の実行で職場・会社には必要な物だけとなった次には、物を探し回る職場をなくす必要があります。それが整頓です。

 キーワードは、誰でも、速く

 誰でも、速く見つけられることが最初の目的です。「誰でも」ということは、自分以外の仲間のため、顧客サービスの一つでもあります。

 見つける目的は使うためですから、使いやすく置くことが必要です。そして、戻す目的は次に見つけ、使うためです。戻さなければ次に使えません。見落とし易いことは、誰でも、速く戻せる置き方と場所の工夫です。戻すことが困難な置き方は継続できません。

 「次に使う人は、顧客と思え」と言われていますね。

 そして、置き方は、美しくなければなりません。壁、床、柱など基準となる物と、直線・直角・垂直・水平・平行に置くことが必要です。直線・直角・垂直・水平・平行に置かれていない物を見て、「異常だ」、「美しくない」「恥ずかしい」と思う感性が5S運動の基本です。

整理なくして整頓不可

 5S運動では、整理は整頓の基本であり、整頓は整理の強化です。
整理しなければ整頓できず、物を探せません。
整頓しなければ整理できず、不用品が増えます。
不要品は、企業の財務体質を損ないます。
したがって、整理は、企業発展の基礎だと言われています。

 具体的な推進方法は別の機会に学びます。

次号につづく

佐藤 忠幸

佐藤 忠幸

佐藤中国経営研究所 代表 (上海在住)

専門分野

企業管理・人事労務・労使関係・品質管理・幹部・5S研修・社内規定

電子・機械・成型・縫製など異業種製造業数社で、日本および海外子会社で数多くの会社立ち上げと再建業務に携わる。現在は上海と横浜を基盤として、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行っている。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。

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