2013年07月08日(月)

中国の幹部教育 ①何故必要か

佐藤中国経営研究所 代表 佐藤 忠幸

 日本では、ある程度以上の規模の会社であれば、社内外で色々な階層別の教育研修をしています。会社によっては最低限の研修を受講することが昇格・昇級の資格要件にまでされているぐらいです。中小零細企業なら社長や先輩上司から、厳しい指導がなされて今の皆さんの地位があるはずです。しかも、日本人特有の「自己啓発」という習慣もあります。
 振返ってみて、中国の現地法人・御社では如何でしようか?

  • 幹部教育はいつしましたか?
  • 管理者・監督者教育は毎年定期的にしていますか?
  • 中堅社員教育も定期的にしていますか?
  • 新入社員教育は、安全教育などの法定以上の中身がありますか?
  • その中身は、社長(総経理)も含めて吟味していますか?

全て、行っている場合このコラムは読まなくても結構です。

中国系企業の方が教育熱心

 中国系企業も最近は日系企業以上に教育熱心です。教育予算は日系の数十倍と言われています。ただし、それも経済成長が鈍化し始めたつい最近の話で、昔の国営時代は何もせず大いに不満が渦巻いていたようです。しかし、景気が悪いから、教育でそこから脱皮しようという積極姿勢は見習うべきですね。

 教育熱心な理由のもう一つは、一般的中国人に自己啓発の習慣がなく「会社は社員教育すべきだ、教育してくれないなら入社しない」という社員側の考えがあるからです。

 かつては、日本企業(日系企業ではありません)は教育熱心で、そのおかげで日本は高度成長をしたと言われました。故に日系企業に入社すれば同じことを味わえると思って入社したのに、その夢は壊され日系企業は不人気となりました。

他社の教育はあてにできない

 即戦力を採ろうと、多くの企業は経験者を採用しています。しかし、期待できる人材を採用できたという確率は極めて低いものがあります。まず、求める経験をした人材が野にいるわけがありません。仮にしっかりした教育を受けた者であっても、会社によって経営理念や方針が異なります。これに差異があれば、軸足が違うのですから鍛え直すのに期間が必要です。

 したがって、少しでも可能性がある者を採用し、自社の理想に近づけるための教育をするしか方法はありません。

古い会社は意識改革しなければ制度も変えられない

 過去に幾つかの問題がある日系企業の事例をご紹介してきましたが、その多くは10年以上利益も出さず、進出目的もはっきりしないまま、何となく経営している企業です。社員の多くは「期限の定めのない労働契約」となっています。これは良いことのように見えますが、それは厳しい人事政策をくぐり抜けて永年勤続となったのであれば問題ありません。

 何となく、楽だから永年勤続となってしまった者が多い場合は悲劇を産む会社となります。

 例えば、次の改定・改革をしようとすれば、彼らは強い抵抗勢力になります。自分の既得権の侵害となることは確実だからです。

  • 今までの就業規則は誰も守らないので、全面改訂し厳しく運用したい。
  • 年功序列型賃金体系は止めて、能力主義給与体系に変えよう。
  • 幹部に若手を抜擢登用しよう。
  • 残業は届出制ではなく、申請・命令制にしよう。

 このような会社は、まず時間をかけた研修を通して、幹部の意識改革を図った後に制度改定です。何故研修を?長年の間に付いてしまった垢やシミは、言って聞かせ、注意して、落ちるような水準ではないからです。演習課題などをこなしながら様々な研修コースを通る間に意識を変えてもらうのです。

新しい経営理念と方針の共有で意識改革を

 会社をどのような方向で経営するのかは、総経理だけが承知していても経営できるものではありません。全幹部がそれを共有できるまで理解させ、ベクトルが合致している必要があります。特に会社を改革しようという時には、これを新しいものに変えて、幹部と共有化できるまで議論を尽くす必要があります。

 幹部会議でこれを行うこともできますが、幹部研修の必修研修コースとして洗脳しておけば、会議の場面では、それぞれの事例に応じて議論すれば確実に前進できるはずです。

まず、総経理自身が理念と方針を固めよ

 当然ながら、総経理自身が経営理念と方針を固めていなければ共有化どころではありません。しかし、新年度の方針などは、幹部諸侯と議論しながら作っていくことも必要です。

 その場合も、総経理の腹の中ではこうしたいという考えを持っていて、議論の方向をそこに誘導することも必要です。時には、ご自身の考えよりも素晴らしい方針が出てくる場合もありますが、その時は素直にそれに乗ればよいでしょう。

 いずれにしても、幹部諸侯が論議を尽くした結果で新方針が決まれば、自然に共有化ができますね。

佐藤 忠幸

佐藤 忠幸

佐藤中国経営研究所 代表 (上海在住)

専門分野

企業管理・人事労務・労使関係・品質管理・幹部・5S研修・社内規定

電子・機械・成型・縫製など異業種製造業数社で、日本および海外子会社で数多くの会社立ち上げと再建業務に携わる。現在は上海と横浜を基盤として、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行っている。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。

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