佐藤中国経営研究所 代表 佐藤 忠幸
総経理に「社員研修はどうやってしていますか」と伺うと、「我社はOJTでしており集合研修はしていない」とのお答えをいただくことがあります。
その総経理に「では教育体系あるいは研修計画は」と伺うと何もありません。
それでOJTが本当に出来るのでしょうか?
研修には、集合研修と個別研修がある
社員研修には、集合研修と個別実務研修の2種類があります。
集合研修は、OFF-JT(off the job training)といい、この中には、社内研修と社外派遣研修の2種類があります。
個別実務研修は、OJT( On the job training)といいます。これらを目的に合わせて教育体系と研修計画ができます。
集合研修は次号以降で学ぶとして、今号は個別実務研修(OJT)について学びます。
OJTは実務を教えるのに適している
OJTは、新人などの後輩が指導員役の先輩に付いて、実務をする中で教わる方法です。指導項目ごとに、マンツーマンに先輩などの指導員が着くのですから効果は絶対にあります。しかも、教える側も、教えることにより、あるいは教えるための事前準備やおさらいなどにより実力が急成長するという副産物が生じます。
教育計画を立て、OJTとOFF-JTを適宜組合せ、何と何はOJTで教育するか決めます。
OJT教育の準備と指導員への任命
重要なことは、指導項目と指導員の選定と任命です。
これを間違ったり省いたりしたら、逆効果です。
- 誰が、誰を、何を、何時までに、どうやって指導教育するのか明確にする。
- 指導員は、適性診断をして慎重に選定し、指導官として指導命令書を発行する。
- 指導カリキュラムを作成し、それに基づく事前の指導員教育をする。
- 指導進捗度の確認と結果の評価をする。
- 定期的な報告書を指導員と被指導者双方から提出させる。これは、報告書の書き方の教育も兼ねている。
以上をしなくして「我社はOJTで社員教育をしている」と言うのは、「何もしていないことと同じ」です。
日本よりも難しいですね。
中国人は一般的に、「自分のノウハウを後輩といえども安易に渡さない」という習慣があるので、なおさら容易ではありません。
電子・機械・成型・縫製など異業種製造業数社で、日本および海外子会社で数多くの会社立ち上げと再建業務に携わる。現在は上海と横浜を基盤として、幅広く、経験に基づいた相談と指導を行っている。各社顧問と各種セミナー講師および雑誌や新聞への執筆多数。